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引き出しの中はからっぽでした。少女が開けた引き出しは、空虚な四角い箱でした。机の上には本が置かれていないブックエンド。花が挿していない花瓶。からのインク壺。羽が抜け落ちたペンしかありません。みんなからっぽだったのです。
「ああ、わたしは十年も生きてきたのに、生きてきたことを示すものが何一つ残っていない。わたしには何もないんだわ!」
少女は嘆きました。そして家中を探し回りました。写真立ての中。表彰状。専用のマグカップ。しかしそのどれにも自分の姿、名前はなく、自分のものは何一つ見付からなかったのです。
「何故、何もないの?」
少女は途方に暮れました。そして
「誰もいない」
家の中には、自分以外誰もいないことに気付きまた。少女は独りぼっちになっていたのです。
おなかの大きいママ。
やんちゃ坊主の弟シタラ。
暖炉のそばが好きな斑犬のマダラ。
「みんなみんな、いったいどこへ行ってしまったの?」
誰もいない家の中は明るくて、まだ昼間のようでした。木こりのパパは、森に行っている時間です。
少女は今日、いつも通り学校へ行きました。その後よほど疲れたのでしょうか。気が付くと自分の部屋にいて、机に頬杖を突いてこっくりこっくりうたた寝していました。それから目を覚ました彼女は、ぼんやりと机の引き出しを開けたのです。
「そうだわ!」
そしてふとあることを思い出しました。学校の宿題で、作文を書かなくてはいけなかったのです。その課題は、“自分の宝物について”でした。それを思い出したら少女は急に気が楽になりました。
みんなはわたしを捨てて、どこかへ消えてしまったんじゃないわ。
だって暖炉は今火をくべたばかりのように、こんなにパチパチと火がはぜている!
すっかり元気を取り戻した少女は、ふとひらめいて手を叩きました。
「そうだわ。探しに行ってこよう!」
彼女は満面の笑みを浮かべて、家を飛び出したのでした。
少女は森の前までやってきました。そこは背の高い木々が生い茂る薄暗い森です。少女はふとその木と木の間に、道が続いているのを発見しました。しかし中は真っ暗で、入ったらヘビやオオカミに襲われるかもしれません。ところがこの時、彼女は不思議と怖くありませんでした。そして躊躇うことなく「さあ、わたしの宝物を探さなくっちゃ。なかったら見付けてくればいいんだもの」と陽気に鼻歌を歌い、スキップしながらその森の中へと入っていきました。




