「俺のこと嫌いなんでしょ?」と聞いたら、クラス一の美少女が泣き出した
「俺のこと嫌いなんでしょ?」と聞いたら、クラス一の美少女が泣き出した
「ねえ、俺のこと嫌い?」
放課後の教室で、俺は彼女にそう聞いた。
目の前にいるのは、学校で一番有名な女子。
水野美咲。
成績優秀。
運動神経抜群。
それでいてモデルみたいに綺麗。
男子からの人気はもちろん高く、休み時間になれば彼女の机の周りにはいつも人が集まっている。
そんな彼女と俺は、幼馴染だった。
家が隣同士で、幼稚園の頃からずっと一緒。
……だったのだが。
高校に入ってから、彼女は俺にだけ冷たくなった。
「おはよう」と言っても無視。
話しかけても「別に」としか言わない。
俺が他の女子と話していると、なぜか不機嫌になる。
そして今日。
俺はついに我慢できなくなった。
「俺、何かした?」
「……別に」
「じゃあ、なんで俺にだけ冷たいんだよ」
「…………」
彼女は黙って窓の外を見た。
夕日に照らされた横顔は、いつもより寂しそうだった。
「俺のこと嫌い?」
もう一度聞く。
すると彼女は俯いた。
「……嫌い」
「そっか」
思ったより胸に刺さった。
「じゃあ、もう話しかけないようにするよ」
俺が鞄を持った瞬間だった。
「待って!」
突然、腕を掴まれた。
「……え?」
「行かないで」
「でも、俺のこと嫌いなんだろ?」
「違う」
「さっき嫌いって」
「……あれは」
彼女の声が震えている。
そして。
ポタッ。
床に涙が落ちた。
「え……」
「ごめん……」
「なんで泣くんだよ」
「だって……」
美咲は涙を拭った。
「好きな人に嫌われたくなかったから……」
「…………」
「だから、嫌われる前に嫌ってるふりをしたの」
俺は言葉を失った。
「高校に入ってから、あなたが女の子と話してるのを見るたびに嫌だった」
「……」
「でも、そんな自分が嫌で……」
「……美咲」
「だから、あなたに冷たくすれば、少しは気持ちが楽になると思った」
彼女は泣きながら笑った。
「全然、楽にならなかったけど」
「…………」
俺はしばらく何も言えなかった。
正直、頭が追いついていなかった。
あの美咲が。
俺を好き?
「……嘘だろ」
「嘘じゃない」
「だって俺たち、ずっと幼馴染だぞ?」
「うん」
「今さら?」
「今さらだから困ってるの」
美咲は顔を赤くした。
「昔は何とも思わなかった。でも高校に入って、あなたが他の女の子と話してるのを見たら、すごく嫌だった」
「……」
「あなたが誰かと付き合ったらどうしようって思った」
「…………」
「でも、私から好きなんて言えなくて」
彼女は俺の手を離した。
「だから、もういい」
「え?」
「今日で終わりにする」
「何を?」
「幼馴染」
彼女は泣きそうな顔で笑った。
「幼馴染なら、こんなに苦しくないから」
「……待って」
俺は彼女の手を掴んだ。
「俺も言っていい?」
「……何を?」
「俺も、最近ずっとお前のことが気になってた」
「…………え?」
「お前が俺に冷たくするようになってから、ずっと気になってた」
「それは……」
「嫌われたと思ってたから」
「……」
「だから、今日聞いたんだ」
俺は少し恥ずかしくなりながら言った。
「俺のこと嫌いなのかって」
美咲は目を丸くした。
「じゃあ……」
「うん」
「私が好きって言ったのは……」
「嬉しかった」
彼女の顔が真っ赤になる。
「……本当に?」
「本当」
「……じゃあ」
美咲は恐る恐る俺を見る。
「私たち……付き合える?」
「俺から言おうと思ってたのに」
「……じゃあ、早く言って」
「分かった」
俺は一度息を吸った。
「美咲」
「うん」
「俺と付き合ってください」
「……はい」
彼女は嬉しそうに笑った。
それから数日後。
俺たちは付き合い始めた。
学校では今まで通り、彼女は人気者。
俺は普通の男子。
当然、俺たちが付き合っていることはすぐに噂になった。
そしてある日の昼休み。
俺が教室に入ると、クラスの男子が騒いでいた。
「おい、聞いたか?」
「何が?」
「水野に告白した男子がいたらしいぞ」
「マジか」
「しかも、めちゃくちゃイケメンだったらしい」
「水野、なんて答えたんだ?」
俺は少し離れたところで聞いていた。
すると。
「断ったらしい」
「なんで?」
「好きな人がいるからって」
俺は思わず美咲を見る。
彼女もこちらを見ていた。
そして、いたずらっぽく笑う。
「……誰なんだろうな」
俺が言うと。
「さあ?」
美咲は笑った。
そして、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「鈍感な幼馴染」
「ん?」
「なんでもない」
その日の帰り道。
俺たちはいつものように並んで歩いた。
昔は何とも思わなかった距離が、今は妙に近く感じる。
「ねえ」
「ん?」
「手、繋いでいい?」
「……今さら聞く?」
「だって恥ずかしいし」
俺は笑って、彼女の手を握った。
すると美咲も、ぎゅっと握り返してくる。
「ねえ」
「何?」
「私、ずっと後悔してた」
「何を?」
「もっと早く好きって言えばよかったって」
「俺も」
「……本当に?」
「うん」
「じゃあ」
彼女は俺の肩に頭を寄せた。
「これからは、後悔しないようにしようね」
「そうだな」
夕暮れの道を、二人で歩く。
俺たちは幼馴染だった。
そして今日から。
それだけじゃなくなった。
……ただ、一つだけ問題がある。
付き合い始めてから分かったことなのだが。
「ねえ、今日どこ寄る?」
「どこでもいいぞ」
「じゃあ、私の家」
「え?」
「昔から隣だったじゃん」
「いや、それはそうだけど」
「今さら何を恥ずかしがってるの?」
「付き合ったばかりなんだから、少しくらい恥ずかしがらせてくれ」
「ふふっ」
彼女は楽しそうに笑った。
どうやら俺はこれから。
幼馴染という関係よりも、ずっと大変な毎日を送ることになりそうだ。
でも。
それも悪くないと思っている。
なぜなら。
ずっと隣にいた彼女が。
今度は、俺の彼女になったのだから。




