訪問 3
”もう、話しが持たないぞ”
アールヴはイライラしながら、グリメルダに笑顔で話しをしながら思う。
「殿下、どうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもありませんよグリメルダ嬢」
「ワタクシからお誘いするのは大変恥ずかしいのですが、今度演劇でも・・・」
グリメルダがアールヴを誘おうとした時、突然部屋のドアが開き、挨拶もなくイムレと他の騎士三人、侯爵家使用人の二人が入って来た。
「なんですの?いきなり入って来るなんて失礼ではありませんか!?」
アールヴと話す幸せな時間を邪魔されたグリメルダが部屋に入って来た全員を睨み付け強い口調で言うが、それに対しびくつき体を縮めるのはこの家の使用人二人のみで、他の人間は聞こえて無いかように無反応でアールヴとグリメルダの前まで来ると立ち止る。
「殿下」
「わかったか?」
イムレがアールヴに一礼をすると、アールヴは横目でイムレを見ると、先ほどの笑顔は消え真剣な表情になり部屋に緊張感で空気が張り詰めた状態になる。
「はい。使用人に聞いた所、ここにはいないとのことでしたが、一応屋敷全体を探しましたが見当たりませんでした」
「この屋敷を勝手に?いくら王族でも他人の屋敷を無断で歩きまわるなんて許されませんわ!」
「屋敷に入る許可を出したにはそちらではなかったか?」
イムレの報告に動揺しながらもそれを隠そうとするグリメルダにアールヴが先ほどの話し方からは考えられないほど冷たい瞳と言葉を投げかける。
「そ、それは、屋敷を歩きまわっていいと言う意味ではありませんわ」
「そして、二階の部屋にこちらが落ちていました」
イムレがテーブルに置いたのは、片方のイヤリング。
「グリメルダ嬢、これは誰の物で?」
「これは、ワタクシのですわ。片方なくしておりましたの、見つけてくださりありがとうございます」
「もう片方は?」
グリメルダが慌ててイヤリングを取ろうと手を伸ばそうとしたが、先にアールヴがイヤリングを取ってしまう。
「部屋にありますわ」
アールヴがもう片方のイヤリングをポケットから取り出し、両方をグリメルダに見せると、全身から血の気の引いて行くかの様になり、小刻みに体が震え出した。
「もう一つも落としていたのでしたわ。殿下が拾っていて下さったのですね。ありがとうございます」
「これは、私があなた以外のある女性にあげた物だ。世界に一つだけの、他に同じ物は存在していない。これが誰の物でどうしてここにあるのかを説明してもらおうか」
「それは・・・よく見たら違う物でしたわ。使用人の誰かの物じゃないかしら?」
「そうか。では、私はここの使用人にプレゼントした、と言う事か」
「そんな!そんな事ありえませんわ!!」
「なぜそう思う?」
「使用人ごときが殿下からプレゼントをもらうなんて」
「だが、これは私がプレゼントしたもので間違いないのだが」
「ですから!殿下は間違った人間にプレゼントをしてしまったのですわ!!本来、ワタクシがそれをもらうはずでしたの!!!」
「なぜ?」
「なぜって、殿下と結婚するのはワタクシですもの!だからあの邪魔な偽者は排除したのですわ!!」
アールヴが怒りを抑えながら話している事に対し恐怖さえ覚えたじろぎながら言い訳を返していたが、段々と自分の感情が高ぶり、立ち上がり声を張り上げながら反論していると、つい本音とアールヴの知りたかった事を口に出してしまった。
言った後で、自分が何を言ったのか気付いたが後の祭り、もう遅い。
「彼女はどこだ?」
さっきより低く怒りに満ちた声のアールヴ。
「彼女とは、誰の事ですの?」
グリメルダはアールヴに睨まれ腰を抜かしソファに倒れ込むように座り込んでしまう。
「どこだ?」
「!?」
「どこだ?」
「ワタクシはただ、間違った事を正そうと・・・」
「どこだ?」
「ぃゃ・・・」
”殿下がこんな顔でワタクシを見るなんて・・・イヤ!”
恐怖と絶望で気を失ってしまったグリメルダ。
「そこの二人、全部話せ。嘘、偽り、隠し立ては許さないからな」
気を失ったグリメルダには全く気にも留めず、イムレの横に立っている侯爵家の使用人二人の方を向き訪ねる。
二人は、怖いのか小刻みに震え、地面に頭をなすりつけるように土下座をすると、これまでの事を震える声で話し始めた。
「お嬢様は、妃候補の方は間違って選ばれ本来は自分がなる予定だったとおっしゃられて、自分がなるために妃候補の方がいなくなれば今度は自分がなれると。それで、王妃様がお呼びと偽り呼び出しました。
申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした」
「それで無事なのか?」
「まだ無事だとは思います」
「思います?・・・どこにいる?」




