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「俺のこと嫌いなんでしょ?」と聞いたら、クラス一の美少女が泣き出した  作者: 大豆


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私、今日で引っ越すから

「ねえ」


「ん?」


「私、今日で引っ越すから」


「……は?」


「だから、今日でこの町を出るの」


「ちょっと待て。何それ」


「何って?」


「初耳なんだけど」


「うん。言ってなかったから」


「なんで?」


「言ったら、止めるでしょ?」


「当たり前だろ」


「だから言わなかったの」


「いやいや、幼馴染だぞ? 十年以上一緒にいるんだぞ?」


「だから言えなかったの」


「意味分からないんだけど」


「……ねえ」


「何?」


「今日、一日だけ私の彼氏になってくれない?」


「……は?」


「聞こえなかった?」


「いや、聞こえた。聞こえたから混乱してる」


「じゃあ、お願い」


「なんで?」


「最後だから」


「最後って……」


「今日で会えなくなるから」


「いや、引っ越すだけだろ?」


「そうだけど」


「別に会えなくなるわけじゃない」


「会えないよ」


「なんで?」


「私が会わないから」


「……どういうこと?」


「遠くに行くから」


「だからって、会えないわけじゃないだろ」


「会ったら、私が困るの」


「何に?」


「忘れられなくなるから」


「…………」


「だから今日だけ」


「……彼氏になったら何するんだ?」


「普通のデート」


「それだけ?」


「それだけ」


「じゃあ、いいけど」


「本当に?」


「うん」


「……ありがとう」


「でも一つ聞いていい?」


「何?」


「なんで今日?」


「今日が私の誕生日だから」


「え?」


「今日、十八歳になったの」


「……知らなかった」


「うん」


「お前、自分の誕生日くらい教えろよ」


「教えたら、何かくれた?」


「たぶん」


「じゃあ、何もらえたかな」


「……ケーキとか?」


「それだけ?」


「じゃあ、欲しいもの言えよ」


「本当にくれる?」


「今日だけなら」


「……じゃあ」


「何?」


「キス」


「…………」


「どうしたの?」


「いや……」


「嫌?」


「嫌じゃない」


「じゃあ、くれる?」


「……彼氏なんだから?」


「今日だけね」


「分かった」


「……目、閉じて」


「こう?」


「うん」


「……」


「……」


「終わった?」


「うん」


「なんか、恥ずかしいな」


「私も」


「じゃあ、行こう」


「うん」


「どこ行きたい?」


「どこでもいいよ」


「それが一番困るんだけど」


「じゃあ、昔よく行った公園」


「懐かしいな」


「覚えてる?」


「もちろん」


「小学生の頃、毎日遊んだよね」


「お前、ブランコ好きだったな」


「うん」


「俺は砂場で山作ってた」


「覚えてる」


「あの頃は楽しかったな」


「……今も楽しいよ」


「ん?」


「なんでもない」


「そういえばさ」


「何?」


「なんで引っ越すの?」


「……聞きたい?」


「そりゃ聞くだろ」


「親の仕事」


「それだけ?」


「……うん」


「なんか怪しい」


「探偵みたい」


「幼馴染だから分かる」


「何が?」


「お前、嘘つくとき左手を握る」


「……」


「ほら」


「……嫌だな」


「やっぱり嘘じゃん」


「ごめん」


「何があった?」


「……病気」


「え?」


「私、病気なの」


「…………」


「でも、治るから大丈夫」


「本当に?」


「うん」


「どんな病気?」


「言わない」


「なんで?」


「心配してほしくないから」


「馬鹿」


「……うん」


「俺に言えよ」


「言ったら、あなたは優しいから」


「それの何が悪い?」


「私が離れられなくなる」


「……」


「だから、今日だけ彼女になりたかった」


「……俺」


「うん」


「俺、お前のこと好きだった」


「……え?」


「ずっと」


「……嘘」


「本当」


「じゃあ、なんで言ってくれなかったの?」


「お前に好きな人がいると思ってた」


「いないよ」


「いたんだろ?」


「いたよ」


「ほら」


「あなた」


「……え?」


「ずっとあなたが好きだった」


「…………」


「だから、今日だけ彼女になりたいって言ったの」


「それ、ずるくない?」


「何が?」


「そんなこと言われたら……」


「……」


「今日だけじゃ嫌になるだろ」


「……ごめん」


「謝るなよ」


「じゃあ、どうすればいいの?」


「俺も一緒に行く」


「え?」


「お前の引っ越し先」


「無理だよ」


「なんで?」


「学校もあるでしょ」


「転校すればいい」


「家族は?」


「説得する」


「そんな簡単じゃないよ」


「じゃあ、俺が会いに行く」


「……」


「何年かかってもいい」


「……本当に?」


「本当」


「私、治療で何年も帰ってこられないかもしれないよ?」


「待つ」


「新しい彼女ができるかもしれないよ?」


「できない」


「どうして?」


「もう好きな人がいるから」


「……誰?」


「お前」


「……ばか」


「何回言われてもいい」


「私、絶対待たせるよ?」


「待つ」


「寂しいよ?」


「会いに行く」


「泣くよ?」


「慰める」


「わがまま言うよ?」


「聞く」


「……じゃあ」


「ん?」


「今日だけじゃなくて」


「うん」


「これからも、私の彼氏でいてくれる?」


「もちろん」


「……よかった」


「泣くなよ」


「だって……嬉しいんだもん」


「じゃあ、約束な」


「うん」


「治ったら、一緒に帰ってこよう」


「うん」


「そのときは、ちゃんと告白する」


「今日したじゃん」


「今日は彼氏ごっこだったから」


「じゃあ、今から本番にする?」


「……する」


「じゃあ、聞くね」


「うん」


「俺と、付き合ってください」


「……はい」


「これからも、ずっと」


「……はい」


「じゃあ、もう一回キスしていい?」


「……今日だけじゃないよ」


「え?」


「これからも、ずっとだから」

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