私、今日、この国の王妃になりました。~平気で他者を傷つけるような者たちに幸せな未来はありませんでした~
「ご結婚おめでとうございますー!」
「ドレスとっても素敵ですよっ。最高です! ああ、もう、感動しますっ」
「お美しいです!」
「女神さまのようですわ! ああっ。好きですわ! こんなにも美しい女性、目にしたのは初めて! 最高ですわ!」
私は今日、この国の王妃となる。
「リリーは大人気だね」
「温かく見守ってもらえて安心したわ」
国王である彼ディセイト・ライン・ヴェルクスと結婚するからだ。
「そんなこと。心配ないよ。だってリリーは聡明だから。君を見て嫌な気分になる人なんて滅多にいないって」
――かつて私は別の男性と婚約していた。
だが彼は失礼なことばかり言ってくる人で。
ことあるごとに絡んできて。
しかもしまいには学生時代の女友達とがっつり浮気して。
そんな風に悪行を重ねていた彼なのに、ある時、平然と婚約破棄を言いわたしてきた。
「もしそういう人がいたとしたらその人に問題があるんだよ、きっと。前の婚約者さんみたいに」
「ディセイト……いつも励ましてくれてありがとう」
「事実を言っているだけだよ」
「思い返せばこれまでずっとそんな感じだったわね。私、いつも、あなたの言葉に励まされて歩んできた。今になって気づいたわ」
あの時はとても悲しかったし悔しさもあった。
でも今はもうそんなに気にしていない。
なぜなら彼が私を捨ててくれたからこそここへ至れたのだと理解できたから。
この幸せにたどり着くため、あの出来事は必要だったのだ。
……今はそう思えている。
ちなみに元婚約者の彼はというと、私との婚約を破棄した直後の週末に浮気相手だった女性と二人で旅行に出掛けその先でうっかり崖から転落し亡くなってしまったそうだ。
恐らくそれは誰も予想しなかった結末だろう。
彼の両親でさえそんな結末は想像していなかったはずだ。
あまりにもあっさりとした最期であった。
また、彼の死の瞬間を見てしまった女性は、その後毎晩悪夢にうなされるようになってしまったらしくて。寝不足の影響もあってか酷く体調を崩し、やがて死に至ってしまったそう。
彼女もまた非常にあっさりとした最期を迎えることとなったようだ。
平気で他者を傷つけるような者たちに幸せな未来はなかった。
「いつも支えてくれてありがとう、ディセイト」
「いえいえ」
過去の出来事はとうに過ぎ去ったもの。
だからいつまでもそれらに縛られている必要はない。
「本当は私があなたを支えなくちゃならないところなのにね」
「もちろん支えられてるよ?」
「えっ。あの……それは、さすがに、言いすぎじゃない? だって私何もできてないし……」
ここからはもう迷わない。
「君が傍にいてくれる、それだけでいいんだ」
ただ、生きよう。
今ここに在る幸せを護るために。
◆終わり◆




