俺と友人と平和な日常
ここはアイオライト学園。
王国に住まう12歳から18歳までの子供が通うことが義務付けられている。
貴族も平民も学園内では平等を歌っているが、実際はそんなことにはならない。
結局貴族の場合は家庭教師がついていて、12歳で入学する頃には基本的な教育は終わり、専門的な学科や一種の社交場として交流のために入学することが一般的だ。
逆に平民は無償で授業を受けることができるが、家庭教師なんていないのが普通なので基礎からきっちり叩き込まれる形になるので貴族のような優雅な交流なんて時間はない。
そのためクラス分けをした際、Bクラスは貴族、Cクラスは平民という感じで分かれることになる。
Aクラスは特別クラスで、成績や剣技など何かしら一点飛びぬけておりB,Cのどちらからもはみ出した存在が在籍する。
ちなみに悪い意味でとびぬけた生徒はDクラスに在籍することになる。
ここにいるのは成績の悪さもさることながら性格面で問題を起こして入ることになる生徒がほとんどだ。
そして、今年はそのAクラスに久しぶりに平民が入ってきた。
彼女の名前はヘロイネ。平民でありながら成績優秀で魔術に関しても磨けば光る才能を秘めているとして注目されている。
まぁ、そこは別にいい。Aクラスについて俺が知っている理由は、俺のかわいい妹がAクラスに入るからだ。
「わー、やっぱりメアリーが一番かわいいなぁ」
「ジョン……撮影魔道具の持ち込みは禁止になっているはずだが?」
くぅ、なぜばれた。
最新型の超小型眼鏡式撮影魔道具の市場販売は明日からだから、一般にはばれていないはずなのに。
あきれ顔で俺を眺めているのはこの国の第二王子でクラスメイトのヴェイレン・オスリック。
第二王子ではあるが、王位継承権は彼にある。王妃と国王の血を引く子だ。
第一王子であるブライスは側室の息子の為、継承権の順位としては2番目になるというちょっと面倒な関係だ。まぁ、彼に関しては隣国に婿入りすることが決まってるので、王子同士の仲はいい。
というか、良くなるように俺が取り持った。
「珍しく眼鏡をかけていると思ったら、そういうことでしたの。悪知恵が働きますのね」
ヴェイレンと同じく呆れた顔を俺に向けるのはジュノー・フィデリア。彼女もクラスメイトでヴェイレンの婚約者だ。入学当時はギスギスというかすれ違っていたが、この一年で軌道修正した。
俺からすればもうじれったくって俺ちょっといらしい雰囲気にしてきます!って斬首覚悟で突っ込んだ結果、二人は素直になり、名実ともに素晴らしい婚約者同士となった。
ちなみに頑張ったけど、いらしい雰囲気にはならなかった。
「しかし、メアリー嬢もAクラスとはさすがだね」
「でしょ、でしょ?もうね、頭もいいし、魔術も得意だし、裁縫に料理にできないことは無いんだよ!」
うちの妹かわいいでしょアピールをすると、苦笑いを浮かべられた。なんでだよ。
「ジョン、あなたがいろいろ教えたのでしょう?」
「もちろん、兄として妹の勉強を見てあげるのは勤めだろう?」
「あなたもいいお嫁さんになれそうね」
メアリーができることは基本的に俺が全部教えているので、そう考えると確かに嫁入りできそうだ。
「ジュノーがお嫁さんにしてくれる?」
きゅるんとした目で問いかける。ここは二人から総突っ込みが入ると期待していたのだが……
「そうですわね、いいかもしれませんわ。わたくしはヴェイレン様に嫁ぐ身ですので、あなたに嫁ぐことはできませんが、あなたをお嫁にするのはセーフですわね」
微塵もセーフではないんですが?
「ああ、それは妙案かもしれない。さすがに僕の側室にジョンを迎えるのは周囲の反対が多い気いだろうからね」
おい、どうした。二人とも今日は熱でもあるのか?
それともあれか、俺が普段ジョークを飛ばしすぎていたからその反撃か?
「つまり、わたくしがジョンを娶れば今後も3人で仲良く暮らせますわね!両親に帰ったら相談ですわ」
「よし、僕も帰ったらさっそく父上に掛け合ってみよう!」
おいおい?止まらないぞ。
だれか、この二人を止めてくれないか?
周囲にヘルプの視線を投げかけるが全員が目をそらす。
「ジョン、君はね自分で思っている以上に愛されているんだ。
もうあきらめて嫁ぐ方向で覚悟を決めた方がいい」
ヴェイレンの乳兄弟であり、護衛を務めるファロンが死んだ目で俺の肩をたたいた。
「いやだよ、俺は卒業後は地元に戻って兄さんの手伝いをしながら悠々自適な次男生活を送るんだから!
それに世間的にどう思われる?王妃に嫁がいるっておかしいだろ??
しかも男だぞ、間男だろうが、どう見ても!」
俺がそこに入ったらジュノーの子供が王子の子ではないかもしれないなんて、あらぬ疑いがかかるだろう。
「君は王族としての仕事は全くできないから、やることはジュノーの秘書のようなことかな。
あとは……まぁやることないから王宮でのんびり、趣味の魔道具作りをしていてくれたらいいんだよ」
笑顔でとんでもないこと言っているなヴェイレン……。ん?もしや!
