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捕まえる時間(後編)

久しぶりに更新です。お願いします。

ク「久しぶりすぎなの」

すいません・・・・。

確かにクレムちゃんが示した場所で何かがゴソゴソと動いている。ちょうど茂みになっているので、何がいるのかは分からない。もしも、これがあの蛇ならば何が起こるか分からない。あんな色なら毒とかあるかもだし。


「正午・・・・」


「あぁ、わかってる。クレムちゃんは危ないから後ろに下がっててね」


念のためクレムちゃんを安全な場所に退避させ、俺は茂みの中を掻き分けた。

するとそこには


「い、いた・・・・」


あの張り紙に乗っていた写真と同じ色をした蛇がそこにいた。こんな普通の公園には似つかわしくない色の体がニョロニョロと動いている。蛇が嫌いというわけではないのだが、この色は生で見ると何というか近寄りがたい感じがする。

しかし、この蛇を捕まえれば1000万円という大金が手に入るのだ。そんなこと言ってる場合じゃない。


「よーし、大人しくしてろよ・・・・」


俺はゆっくりと蛇の体の後ろから手を伸ばす。徐々に近づいていき後もう少しで捕まえられそうになったとき


「シャァッーーー!!」


「うおっ!?」


俺の気配に気づいたのか蛇はこちらを威嚇するように大きく口を開け飛びかかってきた。こいつ、意外と凶暴な性格してやがる。あとちょっとで噛まれるところだったぞ。

完全に警戒モードになった蛇は、こちらを見つめたまま動かなくなった。

マズイな・・・・このままじゃ下手に近づくこともできない。かといってこのまま放置してたら逃げられてしまうかもしれない。


「ぐぬぬぬぬぬ・・・・」


蛇と見つめ合う形でそのままどうしようかと考える。何とかしてこいつの動きを封じられれば・・・・


「あっ! そうか」


俺はとてもいいアイデアを思いついた。っていうかなんで最初からこれをしなかったんだろうか俺は。


「クレムちゃん、悪いけどちょっとの間だけ時間を止めてくれないか」


「止めればいいのね。了解なの」


クレムちゃんが呪文を唱え、俺の頭に頭痛が走る。すると、あたりで動いていたものが全てピタッと止まり先程まで賑やかだった公園が急に静かになる。


「よし。これで安心して捕まえられるな」


先程まで威嚇していた蛇も、その体勢のまま全く動かなくなっている。


「今のうちに・・・・」


俺は蛇の首根っこのあたりを掴むとそのままヒョイッと持ち上げた。うわぁ・・・・何だかプニプニしていて思っていたよりもいい手触りだった。もっとこう、ザラザラしてたりヌルヌルしてたりするものかと思っていたけどそうでもないんだな。


「クレムちゃん、捕まえた! 蛇、捕まえたよ!!」


「おお!! 本当なの!」


クレムちゃんも間近で蛇を見て目をキラキラさせていた。触ってみたいというので少し触らせてみると


「見た目よりもフニフニしてて何だか可愛いの!」


とはしゃいでいた。うーん・・・・確かにフニフニはしてるけど、可愛いかな? 


