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ぼくは、バラバラになったヴォルトを、ヴォルトのラボラトリーへ運んだ。
誰も居ない静かな部屋の中で、そっとヴォルトを作業台の上に寝かせる。
見開かれた真っ黒な瞳は、改めてぼくらが造られたものなのだと、あからさまに見せつけているようだった。
「……ヴォルト」
小さく、擦れた言葉を出す。
ヴォルトは、ぴくりとも動かない。
酷く嫌な冷たいものが、ぼくの体の中心で大きく渦巻いていた。
冷凍庫のような冷たいラボラトリー内の空気が、さらにぼくの闇を煽る。
体中が冷たくなる。
お父様は、ヴォルトを見捨てた。
今まで、本当の子供のように、愛してくれていたのに。
仕事以外では、本当に、我が子のように……
あんなに……簡単に……
ぼくらが、人ではないからですか?
「人間に……なりたい……」
ぼくはヴォルトの寝ている作業台に手を着き、小さく呟く。
人になれば、人はぼくらを愛してくれますか。
人になれば、人はぼくらを助けてくれますか。
人間になりたい。
暖かな空気の中で
呼吸をして
笑い合って
涙を流して
助け合って
どうか
どうか
ぼくらを
助けてください。
「人間になりたい」
「人間になりたい!」
「人間になりたい!!」
ぼくが精一杯吐き出した言葉は、
虚しくラボラトリーの中を木霊した。




