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 見渡す限り何も生えていない干からびた土地が広がっている。

 滴り落ちた汗がひび割れた土に吸い取られる。

 ここは地球ではなく、火星か金星の一地方である。おおよそ生き物の痕跡がないのは、そのせいであろう。大地に刻まれたひびの底で細菌たちが苦しそうに喘いでいるのが見える。

 しかし眼を上げると、遠くに揺らめいているのは、朽ち果てた教会の残影である。こんなところにまで人類は進出していたのか。

 いや、微かに讃美歌の歌声が、風に乗って聞こえてくる。荘厳なはずの讃美歌まで、細く震えているのは、ここが地球外の惑星だからであろうか。それにしても誰がそこで歌っているのか。

 何のために。

 細菌たちでさえ喘ぎ苦しむこの土地で祈ることの必然とは何なのか。

 今日もまた讃美歌が歌われる。

 教会の中では少女たちがバトミントンを遊んでいる。

 こんなところにまで悪魔は降り注ぎ、少女たちの足に纏わりつく。

 四月の悩ましい風に吹かれて、バトミントンの羽根はゆっくりと放物線を描き、足元に落ちるから。

 自分の肉体が腐り始めていることに気づいたのは、三か月ほど前のことだった。部屋の中に腐臭がするので、その在処を探っていると、自分の腹のあたりからだと気がついた。腐ったところを切り取って、それでもう治ったものだと考えていたが、腐敗は治まらず、腹の半分まで切り取ってしまった。そんな風に切り取り続けていてもキリがないので、いっそ何もせず放置することにした。耐え難い腐臭に耐え、腐った内臓をなるべく日に当てるなぞして、乾かしてしまおうとしたのだが、腐敗は進む一方で、腹の中に多量の漿液のようなものが溜まりだし、それを拭き取ると、内臓はほぼ消失し、背骨の関節が見え始めた。それにしても何ていう悪臭だ。風呂上がり、洞窟のように抉られた腹部にドライヤーを当てていても、腐った干物のような匂いしかしない。近所からの苦情も甚だしく、あるものは引っ越し、あるものは玄関に生ごみを投げ入れたり、外出の際に金属バットで襲ってきたりした。石をもて追わるるごとくその土地を離れ、彷徨い続けているうちに打ち捨てられた土地に辿り着き、朽ち果てた教会の前に立っていた。


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