帰り道②
「うーん……」少し上を向いた後、何か閃いたのかキラキラした表情で言った。
「わかった! 自分たちで、楽しおもしろいモノを作るの!」
「楽しおもしろいモノ」って、結構アバウトだよな。どんなの作るんだろう。気になるけど、きっと俺も手伝う事になるから難しいのはやめてほしいな。
「まぁ、いいんじゃねーの。ーーそんで何を作るんだよ」
「それはまだわからないの。だからそれを探す為に、遊びまくって、見つけるのん! これだってモノを」
「そんなんでいいのかよ。ただ遊ぶ部活になりそうだな」
「だって遊部なの。至高の遊びを一緒に見つけようよ、お兄ちゃん」
なんなんだよ至高の遊びって。アレしか出て来なかった自分を今すぐ殴りたい。でもほら高一とか思春期の塊だからね。欲望丸出しだからね。それに比べたら俺はまだまだお子ちゃまだぜ。
「おし、見つけようぜ! 無いと思うけどな」
「無いかもだし、有るかもだし、だからそれを探すのだ」
よもぎがあざとかわいいポーズを決めた。
はい、慣れた慣れた。流石に慣れた。
「そかそか。でもまだ受理されてないというか、出してもないからな」
「明日出して、明日受理されると思うの!」
なんなのあなた、予知とか出来る系の人なの? だったら占ってもらえる? あなたは馬鹿なのか。早く占って。お願い。
「はいはい」適当に答えた。
「お兄ちゃん! 適当ダメなのん!」
ぷーっとほっぺたを膨らました。
はぁ……お前には言われたくなかった。
「わかった! 適当は卒業したんで、卒業式やってもらえますか?」
ぎんは軽い冗談っぽく言った。
「はい! やるの!」
元気よく手を挙げた。表情はキラキラしていて、小学生かっ! ってツッコミたくなった。
「ごめん。嘘だから。やらなくていいから。お願いだから、そんな目で見ないで……」
ぎんは中腰になりながら、顔を手で隠した。
「嘘はだめなんだぞー!」人差し指ピンッと立てた。
そのキャラ誰なんだよ。わかんねーよ。ムズムズするよ。教えてくれよ。届け僕の思い。
「もうそろそろ公園着くぞ!」
「いいや、めんどくさいし!」地面を蹴った。
「お前から言ったのに、自由すぎるだろ。別にいいけどよ」
よーしっ。これで『モンゴリアン先生に恋しよう』読めるぞー!
「だって、モンゴリアン先生気になるんだもん」
お前もかよ! てかどんだけモンゴリアン先生すげーんだよ。みんな虜じゃねーか! そのうち世界飲み込むぞこれ。今のは盛ったわ。流石に盛った。
「あれ面白いよな。あのカンティーナが一途なんだよ。それでモンゴリアンと、こう、うまくいきそうでいかないみたいな」
「えっ、まだそこ読んでないの……」
よもぎはあからさまに不機嫌になった。
待てって、良かれと思って話したのに、そりゃあないぜ。酷すぎんだろ、この世に神なんていねーんだな。絶対いねーよ。
「ほら、さっきの嘘だからね。作り話だからね」
「嘘つき」冷たい声で言った。
「ーーお兄ちゃんは、もうすぐ死ぬ」ぎんを睨んだ。
「やめて、死の宣告やめてよ。あれ、大丈夫? 上に出てない。見て頭の上に数字出てない?」
ぎんは頭の上を見ようとしながら、そこを指でさす。
「今、五」よもぎが冷たい表情で吐き捨てた。
「うっそだろ? うそだよね? だよね? まさかねー、殺さないよね?」
慌てながらも、まさかなと、心のどこかでは思っていた。
「二」ピシャリと言った。
「おい待て、進んじゃってるって、二秒って、あれもう一秒になってる? ねぇ、なってるよね⁉︎」
冗談ではなさそうなよもぎの顔を見て恐慌した。
「ドーーーーンッ!」よもぎが大きな声で言った。
ぎんはしゃがみ込むと悲鳴をあげた。
「ぎゃあああああああああああああああ……」自分の手の平や身体を見た後立ち上がった。
「だよなー、知ってたけどね」
ぎんは額の汗を拭うと、ふぅ、と息を吐いた。
「はい、これあげるの!」ぎんに向かって箱を投げた。
ぎんはキャッチして「何これ?」と言った瞬間爆発した。
「うわああああああああ。ーーあれ? なんともないぞ?」
ぎんはひょうしぬけした。
「ドッキリ大成功!」
満面の笑みで『ドッキリ大成功!』と書いてある看板を見せつけてきた。
ドッキリとかのレベルじゃねーんだよ。もしお婆ちゃんとかだったら完全に昇天してるからね。どこぞの奴みたいに、拳を天高く突き上げてるからね。
「洒落になってねーぞ。マジで、流石に終わったと思ったわ」
もう怒る気力も湧かない。生気が抜けた。
「ネタバレのお返しなの。ネタバレは死刑に与いするの。お兄ちゃんだからサービスしてあげたの」
よもぎはにこっと笑った。
「そんな重い罪なのかよ。お兄ちゃんでよかったと、初めて思えたわ」
いや待てよ。そもそもこいつのお兄ちゃんにならなきゃ、こんな事になってないんだよ。完全に踊らされてるよ。
いつかギャフンと言わせてやるからな、待っとけよ。いや待たなくてもいいや。できるだけ待たなくていいや。お願い。帰って、自分の世界へ。
「よかったね。お兄ちゃん!」
本当楽しそうだな、えぇえぇ。何よりですよ。
「おう、それよか全然家に着かないんだが、よもぎの茶番のせいで」
「ひどいの! せっかく遊んであげてるのに」唇を噛んだ。
「頼んでませんけどー。てのは嘘だよ! 早く帰ろうぜ」
空気を支配する俺にかかれば、こんなのおちゃのこさいさいよ。同じ手を何度もくうかよ。学ぶ男だぞ、みんなは俺の事をマスターラーンと呼ぶ。
「なーんだ、嘘か。ーー帰るのん」
よもぎは機嫌が直ったのか、鼻歌交じりで白髪を揺らしながら歩いた。
今回は俺の勝ちのようだな。なんとなくよもぎという生き物がわかってきた気がする。攻略まではまだまだかかりそうだが、地道行くしかないか。ふぅーっ、先が思いやられるぜ。




