書庫
書庫
さくらは部屋中央に置かれてある椅子に座り本を読んでいた。
書庫には、数は少ないものの人の出入りがありそれなりに利用されている。
「ここいいですか?」
「どうぞ」
「では、失礼します」
ん?
さくらは、本に集中していたため気にも留めず答えたが、他にも沢山席は空いているしわざわざ自分の前に座る必要はないのではないか?と思い本から目線を目の前に座った相手に移す。
「イムレ様!?」
目の前に座った笑顔のイムレに驚き思わず大きい声出てしまい、瞬間手で口を押え周りを見回すと近くに居た数人の人がさくらの方を見る。
さくらを見た人の目線に入ってきたのは、笑顔のイムレ。笑っているイムレなんて見た事のない周りにいた人達は驚き、二度見。そんな目線に気づかないさくら、気づいているが気にも留めないイムレ。
「どうもこんにちは、さくら様」
「こんにちは、イムレ様」
「そんなにあからさまに表情を変えなくても・・・」
「あら、それは失礼しました。今日はどうされたのですか?」
さくらが愛想笑いをイムレに向ける。
「演劇はどうだったのかと思いまして」
「楽しかったですよ」
「そ、う、ですか」
演劇の内容が今さくらが読んでいる本と同じなため、少しは嫌味などを言われることを想定していたので、そんな事は全くない笑顔で答えられたことに驚く。
「最初、劇の内容聞いた時は少しイラッとしましたよ。でも、劇場も劇も素敵だったし楽しかったのでイムレ様には感謝です」
「そうですか。知りたかった内容はわかったのに、本は読を読んでるのですか?」
「えぇ、内容がわかっていても読んでみたい本に変わりはありませんから」
「なるほど」
「イムレ様、この歴史はご存じなのですよね?」
「もちろんです」
「初代王である守り人は大公が反逆した時代にもいたんですよね?ということは、守り人は不死身なんですか?劇の通り若いままなら不老不死?」
「不死身や不老不死、かどうかはわかりませんが、今も生きていると言われています」
「そうなんですね」
今もどこかに居るんだったら、帰る方法を教えてもらえないかなぁ。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、それを見透かしたようにイムレが口をひらいた。
「そんなに、守り人の事が気になるのでしたらひとつ忠告を」
「はい、なんでしょうか」
さくらが背筋を伸ばし話しを聞く。
「王宮に森があるでしょう。あそこは迷霧の森、守り人の地と言われており、あの森に入って出て来られる人間は限られています。その証拠に森と王宮外を隔てる城壁はありません。森から侵入しようとしても王宮にたどりつくことが出来ないので城壁を作る必要性がないのです。なので、絶対に入らないようにしてくださいね」
「わ、わかりました。」
「本当にですよ」
「はい、命をかけてまでそんな事しませんって」
「それならよろしいです」
イムレが冗談などではなく真面目に話しているのを聞いて、さくらは行ってみたいとは思ったが本当に帰って来れなくなりそうなので森には近づかない事を心に決めた。
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