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ほのぼのしたい異世界生活のススメ  作者: 伊佐若 早葉
まったりしたい旅の始まり
10/30

事情説明 ~とある盗賊団(?)の場合~

俺はしがない盗賊団を率いる者だ。

人数は少ないものの、皆歴戦の手練(てだれ)であるから、少数ながらにあなどってはいけないと自負している。








…というのは一応建前である。


実際は東に位置する王国の近衛兵士団に所属する、ロバート・グラルシアと申す。

我が王国の更に東に位置する未踏の地に、最近魔物がわんさか湧き出したとの報告が国民や各町村所属の兵士から頻繁に報告されている。

通常の魔物の発生であれば我等近衛兵士団の出る幕は無いのだが、如何せん湧き方が尋常ではないようだ。既に各地から民も兵士も負傷者が出ているとの報告が数件届けられており、王国軍もそれなりに派遣しているのだがそれでも尚一行に魔物が減っている様子が見られない。


…それに業を煮やした国王様は、古い文献に残る『勇者召喚の儀』を行う事にした。

遠き異世界から強き者を呼び寄せる、普通に考えても『誘拐』である。実際過去にも勇者召喚の儀を行なったらしいが、『お前、コレ誘拐だぞ?さっさと元の世界に帰せよ。一方的に呼ばれてハイ戦えってさぁ、その戦いが終わったらどうしてくれんだ?あ゛ぁ?』と至極正論を言われたそうだ。当然誰一人反論すら出来なかった。まぁ、そうなるな…。

その話を知っている我等は当然国王様に辞めるよう進言したのだが、どうやらこの国王、歴代類を見ない程のポンコツだったようだ。一切人の話を聞こうとしない。

…よくもまぁこのポンコツの下で働いてきたものだ、と自分でも思う。なんせ、勇者を召喚した後『隷属の腕輪を付ければ逆らう事は出来まい』と声高にのたまって見せたのだ。


隷属の腕輪と言うのは名前の通り、装着した者を隷属させる腕輪である。コレは既に、何百年前に使用を禁じられている魔道具なのだが、禁止と言われれば使いたがる者は世の中にはいるもので、奴隷制度が廃止されているにも関わらず、隷属の腕輪で個人的に奴隷を作る腐れ貴族などがまだいる始末である。

そんなワケで、禁止にも関わらず少数ながら王室で厳重に管理されており、それを使って王国の操り人形にして魔物の掃討をさせようという魂胆なのだとか。


一部…いや、最早国王以外の反対意見を握り潰し、宮廷魔術師を数人引き連れ、本当に勇者召喚の儀を行ないやがった。また前回のように、至極反論しようの無い正論で我らに謂れの無い罪悪感と胃痛をもたらすような普通の常識を持った人間が呼ばれる……かと思っていたのだが。




『魔物討伐?! 勇者?! 僕がですか?! ハイ、お任せください! 僕が魔物はもとより、魔族や魔王までも倒してご覧に入れましょう!』




どうやら召喚された勇者とやらも、とんでもないポンコツだったようだ。


この世界、魔王という存在は確かに存在する。が、それは魔族の王ではなく『魔物の王の血筋に属する者』という『ただの称号』なのである。その為、王族のように血筋であれば継承権によってなれるものであるのだ。

しかも、今やその血筋と血の濃さは初代魔王に比べれば無いに等しいほど薄く、現魔王の祖父にあたる人物にお会いする機会があったのだが、『もう魔王とか呼ぶのやめんか?ワシらマジ魔物とか従えないし、ホントつれーわい…』と愚痴っておられた。


世知辛い世の中であるようだ。


現魔王と呼ばれているのは、齢十五にも満たない女の子だと聞く。どうやら男の子が生まれなかったらしく、やむなくその女の子に魔王の称号を引き継がせ、早々に魔王から退いた父親は、やりたかった農業に精を出しているんだとか。




と、話は逸れたが、このポンコツ勇者様が何を考えているか知らないが、この世界に人間に敵対する魔王なぞ存在しないし、ましてや魔族などという子どもの絵本にしか出てこないような悪の存在はいるハズも無いのだ。


やはり異世界の人間は考える事が我等と違う、そう思わざるを得ない。


そして勇者様が召喚されてから早数週間、このポンコツ勇者が根本的におかしいと思わざるを得ない事がハッキリと分かった。




この勇者、自分が正義だとハッキリ思い込んでいるのである。


誰がどう見ても黒である事柄を、女の子が犯人だから何か理由があるに違いないとのたまい、自分が事情を聞くと言い張り、改心させたと思い込み、白にして街に帰したのである。

