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もう現場入って大丈夫なんですか?

「198、、、199、、、200!、、、、っはーっ!!は、初めて、、200回、、出来たぁぁぁ、、、」


まだ誰もグラウンドに出てきていない、と言うか丁度明かりが差し始めたくらいの時間。


ボクはだいぶ早起きして早朝特訓をしていた。

いつも通りの時間から始めると500回どころか200回にも届かないからだ。


「とりあえず、次は腕立て200回、、、」

「あれっ!?運牙!こんな朝早くから何してるの?」

「えっ、、あ、陽さん、おはようございます。」

「こぉら!さん付けは無し、でしょ。あと、別に敬語もいらないから。」

「えぇぇ、、えっと、、ひ、、陽、、おはよう。」

「うん!おはよう、運牙!よく出来ました!」


ジャージ姿の陽がグラウンドに現れたのだ。

普通に腰に手を当てている仕草も可愛らしく感じる不思議な人だ。


「で、運牙は何してるの?」

「昨日までと一緒だったら、多分特訓の結果は変わらないだろうな、って思ったから。少しでも早く始めて特訓時間を確保しようと、、」

「少しどころじゃ、ないけどね。だって今まだ朝5時だよ?確かにもう少し頑張って欲しい、とは言ったけど、あまりにも無理し過ぎるのはダメだからね。身体が保たない。」

「大丈夫、、、まだ皆んなと同じ心持ちにはなれないけど、、、陽みたいにボクに期待をしてくれている人がいるならせめてその期待には応えてみせたいから。」

「そ、、、そっかそっか!!、、怪我とかしたらすぐに言ってね!ぱぱっと治しちゃうから!」

「あ、ありがとう、、」

「あ、、、運牙に期待してるもう1人が来たよ。」

「もう1人?、、、あ。」


同じジャージ姿の水蓮さんも現れた。

「えっ、何でもうグラウンドに、、、?ちょっと陽何か仕組んだわね!?」

「いやいや、私何もしてないから!運牙が自主的に早朝特訓してたの。」

「そう、、なのね、、、、」

「、、、、、。」


気まずい。非常に気まずいです。

と、とりあえず挨拶からだよね。


「お、、、おはよう、、ございます。」

「あ、あぁ、おはよう、、、体調は、、大丈夫なのか?」

「え?、、えぇ、、大丈夫、、です、、はい。」

「なら、、、良かった、、、」


空気がどんどん重苦しくなっていき、陽さんもどう仲介しようかと困った表情をしている。


しっかりしないと。非があったのはボクの方だ。だからボクからちゃんと謝らなきゃ。


「あ、あの!昨日は」

「本当に、ごめんなさい!!」

「えぁ、、、え?」


水蓮さんが頭を下げた。

「あなたが、2人の息子だからとか、私はあなたの気持ちを何も考えずに自分の理想像を勝手に押し付けてた。教育係としても、人間としても私は失格だわ。本当にごめんなさい。」

「、、、、はっ!あ、頭を上げてください!あの、ボクの方こそすみませんでした!ボクの言った事はただの侮辱です。到底許されるものでは無かったです。発言を取り消します。本当にすみませんでした。」


ボクも頭を下げる。やってしまった、水蓮さんに先に頭を下げさせてしまった。


「ボクは、人を助ける事を馬鹿にしたかったわけじゃないんです!ただ、その結果助けてくれた人まで死んでしまっては、意味が無いと思っているからなんです!、、、だから決して侮辱したかったわけでは」

「分かってるわ。」

「、、、、、水蓮さん、、、。」

「あら、初めて名前、、と言うか苗字を呼んでくれたわね。」


顔を上げると、そこにはここ数日間で見たことの無い優しい顔の水蓮さんがいた。


「あなたの発言の意図はちゃんと伝わった。だからあなたはもう気にしないで。私も、今度はちゃんと『無杉運牙』個人として接するわ。、、、だから、引き続き私に教育係としての役目を今後も全うさせてもらえないかしら。」


陽さんが色々話してくれたおかげで、水蓮さんの印象は少し変わった。怖い事に変わりはないけど。


「こちらこそお願いします、水蓮さん。ボクも出来る限り、精一杯頑張りますから。」

「ありがとう!!本当に、、、ありがとう。」

「良かったね〜、ヒメちゃん。」

「あぁ、、、あと、、これからは姫歌と呼んで。気付いてるとは思うけど、基本私たちは名前で呼び合ってるの。」

「確かにそうですね。どうしてですか?」

「名前で呼び合った方が距離が近い気がするでしょ?チームワークがとっても大事だから、敢えて皆んな名前呼びにしてるの。だから運牙、あなたもそのつもりで。」

「わ、分かりました!ひ、、姫歌さん!」

「、、、、、ま、、それで良いわ。」

「良かったね〜、ヒメちゃ〜ん、、とうとう名前まで呼んでもらったね!」

「陽、あなただけ今日は倍の特訓量にしようかしら。」

「うわ!ヒメちゃんがキレた!?」


2人のじゃれ合いに少し笑ってしまう。仲が良いんだ、この2人。

そりゃ、こんな仲の良い人が近くにいるなら、なおさら死ねないよね。


ボクは2人をよそに腕立て伏せを始めた。

今は200回が時間の限度だけど、いずれは500回を普通にこなせるようになるんだ。


陽のような夢や、姫歌さんのような思い描く理想像なんかはまだ持ててないけど。


せめて、先日までのボクには寄せられる事のなかった周りからの期待には応えられるように。


黙々と特訓を続けていった。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「全部200回到達よ。持久走もあまりペースが落ちなかった、頑張ったわね運牙!」