そういうことか、俺の類まれなる魔道具作製技術が他国に流れないよう、また王宮で独占をもくろんでこんなあほなことを言い出したんだな?
そうだな、俺が権力にも女にも惹かれないからそういう手を打ってきたんだろう。
俺が妙な魔道具を作るのは前世の記憶的なものがあるからだ。
その記憶があるせいで、この世界で不便だなと感じることがあった。それを解消するために魔道具作りをしているだけであって特別な何かを作れるわけじゃない。
ちなみに前世は女だったので、今が男でも女性を恋愛対象として見れないでいる。
かといって男性を恋愛対象としても見れない。
そのせいで博愛主義者って一部では言われているが、まぁ面倒なのでその辺は放置。
ヴェイレンとジュノーの関係がうまくいくように橋渡ししたりしているように、別に博愛ってわけじゃない。身近な人にとはそれなりに親しく仲良くしているからな。
ついでにこの二人によく似たキャラクターが出てくるゲームを前世で遊んでおり、似てるなぁーってノリで接していたら彼らの悩みとキャラクターの設定が似ており、助言したらなんかいい感じに二人がくっついたっていう。
まぁ、ゲームが元の世界だったのかもしれないなぁと思うのは俺と妹の固有魔法。
あ、魔術は学べば使えるようになるけど、魔法は適性が無いと使えない。固有や血族でしか利用できないものが多い。
鑑定と呼ばれる魔法。これはアカシックレコードにアクセスすることができるもので、あらゆる情報を得ることができる。
対象物の詳細、問題など細かにわかるので、どうしたらいい方向に進めることができるかなどを知ることができる。
妹の場合は人物の悩み、好感度、基本プロフィールだけだが、十分にすごい事だ。
俺の場合は前世の記憶+アカシックレコードのお陰で魔道具作りができているということだ。
そら、いくら前世で物を知っていたとしても、どうやって作るかなんてことまでは知らないからな。ありがとう固有魔法。おかげでこたつを作ることに成功したよ。
俺の固有魔法は誰にも教えていないつもりだが、どこからか情報が洩れて国が俺を有益な道具と考えているのかもしれない。だから、将来の王と王妃である二人が頓智来な事を言い出したのだろう。
「あのな、二人とも。俺を娶りたいくらい俺を愛してくれているのはうれしいが、俺にも選ぶ権利があると思う」
冷静に話し合えば妥協点くらいは見つかるはずだ。
「国家権力に逆らえるとでも?」
「ひぃー、なんでこういう時だけ王家の権力を振るおうとするんですか、やだー!」
絶対零度の笑みを浮かべるヴェイレンに逆らえるわけない。普段は花がほころんだ様な優しい笑顔がキュートな王子様だけど、俺に対しては時々容赦ない笑顔を向けて黙らせようとする。
「ジョン……わたくしでは、あなたに愛される価値はないのかしら?」
「そんなわけないじゃないですか、ジュノーのような素敵な女性は俺の妹意外にいませんー!」
「じゃあ、問題ないじゃないか。血縁者との婚姻は禁止、妹以外の素敵な女性がジュノーしかいないなら、答えは決まったじゃないか」
なぁ?と頷きあっているが、いいのか?なにも良くないと思うんだが?
「あんまりわがまま言うと、性転換させてもらうぞ。君が女性なら堂々と僕の側室に招けるのだから」
王家に伝わる特殊な魔法で、王家の子供が女の子しか生まれなかった場合に男の子へ性別を変える魔法だ。
逆にろくでもない王子で王家を任せることはできないと判断した場合、女に変えて嫁がせることになる。
やめてほしい、国家権力怖すぎる。
「わたくしとしても、ジョンがジェーンになってもいいと思っていますわ。
そうしたら、ドレスの着せ替えっこや女子会が楽しめますもの」
美しいジュノーとの女子会とか、確かに絶対楽しい。……って危ない、一瞬いいかもと思ってしまった。
「いいか、俺は誰とも結婚するつもりはない。だからどちらにも嫁げない、いいね!」
すごくショックを受けている二人、全く普段は突っ込み役のファロンが止めないから二人は暴走するんだぞ。
「よかった……お前が誰とも結婚するつもりじゃなくて、本当に良かった」
いや、なんでファロン泣いて喜んでんだよ。
優しい笑顔だが、内心冷めていた王子、厳格な性格で他人と自分に厳しすぎて距離を置かれていた婚約者、二人のそばにいるだけで表情も心も凍り付いていた護衛。
それが一年で、ファロンは二人のいちゃつきに砂を吐いたり胃痛に悩まされる護衛になり、ジュノーは王子が大好きと大きな声で公言し自分に少し自信が持てるようになったのか周りとの接し方も柔らかくなり、ヴェイレンは心から笑うようになった。
人間らしくなりすぎたって声も一部ではあるけど、人間だからね。
そんな三人が俺は好きだ。一番好きなのは妹だけどね。
だから妹を泣かすような奴が現れたら、たぶん冷静じゃいられないと思うんだ。




