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友達家族
「光、あなた、とりあえずは落ち着いたわよ」
佐伯が会社から去ってしばらくしてからの事だった。
一時的に復帰していた会社も、これで引退できる。
「あなた、社長が普通の社員としてSHIMAZAKIに入社しないかって。島崎さんには頭が上がらないわね」
成美は夫に微笑む。
「さて、ずっと此方でお世話になる訳にもいかないし…新しい住まいを探さなくちゃね」
心機一転、成美は意気込む。
「お母さん、それなんだけど…」
光はおずおずと手を挙げる。
成美と父は何だろうと、光を見る。
「梓…っていうか梓のお父さんがね、社宅に住まないかって。ここからも凄く近いんだけど…」
「あぁ、そういう事!」
成美は全てに理解した。
「これからも皆で頑張りましょうね」
成美は微笑むのだった。
光は巴を安心させる為、落ち着いた事を話す。
「そう…」
巴はそれだけだった。
だが、表情はホッとしている。
梓も、やれやれという顔をしながら笑みを浮かべたのだった。