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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
3章 2学期編
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108/108

108.少しの疎外感

文化祭から時は経ち、何気ない日々が過ぎていく。


生徒会活動も今はなく、部活をやっていない俺の学校生活は今までとは大違い。


「平和だな」


「俺はそうでもないぞ」


食堂で芦屋と定食を食べながら、2人で話している。


「サッカーか?」


「いや、そうじゃなくてな」


芦屋はスマホをいじり出して写真を見せてきた。


「おお…!」


画面には幼稚園くらいの女の子がサッカーボールで遊んでいるところが表示されていた。


「お前…幼女に手を出したのか?」


「ちげーよ!従姉妹の子供がうちによく来るんだよ…それがもう大変でな」


芦屋は画面をスワイプしながら他の写真も見せてくれた。

芦屋の家でたくさん遊んであげているらしい。

そして、とても可愛い。


「めっちゃ可愛いじゃん」


「まぁそうなんだけど、部活終わって疲れている所に幼稚園児のパワーは結構キツいんだわ」


容易に想像できるな。芦屋の事だから全力で遊んであげているのだろう。

俺は最後のアジフライを口の中に入れた。


「土日だけか?」


「いや、たまに平日も来る。今日もいるんじゃないかな」


「幼稚園児にもモテるのかよ」


「いや、俺は誰からもモテてないだろ…」


芦屋は周りの女子からは結構好かれているんだぞ。恵まれた環境で気づいてない。

羨ましい限りだ。



俺たちは食べ終わり、席を立つ。

教室へ戻る間も、他愛もない話を続け自分の席に近づいた。


「食堂行ってたの?」


「おう!そうだぜ」


豊崎さんが芦屋に話しかけてる。

俺は自分の席に座り、スマホを取り出した。


水野さんと目が合ったが、俺はスマホを見ることにした。


スマホを眺めている俺に憂華が話しかけてきた。


「そういえばさ相馬くん」


「ん?どうした?」


俺は視線だけを憂華に向けた。


「生徒会選挙について佐藤先輩と話した?」


「いや、まだ何も話してないよ」


「そっか、てっきり相馬くんが推薦者になると思ってたけど」


生徒会長選挙は推薦者が演説をした後、候補者が演説をする流れとなる。

通常は同学年、濱田先輩あたりがやると考えていた。


「何も言われてないな」


「そっか…まだ先だしね」


「ねぇ、月城くんは来年も生徒会続けるの?」


俺と憂華の話を聞いていた水野さんが何気なく聞いてきた。


「ん?まぁそのつもりだよ」


「そっか、続けそうだもんね」


「そう見えるか?」


「見えるね」


実際の自分と人から見えるイメージに違いがあるような気はするが、俺はそれ以上何も言わなかった。


「天沢さん生徒会の月城くんってどんな感じなの?」


「え?どんな感じかぁ〜うーん」


急に話を振られた憂華は俺のことをなんで言おうか悩んでいた。


「真面目だけど、やる時はやる!って感じ?」


「そんな感じするね」


2人が俺を見ながら俺の話をしている。

気恥ずかしさみたいなのはあるが、特に訂正したい事もないため黙って聞いている。


芦屋と話を終えた豊崎も話に入ってきた。


「月城くんってできない事なさそうだよね…そつなくできる感じ」


「それは評価しすぎだ…できない事だらけだよ」


「…そう?」


「それよりもさっき芦屋と何話してたんだ?」


「えっとね…」


俺は自分のことを話すより、人のことを話す方が気が楽だ。

話題を切り替えて、その後も話を続けていた。



帰り道。

俺は珍しく水野さんと一緒に帰ることになった。

今日は吹奏楽部の活動はないらしい。


「ちょっとカフェ寄ろうよ」


「…いきなりだな」


「いいでしょ?」


「いいよ」


俺たちはカフェに入り、テーブル席に座った。

中は少しだけ薄暗い作りとなっていて、おしゃれさを兼ね備えつつ、入りやすい雰囲気を両立させていた。


「ブラックコーヒーアイスで」


「私も同じので」


店員さんが下がっていき、俺は水野さんに視線を向けた。


「ブラック飲めるのか?」


「飲めるよ。フラペチーノみたいなの飲んでほしかった?」


「女子といえば、という感じだからな」


水野さんはブラックが飲めるということと、甘ったるい飲み物を飲まないという2つが意外だった。


店員さんがブラックを2つ運んできて、俺は口をつけた。


「で、なんか話したいことあるのか?」


俺は一口飲んだ後、水野さんを見た。

なにか言いたいことがあるのはなんとなくわかった。


「ねぇ、文化祭終わってから他人みたいじゃない?私たち」


あまりにもストレートな言い方だった。


「そうか?いつも通りだろ」


「なんか、俺仕事やりきりました。って感じするよ?」


俺は考えてみる。

確かに芦屋や豊崎の件、水野さんの悩みはある程度片付いたと思ってる。

水野さんからあれから相談は無いしな。


「あれから芦屋はどうだ?玲奈さんの話しなくなって、豊崎さんも結構男子と話せるようになっただろ?」


「そうだけど」


水野さんは俺から視線を外し、窓の外を見た。


「私たちも友達でしょ?」


「そりゃもちろん」


水野さんは視線を俺に戻して、覚悟を決めたような顔をしていた。


「天沢さんは憂華って呼んでて、私たちは苗字なの、すごい引っかかるんですけど?」


「…はい?」


水野さんってそういうの気にする人なんだな。

ブラックの件もそうだけど、また驚かされた。


「まさか名前で呼んでほしい…ってことか?」


「いや…そうじゃなくて。なんていうか…」


水野さんは悩みながら言葉を紡いだ。


「疎外感?…そんな感じがする」


「…そんなことないんだけどな」


もしかしたら俺は無意識下で水野さんたちは違うと思っているのか、憂華たちは特別だと思っているのか…?

答えの出ないような疑問を思い浮かべていた。


「まぁ、そう思ってないならいいけど」


「そうだな…でも気をつけるよ。実際気を悪くさせてしまったわけだしな」


俺はコーヒーを飲み干して、水野さんと一緒に店を出る。


「また来ような」


「うん、いいよ」


俺は水野さんと並んで歩きながら、またこうして話す機会が増えればいいと思った。

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