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数式の亡霊Sheet10:エピローグ

開店前のスナック『エンター』。


自称異世界エルフのエルは先日川口からプレゼントされた魔道具(タブレット端末)を弄っている。


「またやってんのか」

店主のアキラが呆れ気味に声をかけた。



川口は約束通り翌日にプレゼントを持ってきてくれた。

育美にも顧問弁護士を紹介済みとの事。

大事には至らない様だった。


「そういえば、この店のサイトってないよね」

川口が尋ねる。

「あぁ、商店街のやつで紹介ページはあるけど、それだけだね。小さい店だし要らんっしょ。うん、要らないよ」

何かを察したアキラは念を押して不必要を訴えた。


「エルちゃんはどう?さらなるスキルアップを兼ねてスナック『エンター』のオリジナルサイト作るってのは?」

「この魔道具で出来るかな?」

「出来る出来る。あと動画配信とかさ」

「グッさん、あんまけしかけないでよ」

アキラの制止も虚しく盛り上がる川口。


「動画ならアキラを撮る。カクテル作ってるとことか…」

「えぇー」


そんなこんなでエルはスナック『エンター』のオリジナルサイトの制作と動画配信をするつもりなのだ。



「育美さん、今日は顔出すってよ。LINE来てたわ。美味しい"フィナンシェ"持って来るらしい」

開店準備を始めながらアキラが言う。


「あのファイル…数式の亡霊…」

エルがつぶやく。

「え?あんだって?」

ちょっとフザケながら聞き返すアキラ。


「元いた世界の魔法の話ですが…」

エルが静かに語り始める。


魔法には大きく分けて詠唱するものと無詠唱のものがある。

特に詠唱魔法で見られる現象だが、間違えずに詠唱しているにもかかわらず魔法が発動しない事がある。

原因がわからないため、そういうものは「"詠唱の亡霊"が悪さをしている」と片付けられるのが常だ。

育美のファイルを見た時にふとそれを思い出し、ちゃんとしたマクロの記述でも"数式の亡霊"が悪さをしておかしな挙動をする事もあるのではないかと思った。


「…という話です」


「分かった。分かったけど育美さんにはそれ言うなよ。何か叔父さんが取り憑いてるみたいに聞こえるし、親しい人の御霊(みたま)を亡霊とは言わんからな」

「分かってますよ。でも良い意味で何か見守れてるというか、巡り合わせに手を貸してもらってる気がしません?例えば育美さんの誕生日と私のこの世界における誕生日がちょうど半年ずれてる23日だったり…」

「エル、お前なぁ…それタブレット端末欲しさに咄嗟に思い付いたこじつけだろ。その前にエルフは誕生日なんて祝わないって言ってたじゃんか」

「自分のホントの誕生日なんてどうでもいいんです。それよりアキラと出会った日の方が大事なんだから」

「エル…」

「アキラ…」

一瞬の静寂が訪れ見つめ合う二人…


「ところで俺の誕生日いつか知ってる?」

「…それって、今関係あります?」


〈完〉

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