第8話 黒い炎
アシムは今、暗い森の中にいた。
「ここらへんから試そうか」
森の入り口付近ではあるが、今回は確認の意味合いが強い。
明かりを灯すと、魔物に見つかるので気配を頼りに探る。
「気配感じれるとか、チートだなこれは」
サルバトーレ家では普通なので、当たり前と思っていたが前世の記憶がチートという存在だと教えてくれる。
林の方から魔物の気配を感じる。
「先に感づかれちゃったな」
魔物はこちらを警戒しているようで、既に戦闘態勢だった。
「悪いが、実験台になってもらうよ!」
黒い炎で林ごと燃やす。
「ギャオ!」
びっくりして魔物が出てきた。
「あれ?」
魔物は燃えていない。
「林が燃えてる?」
林に黒い炎が纏わりついているが、燃え広がる様子がない。
「水で消せると思ってたけど、普通の炎とは違うようだ」
正直水で消えなかったらどうしようと内心焦っている。
魔物がいては消火活動に集中できないので、先に魔物を倒すことにする。
「エアーインパクト!」
詠唱ではなく、魔法名を叫ぶ……完全に気分だ。
林から出てきた狼型の魔物を瞬殺し、早速消火活動に入る。
「やべ」
全然消えない。
燃え広がることはないみたいだが、どうすればいいのかわからない。
「あれ?」
しばらくすると、炎が消えた。
林に被害は出ていない。
「時間経過できえるのか? 自分で消せないと、間違いが起きた時に対応できないな」
非常に困った状態である。
「もう少し実験だな」
本当は、お金稼ぎのために魔物をどれくらい狩れるか試しにきたのだが、ついつい熱が入ってしまった。
「おお! もう一回燃やせば消えるのか!」
黒い炎は、黒い炎で消えることが分かった。
「これで安心して使えるな、そろそろいい時間だし帰るか」
炎の特性を分かったのは大きな収穫だった。
倒した魔物は、持ち帰れば家族に見つかるのは必至なので、置いていくことにした。
翌日。
「アシムー!」
姉の呼ぶ声で起きあがる。
するとドアが勢いよく開き、姉のエアリスが入ってきた。
「姉う、グエ!」
いきなり抱きしめられた。
「もうー! また私が来る前に起きようとするんですから!」
「いや、声かけたのあグエ!」
弁明は許さないといわんばかりに、抱きしめる力を強めた。
苦しいので降参の意味のタップをする。
「ふぅ! アシム補充完了ですわ」
自分に燃料の働きが備わっていることを始めて知った。
「いいアシム! 私が声をかけても起きてはダメよ?」
なんとも意味の分からないことをいう姉だ。
「では、声をかけなければいいのでは?」
「ダメよ! 声をかけたけど起きないから、私の好きにしていいのよ!」
何かすごい暴論をお持ちのようだ。
「さあ、お父様がお待ちよ! 行きましょう」
姉に手を引かれ、寝巻のまま連れていかれた。