「それで正午、この蛇をどうするの?」


「とりあえず持ってきたこの袋に入れて、張り紙が貼ってあった場所まで行こう。それで、連絡すればこの蛇の飼い主が迎えに来てくれるはずだ」


「この子、ペットなの?」


「そうだよ。それで見つけてくれたらお礼に1000万円差し上げますって書いてあったんだ」


「ほへぇ~」






という訳で、俺達はその張り紙が貼ってある電柱のある場所まで来た。蛇が暴れだすのが怖かったのでこの場所に来るまではクレムちゃんには時間を止めておいてもらった。


「じゃあ、クレムちゃんもう時間の流れを元に戻してもらっていいよ」


「了解なの!」


お馴染みの動作を行い、時間は再び動き出した。その瞬間、袋の中の蛇は暴れだしひたすら外に出ようともがいていた。


「何だか可哀想なの・・・・」


「しょうがないだろ、こうでもしないとこっちが噛み付かれるんだから」


暴れる蛇入りの袋を片手にもち俺は張り紙に書いてある連絡先に電話をかけた。

このままいけば本当に1000万円手に入るかも!! そう思うと自然に顔がニヤけてしまう。

数秒コール音が流れると電話がつながり、年配の人っぽい男性の声が聞こえてきた。


「はい、もしもし」


俺は出来るだけ落ち着いた声を出すように気持ちを一旦落ち着けた。


「あ、すいません。あの、張り紙に乗っていたペットの蛇の件で電話させていただいたんですが」


「張り紙? もしかしてあの緑色の蛇のことですかね?」


「はい、そうです。実は先程その蛇を捕まえたんですが・・・・」


そう言うと相手の男性は困ったような声を出した。


「あぁ、そうですか・・・・それは大変ありがたいのですが、その蛇の捜索依頼の期限はもう過ぎてしまっていまして・・・・」


「・・・・・・はい?」


そ、捜査以来の期限? なんだそりゃ。


「あの張り紙まだ残っていたんですね。てっきり全部回収したと思っていたんですが。右下の方に書いてありませんか? 捜査以来の期限について」


そう言われて俺はもう一度よく見てみると、確かに張り紙の右下の辺りに小さく‘○月○日まで’と書かれていた。今日から一週間前に期限は切れていたようだ。っていうかこんなに小さく書かれてたら分かんねぇよ!!


「いやでも、一応捕まえたんですよ! この蛇あなたのペットなんでしょう?」


「いやその・・・・この蛇は奥様のペットでして、この期間内に見つからなければ他のペットを飼うからいいと言っておりまして」


何だその無責任な飼い主は!! 探してって言っといて見つからなければもういいとかどんな考え方してるんだ!!


「そんな・・・・ご自分で飼われたんですよね? それなら最後まで面倒見るのが筋ってもんじゃないんですか!!」


「そう言われましても・・・・奥様からの言いつけですので。申し訳ありません」


「申し訳ありませんって・・・・ちょっ・・・・」


俺はどうしてもその飼い主に一言言いたくて変わってもらおうと思ったが、それよりも先に向こうが電話を切ってしまった。


「もしもし? もしもーし!!」


俺の怒りも虚しく携帯電話からはツー、ツーと機械音が聞こえてくるだけだった。まさかの展開に呆然となる。せっかく頑張って見つけたのに全てが水の泡となってしまった。1000万円の大金も儚い夢に終わってしまった。


「マジかよ・・・・」


思わずがっくりとうなだれてしまう。何だか疲れが一気に出てきた。

片手に持っているビニール袋の中で、蛇は今だに暴れている。必死に外に出ようとしているこいつを見ていると先程までは思っていなかったが、すごく可哀想になってきた。


「正午? どうしたの?」


クレムちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。


「いや、なんでもないよ。大丈夫、大丈夫・・・・。ねぇ、クレムちゃんこの蛇ねもういらないんだって。新しいの飼うからもういいんだって」


「そうなの? もうこの子ペットじゃないの?」


「うん。ねぇクレムちゃんはこの蛇どうしたい?」


俺はこの蛇をこれからどうするか、その全てをクレムちゃんに任せることにした。俺が決めるよりクレムちゃんに決めてもらったほうがいい気がなんとなくしていた。


「私が決めてもいいの?」


「うん、クレムちゃんが決めて」


ちらりと俺が持っている蛇入りの袋を見てクレムちゃんは考えるように腕を組みうーんと唸った。

俺はクレムちゃんがこいつをどうするのか結論が出るまで見守っていた。

少しして


「じゃあね・・・・川原に行こう!」


「川原に?」


クレムちゃんが出した結論はどうやら川原に行くことだったらしい。にしても何で川原?


「さぁ行こう正午!」


「え、ちょ、ちょっと!?」


クレムちゃんに手を引っ張られながら俺は川原に向かうことにした。




クレムちゃんに手を引かれたまま俺達は川原に着いた。ここに来てどうしようってんだ?


