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俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


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第17話 勝てない相手との戦い

 訓練場には静かな緊張が漂っていた。


 木剣を手にしたレオンは、正面に立つ試験官ガレスを見据える。


 日に焼けた肌。


 鍛え抜かれた身体。


 肩の力は抜けているのに、そこから隙は一切感じられなかった。


(強い……。)


 向かい合っただけで分かる。


 これまで戦ってきたゴブリンやホーンラビットとは、まるで違う。


 経験が違う。


 技術が違う。


 何より、戦い慣れている。


「構えろ。」


 低い声が響く。


 レオンは深く息を吸い、木盾を前へ構えた。


 右手には試験用の木剣。


 周囲では受験者たちが固唾をのんで見守っている。


 リリアも両手を胸の前で握り締めていた。


「始め!」


 開始の合図と同時に、ガレスが一歩踏み込む。


 速い。


 大きな体格からは想像できないほど滑らかな動きだった。


 レオンは反射的に盾を前へ突き出す。


 ガンッ!


 木剣が盾へ叩きつけられる。


「ぐっ!」


 腕が痺れた。


 たった一撃。


 それだけで押し込まれそうになる。


 ガレスは追撃せず、静かに距離を取った。


「どうした。」


「そんなものか?」


 試すような視線。


 レオンは木剣を握り直した。


(真正面じゃ勝てない。)


 分かっていたことだ。


 それでも、一度ぶつかってみなければ実感できなかった。


 腕力では敵わない。


 剣技でも敵わない。


 なら、自分が勝負できる場所はどこだ。


「行きます!」


 今度はレオンから飛び込んだ。


 木剣を振り下ろす。


 しかし、


 カンッ。


 軽く受け流される。


 続けて横薙ぎ。


 これも紙一重でかわされた。


「悪くない。」


 ガレスは口元に笑みを浮かべる。


「だが、素直すぎる。」


 その瞬間だった。


 木剣が視界から消える。


「えっ……!」


 気付けば木剣はレオンの肩へ軽く触れていた。


「一本。」


 レオンは思わず苦笑する。


「見えませんでした。」


「見えなくて当然だ。」


 ガレスは木剣を肩へ担いだ。


「お前はまだ駆け出し。」


「俺は二十年以上剣を振っている。」


「同じ土俵で勝負すれば、結果は決まっている。」


 レオンはゆっくり頷く。


 悔しい。


 だが、納得もしていた。


 経験の差は、一日や二日で埋まるものではない。


「もう終わりか?」


 ガレスが問いかける。


 レオンは首を横へ振った。


「まだです。」


 その目を見て、ガレスは小さく笑う。


「そう来なくちゃな。」


 再び構える。


 今度はレオンからは動かない。


 盾を構えたまま、ゆっくりと横へ歩き始めた。


 ガレスも合わせるように動く。


 二人は円を描くように間合いを保った。


「攻めないのか?」


「攻めても勝てませんから。」


「正直だな。」


「だから考えます。」


 その返答に、ガレスの眉がわずかに動いた。


 レオンは視線を止めない。


 見ているのは剣だけではない。


 足運び。


 重心。


 肩の動き。


 呼吸。


 視線。


 一つひとつを頭へ刻み込む。


(踏み込みは右足から。)


(振る前に肩が少しだけ動く。)


(呼吸は一定……。)


 ガレスが再び踏み込んできた。


 レオンは盾で受ける。


 ガンッ!