案の定、改心したのは女の演技で、結局勇者が見ていないところで再犯していたのを捕縛し、今は勇者の知らない城の牢屋に閉じ込めている。


そして、何かをすれば絶対に感謝されると勘違いしている節もあるようだ。


別に人手も足りているようなところに踏み込み、自分なら力になれるとのたまって参加し、自分の力を過信しているせいか一切鍛錬を積まないにも関わらず、力任せでどうにかなるからか連携もクソも無い独りよがりで敵を倒し、調節も出来ないから周辺をのべつ幕無しで破壊しまくり、挙句もし誰かが負傷しようものなら、もっと回避しなきゃだとかココをこうすべきだの上からアドバイスを言い出す始末。しかもそれが感謝されていると本人は思っている。

そのせいかギルドでは、この人間が参加したいと言ってきても断るようにという暗黙の了解が完成したようだ。一応近衛兵士団でも団長という名誉あるポジションに付かせて頂いている事もあり、勇者に対する苦言は一心に私が受けねばならないような事態になってしまっている。何度と無くギルド長に頭を下げ、勇者の負担になる冒険者が悪いのだとのたまうポンコツ国王の目を盗んで財務大臣殿と話をつけて謝罪金を出し、聞くワケも無いが勇者に力の使い方や連携の仕方などを教えようとする。




もう色々と、私も含め限界であった。



どうやらココまでポンコツであるとは知らなかったようで、この計画にはポンコツ国王を見限った王妃様と皇子殿下、皇女殿下も加わってくださった。

曰く、私もまだ華の三十代だし、あんなポンコツと残りの人生過ごすぐらいなら婚活でもしてみたい、とは王妃様。

曰く、国を統率する者としてココまで自分よがりなのは、父親であろうが看過しておくわけにはいかない、とは皇子殿下。

曰く、いつも色々と絡んでくる勇者マジウザい、普通な事して感謝しろみたいな目線がムカつく、あとカッコイイと思い込んでるのが正直キモい、どうあがいても中の下。出来るなら私直々にブチ殺してやりたい、とは皇女殿下。


…皇女殿下のそれを語る表情が、私の近衛兵士人生で一度も見た事の無い程の苦痛に満ちた表情だったのが印象的であった。




さて、我々の計画はこうである。


まず、有無を言わさず国王には国政から引退していただく。これには財務大臣殿に一枚噛んでいただき、勇者がもたらした被害を数字に出してもらい、それを数十倍程跳ね上げた額を提示して『あなたが呼び出した勇者によって国益に影響が出ている為、国政から引退していただく。尚、財務大臣を含め、大臣格の署名はすべてもらっている』と伝え、拒むようなら無理矢理にでも地下牢にぶち込む手はずである。

その後の国政は皇子殿下に引き継いでいただく事で、皇子殿下ご本人様にも了承は頂いている。どうやら大臣方は皇子殿下の手腕には期待しているらしい。なんでも現状の税制について、個人的に数割ほど削減しても民の生活を脅かさず国にとっても負担の無い方法を話していたのだそうだ。国王にも話したらしいのだが、いつも一蹴されていたようで、それも今回の計画に参加していただく一端になったのではないだろうかと思っている。


そして勇者の方は、どうやら商隊護衛のギルド任務を『個人で』受けたとの報告がギルドよりあった為、その商隊には申し訳無いが襲わせてもらおうかと画策している。

無論、コレは我等近衛兵士団が盗賊に扮し、商隊には一切危害を加える事無く、しかし勇者のみを殺す為には人質が必要になるので、一人だけ確保して交渉材料として申し訳無いが使わせてもらう計画である。

自らを絶対の正義と勘違いしている勇者であれば、人質を取られればおとなしくなるだろう、と誰もが踏んでいる。


ちなみに、商隊には既に連絡はつけてあり、人質として娘さんをお預かりする形になっている。ご両親も本人も若干困惑していたが、同じように勇者の被害に過去あっていたそうで了承してくれた。なんでも、馬車で商品を輸送中に馬が魔物に襲われて逃げた際にふらりと現れ、『僕が馬車を引いていきますよ!なーに、お礼はいりませんよ!』とのたまい、中身も一切聞かず凄いスピードで勝手に引っ張って行った為、大量に購入して販売するハズだった『ビン入りの特効ポーション』が全部ダメになっていたそうだ。しかも、しっかり緩衝材を入れていたにも関わらず、である。


直接会って物凄く謝罪をした。迷惑かけすぎにも程がある。




そして計画実行当日。

商隊にはあらかじめ魔物除けの魔術を施し、野獣の森へと向かっていただく事になっている。そして普通の人には危険であると思わせる為、野獣の森と王都に向かう分岐点の標識に血糊を付け、近づかない方がいいと思わせる小細工と、あたかも何かに襲われているかのようにガタガタの轍を残す細工も施した。


そしてその森に盗賊に扮した我等が突っ込み、娘さんを早々に人質に取れば、計画は七割方完遂である…





と思っていたのだが。


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