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俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


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8/60

第8話 星の番人

 ズンッ……。


 重い振動が石畳を伝い、レオンの足元を揺らした。


 巨大な石扉の前で、レオンは鉄の短剣を握り直す。


 胸ポケットの幸運の羅針盤は、扉の向こうを真っすぐ指したまま動かない。


「この先に何がいる……。」


 大きく息を吸い込み、一歩前へ出る。


 石扉の中央には、星をかたどった窪みが刻まれていた。


 まるで何かをはめ込むために作られたような形だ。


 レオンはそっと指先で触れてみる。


 冷たい石の感触。


 その瞬間だった。


 ゴゴゴゴゴ……。


 洞窟全体が震え、巨大な石扉がひとりでに動き始める。


「開いた……!」


 ゆっくりと左右へ開かれていく扉。


 その向こうには、今までとは比べものにならないほど広い空間が広がっていた。


 円形の部屋。


 高い天井を何本もの石柱が支えている。


 壁には星を模した紋様が刻まれ、長い年月を経た今もかすかに輝いていた。


 部屋の中央には、一体の巨大な石像。


 高さは三メートルを超えているだろうか。


 両手には大剣。


 片膝をついたまま、まるで眠っているように動かない。


「石像……?」


 慎重に一歩踏み出す。


 反応はない。


 さらに一歩。


 静寂だけが部屋を支配している。


「もしかして、ただの像……。」


 そう呟いた、その時だった。


 カッ――。


 石像の両目が、青白く光った。


「!」


 ズズズズズ……。


 石が擦れる重い音とともに、石像がゆっくりと立ち上がる。


 握られた大剣が床を引きずり、火花を散らした。


 その圧倒的な存在感に、レオンは思わず一歩後ずさる。


 半透明の画面が浮かび上がる。


━━━━━━━━━━━━━━


図鑑更新


魔物図鑑


No.003


星の番人


登録


━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━


<図鑑>


古代遺跡を守護する石の番人。


侵入者を排除するまで、その動きが止まることはない。


━━━━━━━━━━━━━━


「古代遺跡の守護者……。」


 言葉を読み終えると同時に、星の番人が大剣を持ち上げた。


 速い。


 あの巨体からは想像できない速度だった。


「くっ!」


 レオンは木の盾を前へ突き出す。


 ドゴォォン!!


 凄まじい衝撃。


 盾越しでも腕が痺れる。


 身体ごと吹き飛ばされ、石畳の上を何メートルも転がった。


「ぐっ……!」


 すぐに立ち上がる。


 番人は歩みを止めない。


 一歩。


 また一歩。


 重い足音が部屋へ響くたび、床が小さく揺れた。


「だったら!」


 レオンは横へ回り込み、その脚を狙って鉄の短剣を振るう。


 キィンッ!


 甲高い音が響く。


 まるで岩へ刃を当てたような感触だった。


「傷一つ……!」


 刃先を確認する。


 欠けてはいない。


 だが、番人の脚には白い跡がついただけだった。


「硬すぎる……。」


 まともに戦って勝てる相手じゃない。


 番人は再び大剣を振り上げる。


 レオンは転がるように回避した。


 大剣が床へ叩きつけられる。


 轟音。


 石畳が砕け、破片が四方へ飛び散る。


「この一撃をまともに受けたら終わりだ……。」


 呼吸を整えながら距離を取る。


 焦って突っ込めば負ける。


 なら、やることは一つしかない。


(どうすれば勝てる。)


 レオンは部屋全体へ視線を巡らせた。


 石柱。


 天井。


 壁。


 床。


 番人だけじゃない。


 この部屋そのものが、攻略のヒントを隠しているはずだった。


番人はゆっくりと大剣を構え直す。


 その動きに無駄はない。


 一歩踏み出すたびに石畳が震え、重い足音が部屋中へ響き渡る。


(正面からじゃ勝てない。)


 それだけははっきり分かった。


 レオンは距離を取りながら、部屋の中を観察する。


 石柱は全部で八本。


 どれも太く頑丈そうだが、一本だけ違和感があった。


 表面に大きな亀裂が走っている。


(あの柱……。)


 さらに視線を上げる。


 亀裂の真上。


 天井にも細かなひび割れが広がっていた。


 もし柱が崩れれば――。


 そこまで考えた瞬間、番人が再び迫る。


「っ!」


 レオンは横へ飛ぶ。


 大剣が振り下ろされ、石畳が砕け散る。


 飛び散った破片が頬をかすめた。


(誘導するしかない。)


 レオンはわざと亀裂の入った柱へ向かって走る。


 番人は迷うことなく追いかけてくる。


 その巨体からは想像もできないほど、一歩が大きい。


 距離はあっという間に縮まった。


 柱の手前で身体をひねる。


 ギリギリまで引きつける。


「今だ!」


 レオンは横へ転がった。


 次の瞬間。


 ドゴォォン!!


 番人の大剣が柱へ叩きつけられる。


 石柱が大きく揺れ、天井から砂埃が舞った。


 だが、それだけだった。


「まだか……!」


 番人はすぐに大剣を引き抜き、再びレオンへ向き直る。


 一撃では足りない。


 なら、何度でも当てさせるしかない。


 レオンは息を整え、もう一度柱の方へ走る。


 番人も追う。


 距離を測る。


 三歩。


 二歩。


 一歩。


「ここだ!」


 身体を低くして滑り込む。


 大剣が空を切り――。


 ドガァァン!!