 続けて二撃目。


 三撃目。


 木剣が盾を叩くたび、腕が悲鳴を上げる。


 だが、レオンは反撃しなかった。


 ただ受ける。


 受けながら見る。


 受けながら覚える。


「……。」


 ガレスは無言で剣を振るい続ける。


 やがて木剣を止め、一歩下がった。


「面白い。」


 ぽつりと呟く。


 レオンは首をかしげた。


「何がですか?」


「普通なら焦る。」


「力任せに打ち込んでくる。」


「だが、お前は違う。」


 ガレスは木剣を軽く回した。


「戦いながら学んでいる。」


 レオンは照れくさそうに笑う。


「勝てないなら、それしかないと思って。」


「ふっ。」


 ガレスは小さく笑った。


「その考えは嫌いじゃない。」


 訓練場の空気が少しだけ変わる。


 見学していた冒険者たちも、最初の頃とは違う目でレオンを見始めていた。


「あいつ……。」


「最初から勝つつもりじゃなかったのか。」


「違う。」


 別の冒険者が腕を組む。


「勝てないと分かった瞬間に、戦い方を変えたんだ。」


 レオンはまだ気付いていなかった。


 自分の戦い方が、少しずつ周囲の評価を変え始めていることに。


 その時だった。


 訓練場の端へ視線が止まる。


 武器立て。


 木樽。


 そして、訓練で使うために束ねられた一本のロープ。


 レオンの口元が、わずかに上がる。


(そうか。)


(使えるものは、剣だけじゃない。)


 静かに盾を構え直す。


 その小さな変化を、ガレスは見逃さなかった。


「何か思いついたようだな。」


 レオンは答えない。


 ただ静かに、一歩前へ踏み出した。


 


ガレスは木剣を肩へ担ぎ、静かに笑った。


「その顔を見る限り、何か見つけたようだな。」


 レオンは答えない。


 深く息を吸い、盾を構え直す。


 勝てるとは思っていない。


 だが、一度くらいは相手の想定を超えたい。


 それが今の目標だった。


「来い。」


 ガレスが軽く手招きする。


 レオンは地面を蹴った。


 真正面から突っ込む。


 木盾を前へ押し出し、その陰から木剣を突き出す。


 ガレスは難なく受け止める。


 カンッ!


 そのまま木剣を払おうとした瞬間、レオンは自分から盾を引いた。


 力比べを避け、横へ流れる。


「ほう。」


 ガレスの目が細くなる。


 レオンはそのまま訓練場の端へ走った。


「逃げるか?」


 受験者たちがざわつく。


 しかし、レオンの狙いは逃げることではなかった。


 武器立ての横。


 訓練用にまとめられていた一本のロープを掴む。


「それを使うのか。」


 ガレスは追いながら笑う。


 レオンはロープを大きく振り回し、そのまま地面へ放った。


 狙ったのは身体ではない。


 足元だった。


 ロープは地面を滑るように伸びていく。


 ガレスは軽く跳び上がり、難なくかわした。


「終わりだ。」


 そう言って踏み込もうとした、その瞬間だった。


 レオンはロープを一気に引いた。


 跳んで着地したガレスの足元へ、ロープが戻ってくる。


「……!」


 ほんの一瞬だけ。


 ガレスの足が止まった。


 レオンはその隙を逃さない。


「はあっ!」


 一気に距離を詰める。


 盾で身体を押し込み、木剣を一直線に突き出した。


 カンッ!


