ずっと一緒にいられる気がする、と言ってくれていたのは、一体何だったのでしょうね……。
『君となら、きっと、ずっと一緒にいられる気がするよ』
婚約者ディオッツは婚約が決まった日そんな風に言ってくれていた。
あれは学園を卒業する日だったと思うのだけれど。白くそびえ立つ校舎に囲まれた中庭で、作り物みたいに青い空を背景にして、彼は嬉しそうに微笑んでいた。
――なのに、関係は永遠ではなかった。
「ごめん、婚約は破棄ってことにするね」
卒業から一年も経たず、ディオッツはそんな言葉を口から出した。
「職場に君より素敵な女性がいるんだ。僕、彼女と結婚したいんだよ。一度そう思ったらもう彼女以外の女性なんてどうでもよくなっちゃって。だから、急でごめんだけど、君とはおしまいにするね」
穏やかな表情で告げられる言葉に心が凍りつく。どうしてこんなことになってしまったのだろう、と、後悔のような文が脳内を巡るけれど、答えらしい答えなんて思いつかない。いきなりのことで、衝撃が大きくて。胸の奥で何かが軋み崩れ落ちそうになっているような音がする。
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ディオッツとの婚約が破棄となり、以降、婚約希望を出してくれた男性数名と顔を合わせてみた。しかしなかなか気が合う人はおらず、話が順調に進むことはなくて。上手くいかないことに疲れてきた私は顔合わせを繰り返すことをやめて当面は自由に旅でもして生きようと思っていたのだが、旅立つ日の朝に王都行き馬車の乗り場で偶然出会ったリオティールという青年と話が弾み急激に仲良くなった。共通の趣味が幾つかあったということが話をするきっかけとなった。
旅は急遽中止に。彼と数回会って同じ時間を過ごしてみることにした――するととても楽しくて。彼と喋っている時は疲れることはなかったし、むしろ逆で、明るい気持ちになれていた。
その後話し合いを重ね彼と結婚を見据えて歩み出すこととなる。
こうして、私は、リオティールと生きていくこととなったのだった。
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今年は結婚三十周年。
子どもたちも大きくなり、自立して、今ではこの家にいるのは私とリオティールの二人だけ。常に賑やかだった家にもいつの間にか静けさが戻ってきた。あの騒がしさがもう懐かしい。
それでも、私たち夫婦の関係は変わっていない。
いや、もちろん、良い意味での変化はある。繋がりが深くなった、とか、家族としての意識が強まった、とか。けれども負の意味での変化は何もない。二人でいる時は大抵、出会った頃と同じように、趣味を共有したり笑える話をしたりして楽しく過ごしている。
ちなみにディオッツはというと、好きになった職場の女性が別の男性とあっさり結婚してしまったことでショックを受け心を病んでしまったそうだ。そして働けなくなってしまい退職。以降は実家で家業の手伝いを少しだけしながら生活しているそうだが、両親からは恥ずかしい息子だとか出来損ないだとか冷たい言葉をかけられるばかりだそうで、実家で暮らしているといってもそこに温かな居場所があるわけではないようである。
◆終わり◆




