祭りの準備2
「うっす」
「お疲れー」
部室に入るとカルロスとニーナが先にいて、薬草茶を飲んでいた。薬草茶はほうじ茶に似ているお茶で、疲労回復とリラックス効果がある。
「カシワ、入ってきたばかりで悪りぃんだけど、おまえも勧誘活動手伝ってくれねぇか?そこにビラあるから、配ってきてほしいんだ。俺らも行くからさ。」
「ああ、別にかまわんよ。勧誘なら既に一人、今俺と一緒に暮らしているミワ姉に声かけといたから、後で部室くると思う。」
「おぉ入部二日目でもう一人引っ張ってくるとは優秀だねぇ。さすが私の弟子だけのことはあるわ。」
「ニーナ、俺がいつ弟子になった?でも、皆勧誘行っちゃったらミワ姉来たとき誰も部室にいないってのはまずくないか?」
「それもそうだな。じゃ、カシワお前勧誘行かなくていいから留守番頼むわ。そのうち他の奴らもくるだろうから、ミス研の説明に困ることもないだろうしな。」
「了解。それまで適当にくつろがせてもらうよ。只ミワ姉、俺もなんだけど満喫亭の手伝いもあるから、店忙しいときはこれないけどいいか?」
「別にかまわないんじゃない。皆、基本的に好きな時間にきてるし。店忙しかったら、一旦帰って、またきてくれてもいいわよ。」
「幸か不幸か、今ゴブリンと大ガラスのおかげで、冒険者連中がほとんど店に顔出さなくなって暇になってるから、平気。」
「じゃあ、そろそろ行くか。ニーナ、飲み終わったか?」
「まだよ。せっかちな男は嫌われるわよ。お茶ぐらいゆっくり飲ませてくださいな。」
「ちぇ、いいから早くしろって。お、誰か来たみたいだぞ。」
リアが部室の戸をあけて入ってきて、薬草茶をコップに入れる。
「おつかれー。皆早いね。さ、今日も頑張って勧誘するぞー」
よかった。ニーナに聞いてはいたが、すっかり元気を取り戻してくれたみたいだ。満面の笑顔でお茶に口をつけている。
「お疲れ、リア。カルロスとニーナにはもう言ったんだけど、今日俺と同じ店で働いているミワ姉っていう連れがくるんだ。ミワ姉がきたら、ミス研の活動内容とか説明お願いしてもいいかな?」
「え、連れ?もしかしてカシワの彼女?別にいいけど、私、説明下手だし、昨日のカシワみたいに変な誤解しちゃうかも。」
リアが不安そうにこちらを見つめてくる。
「いや別に彼女じゃないよ。っていうか残念ながら俺、今彼女いないし。」
「え、そうなの?あ、そうだよね。へへへ。うん、まかせて。いいよ。私説明上手だから、手取り足取り教えてあげちゃう。」
さっきと言ってることが180度真逆だぞ。もしかして、ヤキモチやいてくれてるのか?おお、いい傾向じゃないか。今年の夏は楽しめそうだぜ。見るとカルロスとニーナもニヤニヤしながらこちらを見ている。
「おまえら、勧誘行くんだろ。いいから早く行けって。ニーナ、そこで何をメモしてる?先生に見せなさい。」
「いつからあんたが私の先生になったのよ。さ、めでたくカップルも誕生したことだし、門出を祝して新入部員狩りに行ってきますか。」
くそ、ニーナめ。あのメモ、何書いたか知らんが、絶対なんか企んでるな。リアはリアで顔を真っ赤にしている。
「別に私、そんなんじゃないし。そりゃカシワともっと仲良くなりたいって思ってるけど、カップルじゃないし。」
「あれ、私はカップルっていう単語を発しただけで、リアとカシワがカップルだなんて一言もいってないわよ〜。どうしてリアちゃんはそう思ったのかな〜?」
「ニーナの意地悪。もう嫌い。いいから早く勧誘行ってよ。」
「はいはい。後はお二人でお幸せに。」
「もう、バカ。」
うるさい二人がいなくなって、リアと二人きりになるとお互い気まづくなる。ったく、この状況どうしろってんだよ。あ、そうだ。話題変更もかねて、リアに満腹亭でだすメニューでも相談してみるか。
「なぁリア、今朝の飛行機雲見た?魔法大学文化祭とエルドォワ祭りじゃん。それでうちの店でも祭りに出す新メニュー考えてるんだけどさ、なんかいい案ないかな?」
「え?あ、うーん、そうね。私だったらやっぱり甘くて、しかもカロリー低いものがあれば嬉しいかな。カシワの働いているお店って、いろんな人がくるんだよね。万人受けする物で甘くて美味しいもの。そうだ、シュークリームとかどうかな?」
「おお、いいね。シュークリームだったら、歩きながらでも食べれるし、祭り見物に来ている子供達にも喜んでもらえると思うよ。さすがだね。リアに相談してよかったよ。」
「えへへ。私もカシワの役に立てて嬉しい。ねぇ、カシワ。さっきの話なんだけどさ。」
「祭りのこと?」
「ううん。カップルのこと。私、まだ出会ったばかりだけど、カシワのこと好き。だから、その、カシワさえよかったら、本当にカップルになってくれたりしないかな〜なんて、思ったり、思わなかったり・・」
リア・・まだ会って二日目だけど、俺もリアのことすごい気になってる。いづれ元の世界に帰らなきゃいけない身だけど、それでもリアとずっと一緒にいたい。うん。俺もリアのこと多分好きになってるんだ。
「リア。俺は異世界から来た身だし、いづれ帰らなきゃいけない。それでも、俺もリアとずっと一緒にいたいって思ってる。だから、俺もリアさえよければ、カップルになりたい。俺もリアのこと好き、大好きだ。」
「ありがとう、カシワ。その、これから宜しくね。」
「うん、リア、宜しく。」