 木剣同士がぶつかる。


 防がれた。


 それでも今までとは違う。


 ガレスは確かに反応が一瞬遅れた。


 訓練場が静まり返る。


「今の……。」


「ガレスさんの反応が遅れたぞ。」


「新人が?」


 受験者たちから驚きの声が漏れる。


 ガレスは木剣を下ろし、大きく笑った。


「はっはっは!」


「なるほど。」


「そう来たか。」


 レオンは肩で息をしながら苦笑する。


「勝てるとは思ってません。」


「でも、一回くらいは驚かせたかったんです。」


「面白い。」


 ガレスは満足そうに頷いた。


「実に面白い。」


 次の瞬間だった。


 ガレスの姿が消える。


「えっ!?」


 レオンが反応した時には、木剣は首元でぴたりと止まっていた。


「そこまで。」


 静かな声が訓練場へ響く。


 レオンは木剣を下ろし、苦笑した。


「負けました。」


「勝負は俺の勝ちだ。」


 ガレスはそう言って木剣を肩へ担ぐ。


「だが。」


 その一言で、訓練場の空気が変わった。


「試験は、お前の勝ちだ。」


 受験者たちがざわつく。


「冒険者は決闘をする仕事じゃない。」


「依頼を達成し、生きて帰る仕事だ。」


 ガレスはレオンを真っ直ぐ見つめた。


「お前は最初から、自分が勝てないことを理解していた。」


「だから観察した。」


「考えた。」


「地形を利用した。」


「使える物を探した。」


「そして、自分なりの勝機を作った。」


 一つひとつ、ゆっくりと言葉を重ねる。


「それは冒険者として、一番大切な資質だ。」


 レオンは思わず顔を上げた。


「ガチャ師。」


 ガレスは静かに笑う。


「珍しい職業だ。」


「だが、お前は職業に頼って戦ったわけじゃない。」


「自分の頭で戦った。」


「その才能は、どんな剣技より価値がある。」


 胸の奥が熱くなる。


 村では弱い職業だと言われた。


 街へ来ても珍しい職業だと驚かれた。


 それでも今、初めて認められた気がした。


「レオン。」


 ガレスは力強く頷く。


「合格だ。」


 一瞬、言葉が出なかった。


 やがてレオンは深く頭を下げる。


「ありがとうございました!」


 リリアが真っ先に駆け寄る。


「おめでとう!」


「ああ。」


 二人は笑顔で拳を軽く合わせた。


 その様子を見ていた冒険者たちも、小さく頷く。


「ガチャ師って聞いた時は外れ職かと思ったが……。」


「あいつ、面白い戦い方をする。」


「力じゃなく頭で勝負するタイプか。」


「伸びそうだな。」


 そんな声が、あちこちから聞こえてきた。


 ガレスは受付へ向かいながら、小さく呟く。


「受付嬢。」


「はい。」


「あの二人は標準評価でいい。」


「だが、覚えておけ。」


「特にレオンだ。」


「化けるぞ、あいつは。」


 受付嬢は微笑みながら頷いた。


「承知しました。」


◇ ◇ ◇


 受付へ戻ると、革製のカードケースが二つ用意されていた。


「レオンさん、リリアさん。」


「E級冒険者登録、おめでとうございます。」


 受付嬢は金属製のカードを二人へ差し出す。


 表にはギルドの紋章。


 裏には名前と職業が刻まれていた。


 レオンは何度もカードを眺める。


 ずっと憧れていた冒険者。


 ようやく、その一員になれたのだ。


「これで、本当に冒険者なんだな。」


「うん。」


 リリアも嬉しそうにカードを握り締める。


 受付嬢は掲示板を指差した。


「皆さん最初は薬草採取や配達依頼から始めます。」


「焦らず、一歩ずつ経験を積んでください。」


 レオンは掲示板を見上げ、小さく笑った。


 薬草採取。


 荷物運び。


 魔物討伐。


 探し物。


 数え切れないほどの依頼が並んでいる。


 この中から、自分たちの冒険が始まる。


 リリアが隣で微笑んだ。


「明日から、本当の冒険だね。」


「ああ。」


 レオンは冒険者カードを胸ポケットへしまう。


 ガチャ師として。


 一人の冒険者として。


 新しい物語が、いよいよ始まろうとしていた。


レオンは深呼吸を一つすると、『START』へ指を伸ばした。


 指先が光へ触れた瞬間、部屋の景色が淡く溶けていく。


「来た……!」


 リリアもすっかり慣れた様子で、満天の星空を見上げた。


 二人の前には巨大な黒い本。


 表紙に刻まれた金色の星が静かに輝き、ゆっくりとページが開いていく。


 パラリ。


 パラパラパラッ……。


 最後のページが開くと、十本の光が夜空へ舞い上がった。


「今回はどうだ……?」


 一本目。


 白。


 二本目。


 白。


 三本目。


 青。


 四本目。


 白。


 五本目。


 白。


 六本目。


 白。


 七本目。


 青。


 八本目。


 白。


 九本目。


 白。


 そして十本目。


 ゆっくりと色づいた光は、眩い金色だった。


「また金!」


 リリアが思わず声を上げる。


 レオンも思わず拳を握り締めた。


「最近、本当に運がいいな……。」


 黄金の光を中心に、夜空へ星々が広がっていく。


 巨大な本の表紙が淡く震え、金色のページが一枚だけ宙へ浮かび上がった。


 まずは白いカードから順番に姿を現していく。


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獲得


No.005


保存食 三日分


