60.再びグラウンドへ
俺は学校のジャージに着替え、タオルやスポーツドリンクを鞄に詰め込む。
今日から、柳の弟。優貴君のチームの見学に行く事になる。
「俺が行っても何も変わらないと思うけどな…」
そう呟き、俺は鞄を背負う。
リビングに行くと、同じくジャージ姿の妹がいる。
「なぁ…本当に葵も行くのか?」
「……悪い?」
本当に野球部に好きな子でもいるんだろうか。
お兄ちゃん複雑だよ…。
「…いや、葵が行きたいなら良いよ」
俺達は葵の中学へ電車で向かう。
校門の前に柳が立っていた。
「おはよ、柳。無理してこなくてもよかったのに」
「おはよー!ううん、お願いだけして、私いないってのもアレだし!」
柳は律儀な性格だな。なんて再認識した。
後ろにいる葵とも挨拶をし合ってる。
柳と合流後、顧問の先生に挨拶をする為に職員室へ向かう。
コンコン。
「失礼します」
と俺は職員室のドアをノックし、入室する。
夏休みの職員室はエアコンが効いており、事務作業をしている先生が数人と、野球部のユニフォームを着た男性がいた。
「おぉ、月城君かな?」
ガバッと立ち上がり、こちらに近づいてくる。
髪は短髪で、中肉中背のおじさん先生という感じだ。
「はい、初めまして月城相馬です」
「野球部顧問の岩本です」
と、お互いやりとりをしていると、後ろにいる葵と柳を見る。
「葵さんと、柳じゃないか。久しぶりだな」
と言っている。
柳はこの中学出身で、先生の事も知ってるみたいだ。
2人は見学です。という旨を伝達。
「お邪魔でしたか?」
葵は岩本先生に申し訳なさそうな感じで聞く。
「いやいや、そんな事ないよ。むしろ、お兄さんにうちの生徒の事教えてあげて」
と言われていた。
時間も時間なんで、歩きながら話しましょう。
と言われ俺達は移動しながら話す。
「本当に俺で良かったんでしょうか?」
「ん?というのは?」
「俺は指導経験とかないので、変な事を教えないか不安で…」
先生は「あぁ、それのことね」という感じで、少し笑いながら答える。
「実は、7月の中旬に中体連があってね。残念ながら、3年の代は地区予選で負けてしまったんだ」
3年生は既に引退したんだよね。と言う。
「だから、今は新チームになったばかりなんだ。今なら何を吸収してどう使うかは彼らのポテンシャル次第だよ」
つまり、
「君が何を教えても、どう使うかは彼ら次第だ。」
「仮に間違いを教えていたら、僕が止める。だから安心してみんなを見てあげてほしい」
「なるほど…わかりました。とりあえず…見てみます」
「うん、そうしてみて。というか、こちらこそ来てくれてありがとうだよ」
と言われるが、俺としては正直楽しみという気持ちがある為、感謝される程じゃない。と思う。
程なくして、第2グラウンド、
練習を始めている野球部の姿が見えてきた。
「そうだ、これうちのチームの帽子」
よかったら2人にも。と葵と柳に配っている。
葵は
「ブカブカだ…」
と言っており、
柳は
「どう?似合ってる?」
と聞いてくる。
「2人ともマネージャーみたいだね」
と褒めておいた。
俺たちを見つけた野球部のは、
『こんちゃーーす!』
『ちゃーーーす!』
とでかい声で挨拶をしてきた。
俺は帽子を取ってお辞儀する。
再び戻ってきたグラウンド。
バックネットに、マウンド、バットにボール。
俺はこの土を踏み、みんなを見つめる。
…さて、どんなチームだろうか。




