エピローグ:そうして家族は家族になる
お昼どきを大幅に過ぎて、ようやく閉店。
マコは外に出て、扉の外に[閉店]の札をかける。お仕事はもちろん楽しいけれど、この札をかけると肩の荷が下りたようなホッとした気持ちになるから不思議だ。
「さあ、家族会議です。議題は明日の予定!」
鴨蕎麦を3つテーブル席に置きながら、ヒジリが楽しそうに言った。
「明日は待望のお休みというわけです。何をして過ごしましょうか」
「どこかにお出かけしたいなあ。おすすめはある?」
マコにとって異世界ヒルデガルトはまだまだ未知だ。できることなら、お休みを利用してあちこちに出かけてみたい。
「王都でお買い物でもしましょうか?」
「王都かぁ……」
王都はとても賑やかだと聞く。正直なところ、かなり興味がある。
「自然風景が見たいのなら精霊の池とか、行きたいですね」
そういうのもおもしろそうだ。
「あの、さー」
2人の会話を眺めていたジャスティナが、遠慮がちに口を挟んだ。普段、比較的ハキハキと話すジャスティナにしては、珍しく歯切れが悪い。
「ウルディに、行くのは、どうかなーって」
「あぁ!」
ヒジリがハッとした表情で会話を引き継ぐ。
「迂闊でした。そうか……確かに、それが最優先ですよね。気を回さなくて申し訳ない」
「うる……?どういう場所なの?」
マコは蕎麦をすすりながら尋ねる。
「ジャスティナの故郷です。そして……ジャスティナの両親が住んでいる場所です」
「お母さんの、お父さんと、お母さん?」
「つまり、マコのおじいさんと、おばあさん」
「わ、わあ!すごい、なんかすごい!」
急に家族が増えたように思えて、なんだかドキドキしてしまった。
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「手土産をどうしましょうか。また蕎麦を振る舞いますか」
「気を使わないでよ。そんなことよりマコのこと、少しも知らせてないのよね」
「そうなんだ。私が急に行ったら驚かせてしまうんじゃないの?」
「マコはかわいいから大丈夫ですよ。絶対に大丈夫」
「そうね。両親もきっとマコのことが気に入ると思う」
「そっか。それなら安心だけど。でもちょっと緊張しちゃうかも」
「とっても元気な人たちですよ。元気すぎて驚くかもなあ」
「あ、ちなみに陸路だから安心して。明日は空は飛ばないの」
「本当?空もおもしろかったけど、地面を行くなら安心だなあ」
家族の会話はどこまでも続く。
バラバラだったはずの3人は、家族として過ごすことを選択した。
だからこれからも、たくさん話をしよう。
一緒に仕事をしたり。一緒に出かけたり。一緒に魔術の練習をしたり。
これからも、たくさんの経験をしよう。
そうやって3人は、少しずつ家族になっていくのだ――
【END】