「ありがとう、、ございます、、はぁ、はぁ、、」


姫歌さんの態度が結構軟化したように感じるのは気のせいだろうか。


「凄いよ運牙!次は目指せ300回だね!」

「ありがとう、、って、だ、抱き付かないでください!汗ヤバいんで、臭いですよ!」

「別に、気にしないのに〜。」

「今は息を整えてるんだから、そっとしてあげなさい。」

「持久走のあとノンストップで特訓を強行してたのは、どこの誰でしたっけ?」

「それを言うのは意地が悪いわよ!」


確実に言えるのは、陽との距離が近くなってると言う事だ。イチイチドキッとするから心臓に悪い、、


「なぁ、運牙よ。何があったんだ?あの2人と急に仲良くなり始めてよぉ。」

「掛君!いや、、そんな特別な事は、、、」

「モテ男のテクニックとやら、今度教えてくれよな。」


掛君は謎の言葉を残して去っていった。

、、、何だったんだろう。


「やぁ、運牙君。特訓は順調かい?」

「あ、副隊長。」

「良人さん、お疲れ様です。」

「お疲れでーす!」

「お疲れ。運牙君も良人で良いからね。」


黒縁眼鏡をかけた真面目で優しそうな第4番隊の副隊長。初日以来話してないから、あまり知らないけれど。


「良人さん、今日は街の見回りにいくはずでは?」

「あぁ、これから行くところなんだけど、運牙君を連れて行こうと思ってね。構わないかな?」

「え!?もう、ですか?」

「そうだよ、良人さん。さすがにまだ危ないんじゃ。」

「大丈夫。僕が近くで指導するから。」

「、、、でしたら、、問題無いですけど。」

「はっはっはっ、心配性な先生になったね、姫歌も。」

「そう言うわけではないです!」


、、、ところで、ボクは何をさせられるんでしょうかね。


「おっと、すまない。運牙君、これから君には僕と一緒に街の見回りに行ってもらう。PE濃度が濃くなってきた地域があってね、PEの回収作業を行う。」


PEの大気中の割合を示すPE濃度。PE濃度が高くなればなるほど、その地域でのポルターガイスト発生確率が高まる。

だからポルターガイストが発生する前に、特対組で開発された特別な機械で回収する。もしポルターガイストが発生してしまった場合は討伐に移行。


これが今回良人さんと臨む仕事の内容だ。

PEは無限に増殖するから、特対組の仕事としてこの回収作業がメインになる事が多いらしい。

回収されたPEは特対組の武器のエネルギー源として活用される事になっている。


PEを取り扱う技術はあるのに、無限にPEが生まれるから各地での被害が増えている。何ともし難い厳しい状況だ。


「運牙君を危険に晒したりはしないから、安心してくれて良い。」

「ありがとうございます、、」


良人さんと一緒に行動していて分かった事がある。


特対組内では。

「良人さん!この前のアドバイスのおかげでポルターガイストを上手く倒せました!ありがとうございました!」

「僕は助言をしただけだよ。ちゃんと動けたのは君が練習してたからだよ。おめでとう、また困った事があれば相談しに来てくれ。」


「良人さん!こ、これ!この前のお礼です!受け取ってください!」

「そんな、、あれくらい大した事ないのに。」

「い、いえ!それでも、です!」

「、、、ありがとう、受け取らせて貰うよ。」


「おーい、良人ー。次はいつ勝負してくれるんだ?早く決着つけさせてくれよ。」

「だから、あれは君の勝ちで良いって言っただろう。」

「俺様が納得いかねぇんだ!さぁ、今からでも良いんだぜ?」

「今からは無理だよ。分かった、また来週にね。」

「約束だぞ?」


「あの!今度一緒にお食事に行きませんか?」

「ごめんね、その日は当番なんだ。」

「うぅぅ、、また、誘います!」



この人、男女問わず凄くモテる!

特対組から出るまでにすれ違う人からそれぞれ話しかけられていた。

人望がとても厚いんだろう。話しかけてくる人全員親しみが感じられたからだ。


「ごめんね、ちょっと手間取っちゃったね。さ、初現場に出向いてみようか。」

「お、お願いします。」


「運牙、気を付けてね。」

「良人さんに付いていれば大丈夫よ。」

わざわざ付いてきてくれていた2人からも良人さんへの信頼を感じる。


今から、ボクは一般人としてではなく、特対組隊員として街に出るんだ。


まさか、父や母と同じ職業に付くなんて。想像もしてなかったな。


ボクの特対組としての日々が、今ここから正式にスタートするんだ。

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