第1話 霧の町と白髪の少女
1888年 ヴィクトリア朝・イギリス ロンドン ホワイトチャペル。
そこに、白髪の親子が暮らしていた。
1888年12月7日
サラ・ウィットモア(3歳)「ママ、おかえり」
幼い少女――サラ・ウィットモアが、扉の前で母を迎えた。
リリアナ・ウィットモア「ただいま、サラ」
母リリアナ・ウィットモアは微笑み、紙袋を差し出した。
リリアナ 「はい、これ。誕生日プレゼント」
サラ 「開けていい?」
リリアナ 「もちろん」
サラが袋を開くと、中には小さな木製のクマのぬいぐるみが入っていた。
サラ 「クマさんだ……あったかい」
リリアナ 「ママが作ったの。サラ、『寂しい』って言ってたでしょう?」
リリアナは優しく言った。
リリアナ 「その子は、サラの最初のお友達よ」
サラの青い瞳が輝く。
サラ 「うああ!ありがとうママ!大切にするね!」
リリアナ 「その子、名前をつけてあげる?」
サラ 「うん!」
サラは夜空を見上げて
サラ 「ノエル。この子、ノエル。私の弟」
サラ 「ノエル、か」
リリアナはクマのぬいぐるみをそっと動かす。
すると、リリアナの声でぬいぐるみを動かした
ノエル(リリアナの声)「こんばんは、サラ」
ノエル(リリアナの声)「僕はノエル。サラのお友達だよ」
サラ 「わあ......ノエルが喋った!」
サラは驚き、そして喜んだ。
サラ「ママ!ノエル喋った!」
リリアナ「そうね」
ノエルは続ける。
ノエル(リリアナの声) 「僕がサラを守るよ。任せて、お姉ちゃん」
サラ 「うん!」
その夜、食卓にはいつもより少しだけ豪華な料理が並んでいた。
ささやかな 沙羅の誕生日メニュー
母と娘は、2人で食卓を囲み、楽しいひと時を過ごした。
サラはベッドに入ると、小さく呟いた。
サラ「ノエル……」
ノエル(リリアナの声)「おやすみ、サラ」
リリアナはそっと娘を見守りながら微笑む。
リリアナ 「気に入ってくれて良かったわ、ノエル」
リリアナ「この子が、ずっとサラを見守ってくれますように」
10日後 12月17日
ホワイトチャペルでは、不穏な噂が広がっていた。
その夜
リリアナは仕事へ向かう支度をしていた。
サラ 「お仕事、頑張ってね」
リリアナ「ええ。ノエルと一緒に待っていてね」
ノエル(リリアナの声) 「僕がサラを守るよ」
サラ 「うん!」
それが、最後の会話になった。 そのことをサラはまだ知らない
ホワイトチャペル・夜
霧が街を包み込む。
リリアナ「急がないと……」
リリアナは足早に路地を進む。
???「待っていたよ」
声がした瞬間、周囲が白い霧に飲まれた。
リリアナ 「あなたは……?」
数時間後…
サラは不安を抱えながら家を飛び出した。
サラ「ママ……遅いよ……嫌な予感がする」
霧の中を、幼い足で必死に探す。
サラ「ママ……どこ……?」
そして――
一角で、それを見つけた。
サラ「……ママ?」
そこにあったのは、動かない母の姿だった。
サラ「どうしたの……?ねぇ、返事してよ……」
サラの声が、霧の街に響いた。
霧の中から、二人の男が現れる。
一人は金髪の英国人風の男 アレックスリード
もう一人は、黒髪の東洋人 神崎時雨
アレックス・リード 「おい、君。大丈夫か」
神崎時雨 「もう死んでいるな」
アレックス「時雨、お前は言い方がストレートすぎる」
アレックスがため息をつく。
時雨「事実だ」
時雨はサラに目を向けた。
時雨「名前は?」
サラ「サラ……」
沈黙が落ちる。
時雨「そうか」
時雨は短く言った。
時雨「行くぞ」
サラ「どこに……?」
時雨「安全な場所だ」
アレックスが止める。
アレックス「おい時雨、その子を23世紀に連れて帰る気か?」
時雨 「そのつもりだ」
アレックス 「ダメだ」
それでも、時雨は無言でサラを優しく抱えた
アレックス「いいんだな」
時雨「ああ、構わない」
アレックスは目を閉じた。
アレックス「……勝手にしろ」
サラは救助カプセルに乗せられた。
時雨 「もう大丈夫だ」
サラ「ママ……」
時雨「……」
時雨は何も言わなかった。
アレックス「お前、本当に子供好きだな」
時雨「うるさい」
二人は霧の街を離れ、未来へと向かった。
23世紀 浮遊都市クロノシティ
瀬戸内海上空に浮かぶ巨大都市。
その中心部の病院で、サラは目を覚ました。
サラ「……怖い」
看護師が駆け寄る。
看護師 「起きたのね、大丈夫よ」
そこへ時雨が入ってくる。
サラ「……ママは?」
サラの声は震えていた。
時雨「もういない」
短い沈黙。
時雨「だが、お前は一人じゃない」
時雨は続ける。
時雨「今日から俺が、お前の新しい家族だ。」
沙羅は泣きそうになる。
時雨 「……泣くな」
サラにぬいぐるみを渡す。
時雨「ほら」
サラ 「ノエル……」
涙が少しだけ止まる。
時雨は小さく息を吐いた。
時雨「俺は神崎時雨だ。これから一緒に暮らす」
サラ「時雨さん……」
時雨「そうだ」
少し間を置き、時雨は言った。
時雨「今日からお前は――」
時雨「霧島沙羅だ」
沙羅「霧島...沙羅」
沙羅はノエルを抱きしめ、小さくうなずいた
それが私と時雨さんの出会いでした。
そして、私の新しい人生の始まりでした。




