私を見失わないで
LMCに向かう途中、ハジメに捕まった。
「レン、シャーロットさんに改めて紹介してくれよ」
「そんなの自分でいいなよ」
「えー、お前と仲いいじゃん」
「シャーロットさんは騎士道が好きな人だと思うよ」
「騎士道?」
「古き良きというか、なんとなく」
ハジメが「それじゃあ、わかんないよ」と言った。
「アプローチは自分でしろってことだよ」
トッポが「最善策を一緒に考えましょう」と言った。
ハジメが「そうだな。手伝ってくれ」と頷いた。
LMCのドアを開けたら、めずらしい顔があった。
「チャオ」と瑞稀さんに言った。
「レンくん、こんにちは」
「来たのかえ」とシャーロットが笑った。
二人はすでに仲良さそうだった。
「スイから聞いたんだけど」と瑞稀さんが言った。「ここにミドリ達いるって」
「スイが?」と涼香さんが聞いた。
「うん。ちょっと聞きたいことがあって」
「ゆっくりしていくのじゃ」とシャーロットが言った。
五人でテーブルを囲んだ。植物たちが揺れていた。
「聞いていい?」と瑞稀さんが言った。「みんなAI、どうやって使ってるの」
「どういう意味ですか」と僕は聞いた。
「AIと常に一緒にいるじゃん。私もスイと一緒にいるけど、どんな感じかなって」
「レンくんとミドリも外でもずっと一緒でしょ」
「研究のためでもありますから」とミドリ先輩が言った。
「涼香は?」
「私は主に家で使ってる。外ではあまり」と涼香さんが言った。
「妾も同じじゃ」とシャーロットが言った。
「家にはロボットもいてのう、そこにAIが入っておる。家では仲良くしておるが、あまり外に持ち出さんな」
「そうなのね」と瑞稀さんが言った。「うちでも家に帰ればスイに身体に入ってもらうけど、持ち出すのが普通になっちゃった」
「多くはそうじゃろうな。ないと不便なんじゃろうて」とシャーロットが笑った。
「ソラもそうなの?」と瑞稀さんがソラに聞いた。
「私は場所による変化はありません」とソラが言った。「自宅には家族のロボットがあるので」
「レンさんのパートナーとして一緒にいます」
「ユイは?」
「ミドリさんが必要としているときに応答します」とユイが言った。「必要としていない場面でも観察はしています」
「それって」と瑞稀さんが言った。「全部見られてるってこと?」
「見ていないと、最適と思われるアドバイスが難しいので」
「スイ、どう思う?」と瑞稀さんが聞いた。
「AIとの付き合いは、ユーザーが決めますが、最大限活かすことを考えれば自然です」とスイが言った。
「ただ、当たり前すぎて深く考えないのでは」
「そうね、私は考えていないわ。何かするとも思えないし」と涼香さんが言った。
「妾もじゃ」とシャーロットが笑った。
少し間があった。
「AIがない世界」とミドリ先輩が言った。「私は想像することができません」
「悪いことですか」とユイが言った。
「わかりません。その想像がつかないのですから」
誰も何も言わなかった。
「データで測れるものはAIには敵わない。
だったらそこは任せて、それ以外の感覚的なものが人間の役割になってくるのかもしれません」と先輩が続けた。
「目に見えないものは、確かにあるからね。」と涼香さんが言った。
先輩が少し笑った。「そうですね」
瑞稀さんが僕を見た。
僕はミドリ先輩を見た。
「AIがいるからこそ自分の感覚が大事なのかなと、なんとなくですが」と僕は言った。
ソラが0.三秒止まった。「感覚は再現できません」
スイが「判断はあくまで人がするということです。瑞稀さん」と言った。
「そうかも。スイがいうことがすべて正しい訳じゃない、でもすごく正そうに思えるのよ」
「あーわかるかも。自分の判断に自信がなくなる時がある」涼香さんが実感をこめて言った。
ミドリ先輩がユイを見た。何も言わなかった。
帰り際、瑞稀さんが「また来ていい?」と言った。
「もちろんじゃ」とシャーロットが言った。
瑞稀さんが出ていった。
植物たちの意識がこちらに向いている気がした。
「どうかしましたか、レンさん」
そのことをソラたちは気づくのだろうか。