登録済み


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━━━━━━━━━━━━━━


獲得


No.009


火打石


登録済み


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獲得


No.026


裁縫道具


★☆☆☆☆


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<図鑑>


針や糸、小型のはさみなどが入った携帯用の裁縫道具。


旅先で衣服や装備の簡単な修理ができる。


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「こういうのも必要なんだな。」


 レオンは感心したように頷いた。


 冒険は戦うだけではない。


 旅を続けるには、日常を支える道具も欠かせない。


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獲得


No.019


魔石(小)


登録済み


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獲得


No.027


簡易調理鍋


★★☆☆☆


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<図鑑>


焚き火に掛けるだけで使える軽量の調理鍋。


煮込み料理や湯沸かしなど、野営で活躍する。


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「これで料理の幅も広がるね。」


 リリアが嬉しそうに微笑む。


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獲得


No.003


木のコップ


登録済み


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獲得


No.024


止血布


登録済み


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━━━━━━━━━━━━━━


獲得


No.018


解毒薬


登録済み


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獲得


No.008


丈夫なロープ


登録済み


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「今回はダブりが多いな。」


「でも、新しい道具もあるよ。」


 リリアが笑顔で言う。


「そうだな。」


 レオンは頷き、最後の金色の光へ視線を向けた。


 黄金のページがゆっくりと開く。


 そこへ映し出されたのは、一足の革靴だった。


 だが、普通の革靴ではない。


 踵には風を思わせる銀色の紋様が刻まれ、靴底には小さな魔石が埋め込まれている。


「靴……?」


 次の瞬間、金色の文字が静かに浮かび上がった。


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NEW


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獲得


No.031


風走りの靴


★★★☆☆


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<図鑑>


風の加護が宿る魔法の靴。


装備すると移動速度がわずかに上昇し、長距離を歩いても疲れにくくなる。


戦闘中の回避や探索にも効果を発揮する。


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「これは……!」


 レオンは説明を何度も読み返した。


「旅向きの装備だ。」


「レオンにぴったりだね。」


 リリアも嬉しそうに笑う。


 レオンは風走りの靴を手に取り、そっと履いてみる。


 サイズは驚くほどぴったりだった。


 一歩踏み出す。


 身体が少しだけ軽くなったような、不思議な感覚が足元から伝わってくる。


「明日の依頼で試してみよう。」


「ああ。」


 二人は期待に胸を膨らませながら頷き合う。


 巨大な本が静かに閉じる。


 夜空は光へ溶け、次の瞬間には宿の部屋へ戻っていた。


 レオンは窓の外に広がるアルトの夜景を見つめる。


 明日は冒険者として初めて受ける正式な依頼。


 薬草採取とはいえ、初仕事だ。


 失敗はしたくない。


 けれど、それ以上に楽しみだった。


「今日は早く寝よう。」


「うん。」


 リリアも頷き、ランプの火を小さくする。


 静かな夜が二人を包み込む。


 こうして、E級冒険者として最初の一日は幕を閉じた。


(第18話へ続く)


⸻


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


今回はレオンが冒険者となって最初の無料10連を引き、新たなSRアイテム《風走りの靴》を手に入れました。


いよいよ次回は、E級冒険者として初めての依頼へ挑戦します。薬草採取のはずが、思わぬ出来事が二人を待ち受けているかもしれません。


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