12話 新たなる世界
「結局ダメだったのか」
ボルハチの店に転移した士達にボルハチが声をかける。
突然二人が現れても、もはや驚くことはないようだ。
「ああ、残念ながら魔方陣で転移した先は故郷じゃなかった」
「そうか、それは残念だったな」
「ところで、飛ばされた先で大物を仕留めたんだが、よかったら買い取ってくれないか」「ああ、肉が食えるモンなら何でも買い取るぞ。美味ければ尚よい」
「助かる。いつもの解体場でいいか」
「そこで頼む」
「わかった」
士はボルハチを伴って店の裏手の解体施設へ行くと、アイテムボックス内の巨獣を取り出した。
「こいつはたまげた。
いつも以上に大物だな。
龍の一種か?
少なくとも俺は見たことがないぞ」
士の規格外の狩猟能力を知っているボルハチですら驚く大物である。
「そういえばまだ鑑定していなかったな……」
「あたしもよ」
「ちょっと調べてみるか」
「そうね。それがいいわ」
士と三奈江は同時に鑑定を発動する。
【鑑定結果】
分類 首長竜(海竜)
種名 フタバスズキリュウ(亜種)
「竜は竜でも恐竜みたいだな」
「そうね」
士と三奈江の会話について行けないボルハチが疑問をぶつけてくる。
「おいおい、お前達だけで納得してしまわないで、きちんと説明してくれ」
「ああ、鑑定を信じるなら、これは俺達のいた世界では絶滅したはずの巨大爬虫類だ」
「数億年前に私たちの世界、地球に存在し、現代では化石しか残っていないフタバスズキリュウという種類の亜種と出ているわね」
士と三奈江の説明について来られなかったのだろうか。ボルハチは口をあんぐりと開けて頭の上にクエッションマークが浮かんでいるかのような表情となっている。
「絶滅した恐竜がなぜお前達の手で仕留められたんだ」
しばしの沈黙の後、ボルハチからもっともな質問が出た。
「それは、今回行った世界が俺達の世界とは平行世界だったと言うことだろうな」
「そう、地球は地球でも、恐竜が絶滅しなかった可能性の世界ということだと思うわ」
「すまん、ますますわからんのだが……」
どうやらSF作品やらファンタジー作品やらが溢れている現代日本から来た士と三奈江の説明は、そんなものとは縁もゆかりもない中世風の世界の住人には理解不能らしい。
「まあ、要するに、俺達の地球によく似た別世界と言うことだよ」
「つまり、ここでも私たちの世界でもない、新たな異世界と言うことね」
「なるほど、それなら何とか分かる。
俺がそれ以上詳しく説明されても分からないだろうと言うことが……」
随分かいつまんだ士たちの説明に何とかボルハチが納得した。




