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第三十二話 マスターの特権

「継承……ですか」


 メルセデスが父の言葉を反芻すると、ベルンハルトは静かに頷いた。

 ダンジョンは攻略した者の所有物となるが、その血を継ぐ者にも使えるという。

 そしてダンジョンを使える事こそがアーベントロートの正当な後継者である事の証明であり、これはオルクスで最大の軍事力でもある。

 もしもこれを失えば、オルクスの戦力は半分以下になってしまう事だろう。


「そうだ。まだ国というものが無かった無法の時代……『最初の八人』と呼ばれる者達がダンジョンを攻略し、それぞれダンジョンの支配権を得たという。

エルフェが二人、吸血鬼が二人、シメーレが二人、フォーゲラが二人……。

彼等はそれぞれが国を造り、それは今でも尚大国として繁栄している。このオルクスもその一つだ。

その後、八つの国はそれぞれがダンジョンという強大な軍事力を持つ事で互いを牽制し合い、それは今日まで続いている」


 元の世界での核のようなものか、とメルセデスは考えた。

 戦争は数で勝る方が勝つというのは常識で、無限の軍勢を得るに等しいダンジョンは脅威の一言に尽きる。

 戦えばどちらも無事では済まない。勝とうが負けようが、国は魔物に蹂躙されてしまうだろう。

 だから互いが抑止力となり、氷上の睨み合いがかろうじて続いているのだ。


「それならば、王家はもっとダンジョン攻略に乗り気になってもよいのでは?」

「無論悲願ではあるだろう。しかしそれは新たな王の誕生を招き、自分達の権力を脅かす事に繋がりかねない。

自分達で攻略出来るならばともかく、そんな都合よくいかんのが現実だ」


 ダンジョンを持つ者は王だ。手に入れたその瞬間からダンジョンに住む数多の魔物と、これから量産される更に数多の魔物を無条件に従える事が出来る。

 そんな力を持つ者が王家以外に現れてしまえば、自分達の権威が脅かされてしまう。

 だから王家はダンジョンという力を欲しながらもその攻略を騎士などに任せる事が出来ず、真実を明かす事も出来ず、情報を伏せたままにしておくしかないのだ。

 本音を言えばシーカーの立ち入り自体禁止してしまいたいのだろうが……それをやればダンジョンからは魔物が溢れて国が蹂躙される。

 どうせシーカーでは真の意味でクリア出来ないという侮りもあるのかもしれない。


「機能が制限されると言いましたね」

「うむ。王家の者は魔物の量産と使役、アイテムの量産なども可能らしいが、それは全てダンジョンにあらかじめ登録してあるものだけだ。

真の使い手ならば、新たに魔物を登録する事でダンジョンが生み出せる魔物の種類そのものを増やせるらしい……文献が正しければな」


 初耳であった。

 思えばメルセデスはダンジョンの持ち主なのに、その機能を全て把握しているわけではない。

 これは一度、ツヴェルフに詳細を聞いておくべきかもしれないとメルセデスは考えた。


「どちらにせよ、王家の血を絶やす事は避けねばならぬ。

メルセデスよ、影武者の命を狙っている輩から何としても情報を聞き出せ。

何なら捕えて屋敷に連れてこい。私が直々に拷問にかけてくれる」


 サラッと拷問という単語が飛び出す辺り、やはりこの男も普通ではない。

 どちらが悪党なのか分からなくなるな、とメルセデスは軽く自嘲した。



「ツヴェルフ。ダンジョン攻略者本人と、子孫とで使える機能の違いを教えてくれ」

『イエス、マスター』


 ベルンハルトとの話を終えたメルセデスは一度、学園に戻る前にシュタルクダンジョンの中へと自らを閉じ込めた。

 マスターキーを扱うメルセデス本人がダンジョンを解凍しないまま中に入った場合、当然外にマスターキーが放置されてしまう。

 この時、マスターキーは盗難防止の自己防衛機能としてダンジョン内の岩などを外に出し、その内側に自らを埋める事で外からは見えなくなる。

 簡単に言えば『いしのなかにいる!』状態になる事で自らを隠すのだ。

 メルセデスはダンジョン内に増設した屋敷の一室に主要メンバーを集め、ツヴェルフに説明を求めた。

 今ここにいるのはメルセデス、ツヴェルフの他にベンケイ、クロ。

 方向性を見失って迷走を続けるシュフに、先日捕獲したアシュタールの4人と1匹と一羽だ。

 アシュタールにもそのうち名を与えるべきかもしれない。

 ちなみにクライリアはグリューネヴァルト家でお留守番をしている。


『まずマスターもご存知の通り、マスターキーに封じての持ち運び、解凍、圧縮といった基本機能は本人でなくとも血を継いでいれば使用出来ます。

同様に魔物、アイテムの量産も使用可能です』


 ここまではメルセデスも知っている。

 そしてこれだけでも十分に危険だ。一個人の力で国を揺るがしてしまえる。


『更に攻略者本人はこれに加え、新規登録をする事が出来ます』

「それは例えば……ここにいるシュフとアシュタールを登録し、量産出来るという事か?」

『はい、可能です。登録しますか?』

「……しておこうか」


 ベーゼデーモンもアシュタールも、どちらもシュタルクダンジョンにはいない魔物だ。

 そしてどちらも高い戦闘力を持つので、増やせるならば増やしておいて損はない。

 しかしシュフを量産すると変なことになる気しかしないので、量産はまだやらない。


「聞くが、ベンケイを登録し直して増やす、とかも出来るのか?」

