帰り道
「お兄ちゃん! 二人っきりだね、いひひ」
学校が終わり。雲が漂う空の下、二人で帰っているとよもぎが不気味に笑った。
何する気なんだよ。こいつには今までいろんな事されてきたからな、正直怖い。
「何かする気か!」よもぎに向かって構える。
「何にもしないの!」
人差し指立てて微笑む。その言葉を聞きぎんは胸をなでおろした。よもぎはその指を顎に当てながら続ける。
「ーー気になったんだけどお兄ちゃん。部活とか入ってないの?」
「なんだよ急に」よもぎの方を向き一瞬目を見開いた。
「入ってないけど、それがどうかしたか?」
「なんで入ってないの? だって高校生と言ったら、友達と一緒に部活に励み、汗を流す。それで青春を感じる。これが王道なの!」
こいつは完全にアニメの見過ぎだな。そんなのが青春って思ってんのは…………言葉にならない叫びになりそう、だっ。
「そんな事ないだろ。帰宅部だって、青春感じれるんだぞ」
そっぽを向いて今にも口笛を吹きそうだ。
「例えばどんなの?」
「えーっと、帰り道に買い食いしたり、寄り道したり、とかかな」
「なんか普通なの」
パッと思いついたのがこれしかない。自分で言って悲しくなった。帰宅部は青春じゃないのは認めざるを得ないと言う事なのか、いや否。否である。
帰宅部=恋愛。時間があるから恋愛の時間に費やせる。やはり青春といえば恋。甘いひとときの夏これがあってこその青春だと、俺はここに断言したいと思う。
まぁ、俺には関係ない話だ。わかってる。皆まで言うな。悲しくなる。泣きたくなってきた。
ぎんは潤んだ瞳で叫んだ。
「普通の何が悪い。なめんなよ青春のバカヤロー」
「お兄ちゃんどうしたの? 悲しいの? おいで?」
よもぎは子犬においでと言ってるような表情と体勢だった。
やめてよ。そんな目で見ないで、優しくしないで、目から何かが出ちゃうから。でもこれだけは言わせてほしい。ありがとう。声には出せない。なぜならお前が調子に乗る姿が目に浮かぶからだ。
「別になんでもねーよ」目を激しく擦る。
「ならいいの……」急にポンと手を叩いた。
「ーーそうだいい事思いついたの」
「なんだよ」小首をかしげた。
「一緒に部活やるの!」よもぎが元気よく言った。
「絶対やだ。めんどくさいし」
やだよ。やりたくないよ。もう六月だぞ。今からやったら浮く気がする。もうグループ的なのできてるしな。
まぁ、グループできてなくても友達は作らないと思いますけどね。別に欲しくもないしね。
「やるの! 決定でーす」
「勝手に決めるな! 俺はやらないからな」
ぎんはビシッと断った。
「そっか……」俯いた後すぐにぎんの方を向いた。
「ならしょうがないの……お兄……ちゃん。いひっ」
よもぎはレイプ目で舌舐めずりしながら首を傾げていた。
何その目、全く生気を感じないんだけど、どうやるの? そんなのやろうと思ってできるもんなの? それで、その手に持ってるのは何かな? 包丁かな? 本物なのかな? 前にもあったんだけどこれ。前回より迫力がやばいんだけど……。
「お、落ち着け! わ、わかった。やろう! てか是非よもぎと部活がしたいな。明日から楽しみだなー」
その言葉を聞いて一瞬でいつものよもぎに戻った。
「よもぎとそんなにやりたのー? しょうがないなー、もう」
切り替えはっや。それよかその包丁どこから出てくるんだよ。マジシャンかよ。
「いやー嬉しいな!」あざとく言った。
「ーーそれで何部に入るんだ?」
「せっかくだから、新しい部活作っちゃうの」
「作っちゃうのかよ! ーーそんで何部作るんだ?」
「うーん……」少し目を閉じ開けた。
「なんか楽しくて、面白いのがいいの」
よもぎの発言についため息がもれた。
「なんだその漠然としたの。とは言っても、俺は趣味とか無いしなー。全然思いつかん」
「閃いたの! ーー楽しくて、面白い事をする。それ即ち遊ぶ事だから、遊ぶ部活を作る。名付けて遊部なのん!」
両手を腰にあて、えっへん! と今にもいいそうな顔をしている。
「いや、うまい事言ったみたいな顔してるけど、うまくねーから。ーーそれに受理されるわけないだろ」
ぎんは額を抑えた。また、ため息が出そうになった。
「うまかったもん。ーー受理はされるよ。よもぎちゃんは特別な存在なのだ」
よもぎはあざとく、かわいいポーズをとる。
でたー、意味もなくかわいさアピール。わかってるから、そんな事しなくても十分かわいいから、とか思っちゃうのはしょうがない、事実だから。もう認めるしかねーよ。こいつはかわいい。だが勘違いするなよ、あくまで外見の話だ。オッケー? イエス! イエス! イエス!
「お前また洗脳する気だろう」
「しないのー」
よもぎは目をそらした。怪しい行動にすぐさま指を差して問う。
「じゃあなんで今、目をそらした」
「なんとなくなの。大丈夫! なんとかなるの!」
「そらー、なるだろーな。一発だろうな。ーーそんで受理されたとして、活動は主に、何するんだよ」
ぎんは真面目な顔で聞いた。
「ひたすら、遊ぶ!」親指を立てた。
「いくらなんでも適当すぎんだろ! 流石に目標みたいなのはいるだろ」