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後編

続きです。

・クリスティアン・アシュタント殿下とレティシア・ランメリー公爵令嬢との婚約はクリスティアン・アシュタント殿下の心変わりにより破棄とする。


・クリスティアン・アシュタント殿下は、婚約破棄による違約金と慰謝料・公衆面前での婚約破棄の言い渡しによる損害賠償をレティシア・ランメリー公爵令嬢に支払う。


・リリー・プラトン伯爵令嬢は婚約破棄の原因及び公衆面前での婚約破棄宣言の損害賠償をレティシア・ランメリー公爵令嬢に支払う。


・トーマス・レイトン子息・アベル・コンスタント子息・ジェイド・ラートリー子息も公衆面前での婚約破棄宣言の損害賠償を支払う。


・レティシア・ランメリー公爵令嬢は、リリー・プラトン伯爵令嬢に暴力行為を行ったとして、リリー・プラトン伯爵令嬢に損害賠償を支払う。


・ただし、冤罪だった場合は、リリー・プラトン伯爵令嬢がレティシア・ランメリー公爵令嬢に支払う。


・冤罪行為を補助したとして、クリスティアン・アシュタント殿下・・トーマス・レイトン子息・アベル・コンスタント子息・ジェイド・ラートリー子息も損害賠償を支払う。


・冤罪でなかった場合は、レティシア・ランメリー公爵令嬢が全て支払う。


・レティシア・ランメリー公爵令嬢は国外・公爵家追放する。


・これより平民となり、二度とアシュタント王国に入ってはならない。


・それはレティシア・ランメリー公爵令嬢に関係する全てのものとする。


・クリスティアン・アシュタント殿下とリリー・プラトン伯爵令嬢は婚姻し、未来永劫王家としての責務を果たすこと。


・リリー・プラトン伯爵令嬢はドレスを汚された代償として、これ以降存分にデザイン・作成し祭典・式典関係なくこれを着用できる。


それに際し、誰も反対してはいけない。


以上、魔法誓約書として履行するものとする。


魔法誓約書とは、署名し魔力を込めることで契約とし、いかなる事があっても誓約したことを破ることはできない。


「何だこれは!」


「魔法誓約書ですわ、殿下。何か問題でも?」


「僕の心変わりとはどういう事だ?」


「そのままですわ。」


「婚約破棄はお前の悪事が原因だろう!」


「殿下にお前と呼ばれる覚えはございません。

では、リリー様をお慕いしていないと?」


「想っているに決まっている!」


「ではやはりお心変わりですわね。その魔法契約書の内容は殿下達にとって有利ではございませんこと?リリー様の言っていることが真実なら、ですが。」


「真実に間違いない!」


「貴女と違ってリリーは卑怯な真似はしませんからね!」


「その通りだ。すぐに署名してやる!」


そう言って彼らはサインし、誓約書に魔力を込めた。



「待って下さい!そこまでしなくても…私は謝って頂ければいいのです!」


「よくありません。調査しなければ私は冤罪を認める事になります。貴女は自分に身に覚えの無いことを公衆面前で責められて、やってもいない事を認めて謝罪出来るのですか?なにか誓約書に不都合でも?」