『可能です。ただしベンケイは通常のアシュラオーガよりもコストが高くなってしまいます。

また、この場合同一の魔物である前のアシュラオーガは削除されます』

「ふむ」


 これはとりあえず保留でいいか、とメルセデスは考えた。

 ベンケイを増やせるのは戦力的に魅力だが、自分にしか従わないベンケイを増やしても後世の吸血鬼が困るだけだろう。


『次に、形状の更新。マスターはいつでもマスターキーの形状を変える事が出来ますが、子孫にそれは出来ません』


 メルセデスは今、マスターキーの形状をハルバードにしている。

 これはいつでも変更出来るが、もしメルセデスの子孫なりがマスターキーを継承した場合はハルバードから変更出来ないらしい。

 地味に厳しい縛りだと言える。


『また、ダンジョンの増築や改装も攻略者本人だけに許された権利です』

「なるほど、随分差があるんだな」

『はい。そして私のようにダンジョンそのものが従い、こうして話すのも攻略者本人のみです』


 ツヴェルフはこのダンジョンの全てを知る頭脳だ。

 それまで制限がかかってしまうとなると、もし隠された機能があっても子孫にそれを知る術はない。

 実に攻略者本人以外には厳しいシステムであると言える。


『最後に守護者の使役。攻略者は守護者を召喚して使役する事が可能です』

「守護者というと……黒の扉の向こうにいたアレか。アレを私が使えるのか?」

『イエス。ただし、守護者が万一破壊された場合、ダンジョンの機能が24時間ほど停止してしまいます。呼び出す際にはご注意を』


 かつてメルセデス達を苦しめたシュバルツ・ヒストリエは今でも一対一では勝てないだろう強敵だ。

 それがリスク付きとはいえ、味方に出来るというのはかなり大きい。

 

『ところでマスター。マナが大分余っていますが、いかがしましょう?』

「どれほどだ?」

『分かりやすいように数値化します』


【ダンジョンポイント:600】

《魔物生産》

・ゴブリン 消費ポイント1

・ゴブリンゾルダート 消費ポイント2

・ゴブリンヘクサー 消費ポイント3

・ゴブリンフューラー 消費ポイント8

・ゴブリンゲネラール 消費ポイント30

・ゴブリンニート×3 消費ポイント1

・オーク 消費ポイント5

・ウスイホン・オーク 消費ポイント7

・キョセイズミ・オーク 消費ポイント3

・ラント・ドラッヘ 消費ポイント8

・ゲリッペ・フェッター 消費ポイント5(武器込み7)

・ヴァラヴォルフ・ブラウ 消費ポイント2

・ヴァラヴォルフ・ロート 消費ポイント12

・ワルイ・ゼリー 消費ポイント9

・ワルクナイ・ゼリー 消費ポイント1

・トテモワルイ・ゼリー 消費ポイント11

・テガッツェ 消費ポイント55

・シュヴァルツ・ヴォルファング 消費ポイント80

・アシュタール 消費ポイント75

・アシュラオーガ 消費ポイント150

・ベーゼデーモン 消費ポイント145

・ベービドラッヘ 消費ポイント100


「魔物はもういい。後で見る」

『了解しました。それと表示も次回から簡略化します』


 ズラリと魔物が表示されたが、全て見ているとキリがなさそうなので表示を中断させた。

 とりあえず自分が今まで出会った印象深い魔物は大体見られたし、他のどうでもいいのは後でゆっくり調べるとしよう。

 それより、今は他に何が出来るかだ。


《道具生成》

・魔物の餌(10食分) 1P

・鋼の剣 2P

・鋼の斧 2P

・鋼の槍 2P

・鋼の盾 2P

・鋼の弓矢 2P

・マスケット銃 3P

・魔法の杖 2P

・火の魔石 3P

・陽の魔石 6P

・水の魔石 3P

・氷の魔石 6P

・地の魔石 3P

・鉄の魔石 6P

・風の魔石 3P

・雷の魔石 6P

・封石 12P


「アイテムも後で見る。ダンジョンの拡張などはどのくらいだ?」

『1Pを支払うごとに1マス増設出来ます。1マスは大体縦、横1mの空間と思って下さい。

建築物は物によりますが、何のオプションも付けなければ民家一軒を建てるのに10Pといったところです』


 メルセデスは考える。

 ダンジョンを攻略したのが自分だけだなどと、そんな楽観視は最初から抱いていない。

 もしかしたら今後、同じくダンジョンを持つ者と戦う事があるかもしれない。

 そうなった時の為にも、今から戦力は増強しておくべきだろう。


「ところで魔物の餌とあるが……与えないと死ぬのか? 今まで与えた覚えがないが」

『いえ、餌がなくてもダンジョン内で魔物が飢え死にする事はありません。しかし与える事で忠誠心が上がります』


 とりあえずポイントを使うか、それとも貯めておくべきか……。

 使い道はしっかり考える必要がありそうだ。

メルセデス(ピーコ、ピー太郎、ピー助、鳥バード……どれがいいかな)

アシュタール(アカン名前付けられそうな気がする……)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 忠誠心や契約も引き継いじゃうと、他の魔物も登録出来なくなるんじゃないの?
[一言] ウスイホン・オークとキョセイズミ・オーク… 笑ってしまいました 野生のラスボスも面白かったので本作を発見できて嬉し勝ったです
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