共鳴する者達
街頭演説は駅前の広場だった。
大輔から場所を聞いたとき、シャーロットが「妾も行くのじゃ」と言った。
止める間もなかった。
大輔が開口一番に「お前は女好きだな」と言った。
「違います。シャーロットさんがいると僕らがぼやけます」
「一緒にいれば目立つだろ」
「その辺は臨機応変じゃ」とシャーロットが言った。
大輔が少し笑った。
それ以上は言わなかった。
——
ミドリ先輩と涼香さんは別行動だ。
「周囲の測定をしてきます」と先輩が言ったからだ。
「移動しながら基地局のようなものがないか探します」
「気をつけてください」と僕は言った。
先輩が少し止まった。
「はーい」涼香さんが元気に返事した。
——
広場には人が集まっていた。
スーツ姿の人が多かったが、若い人も混じっていた。
演説が始まる前から、なんとなく熱気があった。
「あそこにいる」と大輔が言った。
人混みの端に半田次郎がいた。サングラスをかけていた。どこをみているのかわからない。
「何をしているんですかね」
「わからない。でも何か操作しているように見えるな。」
シャーロットが「そうじゃの、サングラスで何か操作しておるの」と言った。
「なんでわかるんですか」
「なんとなくじゃ」
「それ、ただの憶測ですよね」
「僕が前を通りすぎてみますよ。向こうが気づいたら、こちらも気づいてことにします」
「2人は様子を見といてください」と伝えた。
「ああ」「わかったのじゃ」
三人で別々の方向から広場に入った。
僕は半田の前を何度か通り過ぎてみた。
特に気づいた様子は感じられなかった。
「気づいていないようですね」
「ああ」「そうじゃな、まったく動きがなかったのじゃ」
——
演説が始まった。
どんどん広場の熱気が増していくような感じがあった。
以前の集会を思い出した。
あのときと同じ感覚が来るかと思ったが、今日は少し違う気がした。
半田が誰かと会話を始めた、何か話している、AIか電話かわからない。
演説がスローガンを叫び出した。
「人の時代を終わらせるな」
「AIから社会を取り戻せ!」広場の空気が変わった気がした。
聴衆の心が動いていると感じる。
なんとなく、だけど。
「レン」と大輔が小声で言った。「今、感じたか」
「なんとなく」
シャーロットが「妾も感じたのじゃ」と小声で言った。
「半田とご対面しよう」大輔がそう言った。
「一緒に行きます」
「妾は涼香たちと合流するのじゃ」
——
「半田さん、こんにちは」
「夏目に、そっちは吉田か。どうしたこんなところで」
「半田さんこそ何をしてるんですか」
「最近人気があると聞いてな。様子を見にきたんだ」
「どうでしたか?僕はとても良かったと感じました」
「そうか。俺もそう思う。主催者の情熱は感じたな」
「気が合いそうですね、半田さん。次郎さんと呼んでも良いですか」
「好きにしろ。俺はもう行かなければならない。じゃあな」
半田が離れていった。
「レン、俺はちょっと半田を追ってく。また連絡する」
「はい」
大輔も消えていった。
「ソラ、次郎さんのことで気づいたことはある?」
「レンさんが演説が良かったと言った時、嬉しそうでした」
「そうだね。そんな感じはしたな」
「直接感想が聞けて嬉しかったのでしょう」
そんな会話をしているとミドリ先輩から連絡が来た。
「シャーロットと合流しました。レンくんはどうしていますか」
広場の端で落ち合った。
涼香さんが端末を見ていた。
「わかりました」と先輩が言った。
「周波数を照射している発信源があります。移動しながら測定したので場所も絞れています」
「基地局みたいなものですか」
「そう思います。ピンポイントで照射できる設計になっているようです」
涼香さんが「思っていたより広範囲に届いていたと思う」と言った。
「方向も計算すれば学校にも届くと思うわ」
「証拠として使えそうですか」ソラが聞いた。
「データとしては残っています。」とユイが言った。
「ただ、誰がやったかの証明にはまだなりません」
「次郎さんが操作していた可能性はある。妨害電波のようなものは出せますか」と僕は聞いた。
「広い範囲で妨害電波を出すと違法になるのですが、数メートルであれば大丈夫です」
「じゃあ次回、僕がその役をやりましょう」
誰も何も言わなかった。
シャーロットが「まあ、今日はよくやったのじゃ」と言った。
涼香さんと先輩が笑った。
「早く終わると良いですね」僕はそう呟いた。
「妾は楽しかったのじゃ」
「そうね、私もたまには良いかな。ドキドキしたし」
「帰りましょう」先輩がそう言った。