「それは…ありません、けど…でも…」


「リリーもサインしよう。皆信じているから。」


そう殿下に言われてリリー様もしぶしぶサインし、魔力を込めた。

その時のリリー様は蒼白になっていた。

誓約書を陛下に渡し、確認してもらう。

陛下のお顔の色は悪かった。


「さて、皆署名も終わったし調査に移ろう。調査隊を編成して行うからしばらく時間がかかるが仕方あるまい。」


殿下が決まったかのように言う。


「何を言っているのです?いますぐこの場で調査しますわよ?」


「は?出来るわけないだろう。」


「出来ますわ。この学園の魔道具、『真実の鏡』を使えば!」


「ああ、なるほど。」


「名案ですね。」


取り巻き達が頷く。

陛下の方をみれば、「許可しよう」と言って下さった。


とたんに蒼くなるリリー様。


「ちょ、ちょっと待って下さい!魔道具なんて使わなくても聞き込みとかちゃんと調査しましょう?ちゃんと、書類で、ね?」


「聞き込みですとあること無いこと言われた場合の真実が証明できません。書類ですと改竄される恐れもあります。一番早く正確に証明するには『真実の鏡』が一番ですわ。」


「でっでもっ!これ以上お慕いしている方の印象を悪くする必要はないと思いますっ!私はレティシア様が心配なのですっ!」


「リリー…なんと優しい…」


と感動している殿下達をよそに、私は思い切り眉間を寄せて「はあ?」と返してしまった。


「ですから、お好きなのはわかっています!」


「誰が?」


「レティシア様が!」


「誰を?」


「クリスティアン殿下をっ!」


「何ですって?」


「お好きなのでしょう?!」


「…なんで?」


「え…」


「私、お慕いしているとか言ったことあるかしら…」


「ええ…?」


「殿下に惚れているから仲のいいリリーに嫉妬して嫌がらせをしたのだろう!」


「ああ、そういう事でしたか。不思議だったのですよね。なぜ私がいちいちそんなくだらない事をしなければならないのか。」


「くだらない…?ではレティシア様はクリス様に愛はないとおっしゃるのですか!」


「ないですね。」


バッサリと言いきった私に殿下達が固まった。


「そもそも政略結婚ですわよ?はじめから愛なんて存在しませんわ。婚約期間中に歩み寄って愛を育む方もございますけど、私と殿下が婚約したのは学園に入る直前ですよ?入ってすぐ婚約者を放って違う女性と仲良くする男性を好きになるはずないじゃないですか。」


「だが…!お前が俺に惚れていて!お前の強い希望で、家の力を使って無理矢理婚約したのだろう…!」


復活した殿下が言います。


「まさか。むしろ私はお断りしたかったのに両親と陛下で決めただけですわ。」


「殿下が、お好きではないのですか?」


リリー様が愕然としたように呟きました。


「好きとか嫌いとか以前に、どうでもいいのです。いつどこで誰と何をしていようが興味も関心も引きません。なので、私がリリー様に嫌がらせをする意味がないのですよ。」


何やらショックを受けている面々を呆れたように見て、ため息をつく。

学園長に、使用許可を求めると同意して頂けた。

舞台の上に『真実の鏡』を設置する。


学園にある『真実の鏡』は大きく、会場の端にいてもよく見える。

『真実の鏡』は、知りたいことを言えば場所・時間を問わず映し出してくれる。

あらゆる角度で。


「それでは始めましょう。」


「僕が鏡に問おう。後悔するなよ!」


殿下が鏡の前に進み、大声で問う。


「鏡よ!リリーがレティシアに押されて転んだ所を映せ!」


…何もおこらない。

鏡は何も映さない。


「何故だ?」


「ありもしないところは映しませんわ。鏡よ!リリー様が私の近くで転んだ所を映して下さいな。」


鏡が光り、何がが出てきた。


学園の廊下を私が歩いている。

斜め後ろからの映像だ。

後からリリー様が走ってくる。

「あっ!」

と言って、私の横辺りで転んだ。


「ほら!足を引っかけて転ばせたんです!」


いや、押されて転んだっていってなかった?


