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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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1.春、新しい学校。

春。


桜が咲いている4月の朝。


俺、月城相馬(つきしろ そうま)は見慣れない道を歩いていた。

駅から続く坂道を上りながら、手元のスマホに表示された地図を見る。


「こっちで合ってるな」


画面を閉じると周りには同じように学生が歩いている。少し先に大きな校門が見えてきた。


神奈川に引っ越してきて、まだ、それほど経ってない。

中学までは愛知で暮らしていたが、親の転勤で卒業と同時に神奈川に引っ越す事になった。


家も、街も、周りにいる人も。

全部変わった。


「高校か…」


校門の前で一度足を止める。

今日から高校1年生。そう考えても実感はない。


新しい制服を着ているくらいで、昨日までの自分と何か変わったわけではない。


そう思いながら校門をくぐる。


校内には新入生が大勢いた。

友達同士で話している生徒。

緊張した様子で周囲を見渡している生徒。


俺は1人だった。


愛知にいる友達とは、今でも連絡を取っている。


だから、そこまで寂しいとは思わない。

ただ、高校ではまた1からだ。


掲示板の前まで行き、クラス表を確認する。


「……1年A組。」


自分の名前を見つける。


月城相馬


確認してから校舎へ向かう。

階段を昇り廊下を歩く。


しばらくして、1年A組の教室を見つけた。

教室に入ると、すでに何人かの生徒が席についていた。


黒板の横に貼られた座席表を確認する。


「……窓際の後から3番目か」


指定された席へ向かう。

鞄を机の横に掛け、椅子に座る。


窓の外を見ると、校庭で上級生らしき生徒たちが何人か歩いていた。


その向こうには桜の木。

風が吹くと、花びらがひらひらと舞っている。


静かに眺めていると――


女子生徒が自分の席を探しながら近づいてきており、隣の席にやってきた。


そして、俺の隣に座り、鞄を机の横に掛ける。


少しして、女子生徒がこちらを見ており、目が合った。


「あ……」


どうするべきか一瞬迷ったが、俺から声をかけた。


「隣の席の子?」


女子生徒は小さく笑った。


「私、楠木夕(くすのき ゆう)」


「月城相馬です」


「月城くんね」


「ああ」


短いやり取り。


それ以上、何を話せばいいのか分からない。

俺が少し考えていると、楠木が先に口を開いた。


「じゃあ、よろしくね」


「ああ。よろしく」


楠木は前を向く。

俺もも前を向いた。


それから少しして――


「お、もうみんな来てるな」


教室の前の扉が開いた。


教師が一人入ってくる。


「はい、席についてー」


それまで話していた生徒たちが、一斉に自分の席へ戻っていく。


教室が静かになる。

教師が教壇に立つ。


「改めて。今日から1年A組の担任をする――」


ホームルームが始まった。


俺は姿勢を正し、前を見る。


隣には、さっき初めて名前を知った楠木夕。


俺の学校生活はここから始まる。

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