ミス研の午後
突然付き合うことになった急展開に心躍らせながら、リアと祭りの準備について話してると、リッチマンとランシアがミワ姉を連れてやってきた。
「おつかれー。入部希望者連れてきたぞ。カシワいるかー?」
どうやら、ミワ姉がこちらにくる道中で、リッチマンとランシアに既に会っていたようだ。
「お疲れ。いるよー」
声をかけ、パンフレットを準備する。リアはミア姉のために薬草茶を入れていた。
「へぇ。なかなかいい部室じゃない。広すぎず狭すぎず、周りも静かだし、落ち着くわ。」
「バッグはそこの椅子のところにでも置いといてよ。ようこそ、ミス研へ。といっても俺も昨日入部したばかりだけどな。」
あれ?ミワ姉のバッグの底のところ、泥がついてる。どこかで汚したのか?
「ミワ姉、どうしたんだそのバッグ?なんか汚れてるぞ。」
「ああ、これ?たいしたことじゃないんだけどね。さっきの槍の模擬実戦の講義のとき、隣でもアクア先生の水魔法の模擬実戦やっててさ。ウォーターボールの魔法で地面濡れちゃって、置いといたバッグが汚れちゃったのよ。」
「へぇ、災難。他には被害無かったの?」
薬草茶を持ってきたリアがミワ姉の前にコップを置くと、自分も俺の隣に座る。
「大丈夫。初めまして。ミワです。不肖のカシワがお世話になってます。宜しくね。」
「ちょっとまて。不肖のカシワってなんだ?リア、こんな不肖のミワ姉だけど、気にしないで、仲良くしてやってくれな。」
「ふふ。仲いいんですね。リアです。こちらこそ、宜しくお願いします。」
確かにミワ姉と仲は悪くないと思うが、今の会話だけ聞いて仲いいと思うか?ま、別にどうでもいいけどさ。リッチマンとランシアも茶を持ってきて、席についた。
「カシワからもう聞いてるかもしれないけど、うちの部は、カシワの元いた異世界のこととか、他にもパンフに書いてあるとおり、謎めいたこと、気になることがあれば、基本なんでも自由に調べてます。入部してくれるんならもちろん大歓迎だけど、なんか聞きたいこととかある?」
リアが早速説明を始める。リッチマンはパンフレットを眺め、ランシアは他の人がいるなら、説明は他人任せでいいやというかんじでお茶を飲んで、くつろいでいた。
「気になることかぁ。最近のゴブリンとか大ガラスとかの頻出とかも調べてるの?」
「そうね。被害にあった農家の人から、前に話聞いたことはあったけど、実際にゴブリン退治とかまではまだやってないわね。興味あるの?」
「そりゃ、飲食店関係者だからね。店で保存してある食料にまで被害がくるかもしれないって思うと、やっぱり不安だし。部に入ったら、そういうの調べてもいいのかな?」
「もちろん。好きに調べてくれて全然かまわないわよ。私たちも協力するし。議題としても面白そうだしね。」
「ありがと。じゃ、私も入部しよっかな。そこの用紙に必要事項かけばいいのよね?」
「お、入部してくれる?助かるよ。ありがとう。はい、用紙。ペンはこれ使って。」
それまでパンフに目を通していたリッチマンが、用紙と筆記用具をとってきてミワ姉に渡す。
「これで7人。なんか部活らしくなってきたわね。いいかんじじゃない。カルロスたちが帰ってくるまで、ちょっとゴブリンと大ガラスのこと調べてみよっか?モンスター図鑑持ってくるわね。」
ランシアが立ち上がり、本棚の下の方にある図鑑を持ってきた。市販のモンスター図鑑より、ずっと厚い。さすがミス研だけあって、書物はそこそこ揃ってる。足りない場合は大学内の図書館に行けばいいだろう。ゴブリンと大ガラスの頁をめくる。
ゴブリン:
頭は悪いが常に集団で行動し、通りをあるく人に襲いかかって、金品を奪う。3,4体程度なら学生レベルでも十分に撃退可能だが、すぐに仲間を呼ぶため注意が必要。また、近年では亜種が複数存在を確認されており、中には高い知力を有するもの、独特の特技を持つ者もいるらしい。
大ガラス:
農家の天敵。農作物を食い散らかすことで、大勢の農民から王都に苦情が来ている。知力もそこそこあり、稀にだが人になつくこともあるようだ。但し、微量だが毒性を持っている。
もし大ガラスのくちばしによって、傷をつけられた場合は、水洗いして消毒することを推奨する。
「うーん。モンスターそのものの情報は載ってるけど、何故頻出するようになったかってことまでは分からないわね。一昔前は魔王が誕生するとモンスターが発生するっていうのが定番だったけど、今は魔王も魔法大学の研究室で教授を勤めてる時代だもんね。とすると、他になんか理由あるかな・・」
「勇者も農作物の研究しながら、温泉旅館経営してるしな。やっぱり一番妥当なのは、最近森林伐採がすすんでるから、住処を追われたモンスター達が街までおりてきちゃってるってことじゃないか?要するに環境破壊問題の一環ってことかな。」
ランシアとリッチマンがそれぞれ自分の思うところを述べる。環境問題か・・確かにありうるかもな。ってことはゴブリン達もある意味被害者ってことになるが。
「ねぇ。魔王様なら、ゴブリンぐらい命令してよそにいくようにさせること、できるんじゃないかしら?」
リアは小悪魔族の習性なのか、魔王に対して様付けをする。それでも今は俺の恋人だ。リアのやることなら何でも可愛く思えてくる・・いや、今それどうでもいいな。俺も原因考えなきゃ。
「能力的には可能だろうけど。でも、やってくれないんじゃないかな。魔王も今、学会の準備で忙しそうだし、それに勇者魔王平和協定でも、よほど緊急性のあるとき以外、勇者や魔王の特化した能力はできる限り使わず、物事に対処するって決められてるし。」
ミワ姉も意見をだしてくる。確かに街の食料が少し食い荒らされてる程度じゃ、被害にあった農家や飲食店の人には大変だけど、魔王が能力を行使するほどの問題とはみなされない。
「じゃあさ。いっそ、俺らで街の周りのゴブリンと大ガラス退治しちゃわない?街の周りをうろついてるモンスターを退治するだけなら、そんなに危険でもないし、もし厄介なボスキャラとかいて、危ないようだったら、騎士団連中にでも頼ればいいだろうしさ。」
リッチマンの提案に皆もうなづく。俺自身はモンスターなぞどうでもよかったが、飲食店関係者として心配事がひとつ減るのであれば、ここは協力しよう。あ、そうだ。ミス研の文化祭の出し物も相談しなきゃ。
「すいません。もうひとついいかな?来週の文化祭なんだけど、うちって何やるの?」
「実はまだ決めてないんだ。もう一週間きってるよな。やばすぎる・・カルロス達が帰ってきたら、速攻で相談しようか。」
こうして、ミス研の午後はすぎていく・・




