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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第55話 空いている屋敷


「ふむ、まあいいだろう」


「えっ!? 本当によろしいのでしょうか……?」


 我の言葉に使者の者が思わず聞き返してくる。


「そちらにだいぶ都合はいいが、好きにしろと言ったのはこちらであるからな。この言い分ならば我が領地に不都合なことはない。我が領地の者にはアデレア国ではなく賊が攻めてきたため、それを撃退したと伝えておけばいいだろう」


 アデレア国との国境近くの村や街の者にはアデレア国が攻めてくると伝えていたが、それをアデレア国ではなく賊が攻めてきたと伝え直せばいいだろう。実際にアデレア国の兵と戦ったのは我ら3人だけなので、カルヴァドス領についてはどうとでもなる。むろんそちらの話が嘘だとアデレア国の国民に知られても、こちらは知ったことではないがな。


 本来であれば敵国が理不尽な理由で攻め込んできて、そんな都合の良い話にしろなどと言えば即座に一蹴されるであろうが、今の我は気分がいい。こちらは何の被害もなく、聖剣やアルテリアが手に入り、アデレア国に協力させることができたのだ。


 我らの強さを見て敵対しない方がよいと考えたのか、我らを利用しようと考えているのかはわからぬが、協定を結ぶことにはこちらとしても意味がある。


「か、寛大なお言葉をありがとうございます!」


「感謝いたします!」


 使者たちがホッと胸を撫でおろす。下手をすればこの場で使者の者は殺されると思っていたのかもしれない。


 むしろ向こうから攻めてきてくれて礼を言いたいくらいである。別に我は他者からの体裁などは一切気にしないので、好きにさせておこう。アデレア国としては我らの力を利用しようと考えているのかもしれぬが、せいぜい我の役に立ってもらうとしよう。




 アデレア国の使者との話を終え、使者たちは国へと帰っていった。そのままの足でミラとセレネを連れてアルテリアたちがいる屋敷へとやってきた。


「ゼノン様、ご指示の通り屋敷へとご案内しました」


 屋敷の前には従者のクレイヴがいた。我の指示通り、空いている屋敷へアルテリアたちを案内し、水や食事などを与えたようだ。孤児院の子供も連れてきたようで、すでに屋敷の庭で遊んでいる。


「ゼ、ゼノン様。この度は私たちをカルヴァドス領までお招きいただき、誠にありがとうございます」


「うむ。マーナといったな。なにか他に必要な物があれば、あとでこのクレイヴに伝えるといい」


「は、はい!」


 以前孤児院へ行った時にいたマーナという修道女がしどろもどろに答える。この者には貴族であることは伝えたが、領主であることは伝えていなかったからな。それにいきなり隣国に呼び出されて状況がつかめていないといった感じだろう。


「少しアルテリアと話をさせてもらうぞ。もちろん危害を加える気はない。そちらが希望すれば皆をアデレア国へ返してもよいので、あとでアルテリアや子供たちと話し合うといい」


「しょ、承知しました!」


 屋敷の一室で待つと、アルテリアがやってきた。以前会った時と相違ないようだ。少し込み入った話もあるので、部屋の少し離れた場所にクレイヴを立たせ、中の話を聞かせないようにする。


「……本当にあんたは領主だったんだな?」


「うむ、以前に言った通りだ。本来であればアルテリアの意向を聞きたかったところだが、半ば強制となってしまったことについてはすまなかったな。しばらくここで過ごし、アデレア国へ戻りたいというのならばそちらへ送ってもいい」


 アデレア国へ送った書状にはアルテリアたちが希望するならと記載したが、おそらくあの状況では半ば強制のようにここまで連れてこられたに違いない。


「いやそれはどうでもいいんだが、いったいどういうことなんだ? なんで魔王の生まれ変わりと言われていたあんたがアデレア国と戦って、しかも俺たちがこの国まで呼ばれているんだよ?」


「……やはりたいした説明もされていなかったようだな」


 アルテリアから話を聞くと、なぜカルヴァドス領に連れてこられたかもわかっていないようだ。まあ、向こうから一方的に攻めてきておいて、たった3人にあっさり負けたとは言えぬのかもしれぬ。


 アルテリアには先のアデレア国との戦いのことについてを改めて説明した。


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