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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第67話 忠誠の誓い


 クリムゾンドラゴンを討伐した10日後。街の鍛冶屋に頼んでいたアルテリアの防具が完成したとの連絡を受けたので、騎士団へ足を運んだ。


 騎士団長の部屋へ行くと、ちょうどアルテリアが届いた防具を身に着けているところであった。


「こいつが俺の防具……」


 全身を覆うタイプの鎧ではなく、身体の要所のみを守る防具はアルテリアの希望により以前と同じだが、クリムゾンドラゴンの深紅の鱗を使ってできた真新しい鎧は赤く光り輝いている。こうして見ると、これまでアルテリアが使っていた防具がいかに拙く脆い物であったがよくわかる。


 ……やはりこういった武器や防具の技術は魔族よりも人族の方が秀でているな。優れた魔族の力や魔法に対抗するために人族が長い年月をかけて作り上げてきたのだろう。


「ほお~これが新しい防具か。実に見事なものだな! ……うむ、おそらく俺の防具よりも高価だろう」


「全身にクリムゾンドラゴンの鱗を使っておりますからね。いくら団長の防具よりも優れているからといって、部下の防具を羨ましがらないでください」


「べ、別に羨ましがってなどいないぞ! 俺も籠手の部分だけは新調したしな!」


 団長のルーカスと副団長がアルテリアの鎧を見てそんなことを言う。あれだけ大きなドラゴンだったこともあり、素材の一部は騎士団の者にも与えられたようだ。


 クリムゾンドラゴンを倒し、騎士団へ入ったアルテリアはすでに騎士団にある程度馴染んでいるらしい。


「……この剣もすげえ斬れ味だぜ。もちろん例の剣ほどじゃねえけどな」


「素材にクリムゾンドラゴンの牙を使用しておりますからね。ドラゴンスレイヤーの名に恥じぬ剣だと思いますよ」


 すでに新入団員であるアルテリアがクリムゾンドラゴンを倒したということは街に広まっている。ドラゴンを単独で討伐した者はそういった称号を得られると言っていた。まあ、そのことを広めたのはここにいる副団長なのだが。


 こうすれば騎士団の威光がより広まるらしい。相変わらず有能である。


「……ふん、ゼノン様のはからいでそこまでしてもらっているのですから、せいぜいゼノン様の役に立ちなさい」


「おう、言われるまでもねえぜ!」


 ミラとの仲は相変わらずだが、ミラもクリムゾンドラゴンとの戦いを見て、ある程度はこの者の力を認めているらしい。


「ゼノン様、俺みたいなやつが騎士になれたのはゼノン様のおかげだ。本当にありがとう、感謝している!」


 アルテリアが我の前に出てきて片膝をつく。


「すべては自身の力だぞ。アルテリアが機会を逃さずに掴み取っただけのことだ」


 我の誘いに乗ったのはこの者だし、クリムゾンドラゴンを倒したのもアルテリア自身の力だ。


「……ゼノン様、しばらくそのままで頼む」


「む?」


 アルテリアは片膝をついたまま新しい剣を前に出し、両手で柄を持ちながら剣を逆さにして深く頭を下げた。


「我が剣を貴公の矛に、我が命を貴公の盾として捧げよう。いかなる敵が現れようとも、我が命尽き、この身朽ち果てるまで貴公に仇なす一切の災厄を断つ刃となることを、我が御名に懸けてここに誓う!」


「……ふむ、その誓い、確かに受け取った」


 よくわからぬが、突然謎の口上を述べるアルテリア。


 少なくとも我に忠誠を誓っているようなので、ひとまずその誓いを受け取っておく。我が魔族と通じていることについてはすでに話しているが、それも含めて飲みこむということだろう。


「感謝します! ………………や、やっぱし慣れねえことはするもんじゃねえな! ちょっくらこいつで試し斬りをしてくるぜ!」


「うむ。だが、体調は大丈夫か? なにやら少し顔が赤いぞ?」


「な、なんでもねえぜ! それじゃあ、失礼します!」


 そう言いながら、アルテリアは焦りながら走って騎士団長の部屋を出ていく。


「一体何だというのだ……?」


「ふふっ、騎士の『忠誠の誓い』ですか。最近では騎士でも知らない者が多いのですが、随分と彼女は古風なのですね」


 どうやら副団長は今のアルテリアの誓いとやらがわかるらしい。


「騎士が己のすべてを捧げるに値した()()の主に誓う言葉、お伽話とかじゃよく出てくるんだが、俺も実際にやっているやつを見たのは初めてだ。そういや女性の騎士が男性の主に使った場合は……」


「おっと団長、それ以上は無粋ですよ。きっと我々がここにいるのを完全に失念していたのでしょうね。なんにせよ、今のはゼノン様に絶対の忠誠を従うという意味ですのでご安心ください」


「ふむ、それならばよい」


 なるほど、魔族にも相手に忠誠を誓う際に述べる言葉はあるが、そのようなものか。


 勇者の子孫から忠誠を誓われるとはなんとも複雑な気分であるな。


「……やはりあの者は危いですね。命の危険のある任務を与えてすり潰してやりましょう」


「なぜそうなるのだ……」


 我に忠誠を誓ったアルテリアが出ていった部屋の出口を鋭い目で睨むミラ。


 まったく、もう少し協力できればよいのだがな。


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