 二度目の衝撃。


 柱の亀裂が一気に広がった。


 ミシッ……。


 嫌な音が天井から響く。


(あと少し……!)


 しかし、その時だった。


 番人は動きを止めた。


 まるで同じ手は通じないと言わんばかりに、大剣を横へ構える。


「しまっ……!」


 横薙ぎ。


 避け切れない。


 レオンは木の盾を構えた。


 ガァン!!


 凄まじい衝撃。


「ぐあっ!」


 身体が宙へ浮き、近くの石柱へ叩きつけられる。


 肺から空気が一気に吐き出された。


 立ち上がろうとしても足に力が入らない。


 番人はゆっくり近付いてくる。


 大剣を高く掲げる。


(まずい……。)


 もう避けられない。


 そう思った瞬間、レオンの視界に一本の投げナイフが映った。


 戦いの途中で腰のポーチから落ちたものだ。


 すぐ近くに転がっている。


(まだ使える!)


 レオンは痛む身体を無理やり起こし、投げナイフを掴んだ。


 狙うのは番人ではない。


 亀裂だらけになった柱。


 最後の力を振り絞る。


「届けぇぇっ!」


 投げナイフが一直線に飛ぶ。


 カンッ!


 乾いた音が響く。


 番人は反応しない。


 だが、その直後。


 ミシッ……。


 柱がゆっくりと傾き始めた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 天井全体が大きく揺れる。


 番人が初めて空を見上げた。


 その瞬間だった。


バキィィッ!!


 柱がついに限界を迎えた。


 轟音とともに砕け散り、支えを失った天井が大きく崩れ始める。


 ゴゴゴゴゴゴ……!!


 無数の岩塊が、星の番人へ降り注いだ。


 ズドォォン!!


 激しい土煙が舞い上がる。


 部屋全体が揺れ、レオンは思わずその場に身を伏せた。


 しばらくして、轟音は静寂へと変わる。


 舞い上がった土煙が少しずつ晴れていく。


「どうなった……?」


 ゆっくりと顔を上げる。


 崩れ落ちた岩の山。


 その中央から、大きな石の腕だけが突き出していた。


 ギギ……。


 番人はなお動こうとする。


 岩を押しのけようと腕へ力を込める。


「まだ……。」


 レオンは息を呑んだ。


 しかし次の瞬間。


 ミシッ。


 番人の身体に一本の亀裂が走る。


 それは胸へ。


 肩へ。


 脚へ。


 まるで長い眠りにつくように、全身へ広がっていった。


 青白く輝いていた両目の光も、ゆっくりと弱まっていく。


 ギ……。


 最後に小さく音を立てると、番人は膝をついたまま静かに動きを止めた。


 砕け散ることも、黒い粒子となって消えることもない。


 ただ役目を終えた守護者のように、その場で永遠の眠りについた。


 ――ピコン。


━━━━━━━━━━━━━━


運命ポイント


+5Pt


━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━


試練突破


BONUS


運命ポイント


+5Pt


━━━━━━━━━━━━━━


 画面を見たレオンは、その場へ座り込んだ。


「はぁ……はぁ……。」


 腕は震え、全身が痛む。


 勝ったというより、生き残れた。


 そんな戦いだった。


「まともに戦っていたら……勝てなかったな。」


 短剣を鞘へ納め、ゆっくりと立ち上がる。


 すると、番人の後ろから低い音が響いた。


 ゴゴゴゴ……。


 石の祭壇がゆっくりとせり上がってくる。


 その中央には、古びた木箱が一つ置かれていた。


「宝箱……。」


 慎重に近付き、そっと蓋を開ける。


 中に入っていたのは、武器でも防具でもなかった。


 一枚の石板。


 手のひらほどの大きさだが、驚くほど軽い。


 表面には細かな彫刻が刻まれている。


 レオンは付着した埃を優しく払った。


「これは……。」


 描かれていたのは、一人の人物。


 その人物は夜空へ向かって手を伸ばし、無数の星に囲まれていた。


 足元には様々な武器や道具。


 さらに、その周囲には多くの人々がひざまずいている。


 王を讃えるようにも。


 英雄へ感謝を捧げるようにも見えた。


「ガチャ師……なのか?」


 確信はない。


 だが、石板に描かれた人物の手元には、自分が毎日開いている画面によく似た紋様が刻まれていた。


 最弱職と呼ばれるガチャ師。


 その姿が、なぜ古代遺跡で英雄のように描かれているのか。


 レオンには分からなかった。


 ただ一つだけ、確かなことがある。


「この世界には……まだ誰も知らない秘密がある。」


 石板を大切にしまい、レオンは静かに祭壇を見つめた。


 長い年月、誰にも見つけられることのなかった洞窟。


 その最深部で、自分は世界の謎へ続く最初の手がかりを手に入れたのだった。


(第9話へ続く)


⸻


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


ついにレオンは「忘れられた洞窟」の試練を突破しました。


手に入れた石板が何を意味するのか――その謎は次回、少しずつ明らかになります。


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