「じゃあ正午、その袋開けてなの」


「え? ここで?」


「うん。蛇さんをここに逃がしてあげるの」


どうやらクレムちゃんはこの川原に蛇を逃がしてあげようとしているらしい。確かにここには背の高い草の生えた草むらのような場所もあるし、虫やら小さな生き物やらがたくさんいるので餌にも困らないだろう。


「逃がしちゃっていいの?」


「うん。だってこの子もせっかく自由になれるチャンスができたんだもの。だから、この子に残っているこれからの時間をいい場所で過ごしてほしいなと思ったの」


・・・・なるほど。自由になれるチャンスか。確かにあんなよく分からない飼い主のところに戻るよりも、この広々とした場所で自由に生きる方がコイツにとっても幸せなのかもしれないな。


「もしかしたらこいつは、元の場所に戻りたくなくてあんなに暴れてたのかもな」


俺は袋を地面に置き、縛っていた袋の入口をほどいた。

その瞬間、蛇は思い切り外に飛び出すように袋から出てきた。


「しっかり生きるのよ。あなたの生きる今この時間を大切にね。なの!!」


蛇は独特のクネクネした動きをしながら素早く草むらの中に逃げていった。


「はぁ~あ・・・・1000万円・・・・」


思わずため息が出る。やっぱりそんな簡単にいい思いなんて出来るわけがないということだな。


「ねぇ、正午」


「ん、なに?」


「正午はあの子の大切な時間を取り返してあげたなの。もしこのまま、またその飼い主のところに戻ればあの子はずっと囚われたままの時間を過ごすことになってたの。この世界の生き物たちには皆、平等に時間が流れていく。でも、その時間がどう過ぎていくかは皆、バラバラなの」


「あぁ・・・・つまりどういうこと?」


「だからね、私は今この瞬間を正午と過ごせてることがとっても嬉しいの。私と正午が出会って今ここにいるのは実は奇跡みたいなものなんだよ。お金は手に入らなかったけど、それ以上に大切な時間を正午は今生きてるんだよ!」


クレムちゃんはニッコリと笑ってまっすぐ俺を見てきた。

突然そんなことを言われて俺はその笑顔を見つめたまま、ぽかーんとしてしまった。クレムちゃんの言いたいことは何となくだが分かる。今の俺が生きるこの一瞬は今しかないのだ。もう二度とまるっきり同じ時間を過ごすことはできない。クレムちゃんの力を使ってもそれはできないのだろう。

多分そう言いたいのだろうクレムちゃんは。

でも、何故だろう。そう言って笑ったクレムちゃんの笑顔の中にほんの少しだけ、どこか悲しそうな表情が見えたのは理解することができなかった。


「はぁ~・・・・わかったよ。そうだよな! いつまでもウジウジしてたって時間がもったいないもんな」


「そうなの!! いつでも元気が一番なの!!」


俺もクレムちゃんにつられるように笑顔を返す。今、この瞬間を大切にか・・・・


「さてと、それじゃあ元の時間まで帰りますか」


「そうするの。私もそろそろ疲れてきちゃったなの」



というわけで、俺達は戻ってきた時間から先程まで過ごしていた時間まで時を戻した。




「どぅあ~・・・・疲れた」


「うーん、もう眠いの・・・・」


戻ってきた俺達はそのままリビングの床に寝転がった。


「どうしたのよあんたたち」


何も知らない姉さんは俺たちを見て首をかしげていた。


「いや、色々とね・・・・」


「朝日、お風呂入るなの」


「あぁ、そうね。お姉ちゃんと一緒に入りましょうね」


クレムちゃんは姉さんと一緒に風呂場に消えていった。


「はぁ~・・・・なんだかな」


「あ、そうだ正午。協力したから明日お菓子よろしくなの!!」


クレムちゃんが親指をたてながら脱衣所から顔を出してきた。


「・・・・・・・・」


本当になんだかな・・・・。

ペットは責任をもって飼いましょう。あと、クレムが言いたかったことはその場のノリで書きました。なので訳分からないかも知れませんがそこは目をつぶってくださればいいなと・・・・。

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