71.怪
お久しぶりです。
少し長かったので2部構成になりました。
夏はホラーが楽しい季節です。
信じるか信じないかはあなた次第。
「課長、いつもあそこの窓際の席にいる赤いカーディガンの佐々木さんって女性の方はどこの部署なんですか?すごい綺麗な方ですよね」
「あれ?お前何で佐々木さん知ってるんだ?お前が入社する前に病気か何かで辞めたはずだぞ」
「えっ?最近入った人じゃないんですか?辞めてないですよ!あの席に座ってるじゃないですか。今もコーヒー飲んでますし」
そう言って私は再び佐々木さんの方を見ると……
さっきまでの綺麗な顔は何だったのか。
窪んだ眼に蒼白く痩せ細った顔。
やけに赤い唇。
ニタァぁととても嬉しそうに笑いながら、
気味悪くこちらを見ていたのです。
「これで私の話は終わりです!次は先輩の番ですよ!」
夏と言えば……そう。
「怪談」
今日は休日なので、いつものメンツで集まり怪談大会をしている。
後輩の話も上手い人が話せば怖いのかもしれないが、いかんせん元気が良すぎる。
普段のテンションと変わらず怪談を話すので、恐怖心が全く煽られない。
いや、後輩の怖くない怖い話なんてどうでもいい。
真に怖いのは……流れでわかると思うが、横にいるカワウソだ。
まず、さくらさんの怖い話を俺は理解できるのか?
すごい話したそうにウズウズしているが、俺はさくらさんの言葉を理解できるのか?
「先輩!早く話して下さいよー!あっ……私の話が怖過ぎましたか?怖かったら、手……握ってても良いんですよ……?」
とりあえず俺のを話してしまうか。
「いや、全く怖くないから大丈夫だ」
後輩は何故か落ち込んでいるが、そんなことは気にしていられない。
何を話すのが良いか——。
あれはまだ俺が小さい頃。
確か小学生くらいだな。
うちは両親が共働きで、いつも夜まで1人だったんだ。
当然、小さい子が家で1人で出来ることなんて限られてる。
テレビを見たり、漫画を読んだり……。
その日は両親の仕事が残業で遅くなり、晩ご飯も1人でカップ麺を食べて、帰りを待っていたんだ。
しばらくして漫画もテレビも飽きてしまって、先に寝ようと思ってベッドで入ったんだよ。
その頃、自分の部屋にはベッドの足元の方に、大きな姿見があってな……クローゼット?タンス?っていうのか、洋服をしまう引き出しが下に付いていて、その上が大きな鏡になってるやつだ。
それで眠りについてしばらくしたら……
『『『バンッ!!ドンッ!!』』』
「きゃぁっ!」
「きゅいっ!」
って、何かを叩く音が聞こえて飛び起きたんだ。
姿見は足元にあるから、当然飛び起きた時に真っ先に目に入るだろう?
そしたら……揺れてるんだよ。姿見が。グラグラと。
その間にも……
『『『バンッ!!ドンッ!!』』』
音がずっと聞こえる。
恐る恐る姿見に近いてみたら——
『バンッ!!』
『ドンッ!!』
って音に合わせて、手形がどんどんついていくんだよ。
まるで何人もが姿見を叩いてるみたいに、グラグラと揺れながら、どんどん手形まみれになっていったよ。
しかもよく見るとついてる手形は……
姿見の向こう……鏡の向こう側から叩いてるらしいんだ。手のひらの向き的に。
「そ、それでどうなったんですか…?」
「はっ、ビビりすぎだぞお前。……拭いたよ。汚れてたら親に怒られると思って拭いた」
「えっ?」
これで俺の話は終わりだ。
次は——。
信じるか信じないかはあなた次第。