「じゃあ前から。」


「え」


今度は正面から映る。


歩く私。

勝手に転ぶリリー様。


「・・・」

「じゃあ、リリーが池に落ちたところは?!」


鏡が池の横を歩いている私を映す。

またも後から来たリリー様が私にぶつかり、横に吹っ飛ぶ。

ぶつかったと言っても肩に少し当たった程度なので、私は驚いただけ。

鏡の中の私がビックリしている。


他にも、階段やら教科書やらの嫌がらせも全部リリー様の自作自演だった。

殿下達は顔色をなくしている。


「これでハッキリわかりましたわね。皆様、誓約書の通りにお願い致します。私も用意があるのでこれで失礼致しますわ。」


そう言って綺麗にカーテシーをして会場を去る。

やることは沢山あるのだ。


屋敷にいた使用人達にあったことを説明する。

使用人達も、希望者は連れていく事を伝える。

急いで公爵邸に戻り、引っ越しの準備をする。

私の経営する店にも手紙を書いて指示を出す。

ドレスやアクセサリー、その他諸々の調度品。

どれも自分で稼いで買ったものだから当然持っていく。

自前の馬車に使用人総出で詰め込むと、馬車だけで凄い数になった。

私に付いてくる使用人も結構な数だった。


夜逃げみたいになってしまったが、馬車を出す。

目指すは隣国にある私の屋敷。

私の両親は隣国に私の屋敷があることを知らない。


私が稼いだお金を自分達のお金だと勘違いして湯水の如く使うのに夢中だから。

両親がパーティーから帰ってきてなくてよかった。

あのパーティーは2日かけて行われ、もちろん家に帰ってもいいのだが王宮に泊まることも出来る。

王宮に泊まる機会などないので、ほとんどの人が王宮に泊まるのだ。

もちろん両親も王宮に泊まる事になっている。

ありがとう卒業パーティー。


そうして私は無事に脱出することができた。

翌日、だいぶんと王都がパニックになったらしい。


まず、アシュタント王国にある全ての私の店の閉店手続きを行う。

店に閉店のお知らせをして、納品出来るものは順次納品、出来ないものはその旨を手紙に書いてお詫びの品とともに送る。


私の店とは、貴族用と平民用が別れてはいるものの流行最先端のアパレルショップ。

普段着からドレス・小物・靴に至るまで。

王妃様にもご愛用頂いている。

私はそこのオーナー兼デザイナー。

これでも売れっ子ですのよ?


いままでは王都にある店が本店だったけど、隣国にまた本店作ろう。

工場も隣国だし、いくつか支店もある。

私は平民のデザイナーとして生きていこう。


その後、店が閉店して職を失った人達が王宮に押し掛けたり、私の店から買えなくなったご婦人達が不満を爆発させたり、税収が減った国が王族の生活費を削ったりしたらしい。


お知らせに『殿下達による冤罪を証明するための誓約書に従った結果』と記したので、全て王宮にいったようだ。


挽回するためにと殿下とリリー様の婚約式を盛大なものにして、新しいファッションリーダーにときたいされたリリー様の装いは、あの日私が阻止したキラービーだった。

その衝撃は凄まじく、王妃様と何人かのご婦人が倒れた。

からの、発狂だったと聞いた。


殿下は廃嫡されたものの、王族としてリリー様と外交を行っているらしい。

誓約書による、彼女のあのセンスのドレスと共に。

殿下とリリー様は微妙な仲だそうだ。

というより、リリー様に不信感しかないそうで。


私の両親は、王宮から帰ってきて愕然としたらしい。

なにせ屋敷の中は何もなく、使用人もいない。

父の執務室にあった私の手紙を見て激怒した。

だが私の居場所はわからない。

今までの生活を変えられるはずもなく、派手な生活をしていたが、領地の収入だけでやっていけるはずもなく、ようやく私の収入があった事を知ったそうだ。


今では生活に困窮しているらしい。

誓約書のせいで私の店のものがアシュタント王国に入らないので、王国のパーティーに出席した貴族・王国の貴族を招いたパーティーを行った貴族の方達から王国のご婦人達が羨ましそうに見てくる、顔色の優れない方が多い等聞いた。

当然、殿下やリリー様は評判も悪くパーティーでは思わず眉をひそめてしまう装いをしているらしい。

前回のパーティーでは殿下の目が死んでいて、リリー様はネオンイエローだったそうだ。

暗い所でも安心ですね。

まあ、頑張れ。


誤字報告ありがとうございました。

助かります!

訂正しました。

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