私は知っている。貴方がどういう人であるか。だから驚きはしないわ。
私は知っている。
貴方がどういう人であるか。
だから驚きはしないわ。
婚約破棄、なんていう、重大なことをある日突然告げられたとしても。
思えば貴方は昔からそうだった。
要らなくなったものは切り捨てる。
何の躊躇いもなく。
ある意味、理にかなっているかもしれない。
けれど……見ているととても冷たい人に見える。
自分の人生において、必要か、否か。ずっと、それが貴方の価値観だったわね。必要なものは傍に置いておくけれど、そうでないものは置いておかない。要らないと判断したものを、情だけで、ずるずると傍に置いておくようなことはしない。良い意味でも、悪い意味でも、貴方ははっきりとしていた。間違いなく必要と判断できるものだけを手の内に入れながら生きていく、それが貴方の在り方、そう、貴方の生き方だった。
必要なもの、必要でないもの、その線引きにおいて、私は必要でないの方に入ったということなのでしょう?
だから切り捨てた。
婚約を破棄してでも関係を終わらせた。
ある意味良心的なのかもしれないわね。
要らなくなったものをいつまでも持っている人よりは。
でも、悲しくもあるわ。
貴方にとって私はもう要らない存在になってしまったのだと、明確に理解できてしまうから。
私は貴方のような人間ではないから、どうしても、もう少し優しくしてほしいとも思ってしまうの。でも、それが贅沢であることも理解している。切り捨てる時だって、少しくらい思いやりを持ってほしいと思ったけれど、それがなくきっぱりしているところが貴方そのものであるということだって分かっている。
だから、ね。
もう何も言うつもりはないわ。
そんなことをしても無意味だから。
貴方は貴方の道を歩いているだけ。
私は私の道を歩くだけ。
……そういうことなのでしょう?
私と貴方が手を取り合って歩む道は存在しなかった――悲しいことだけれど、それが現実――ここから先、私と貴方は、別々の道を行く。
そうね、でも、段々それがいいのかもとも思えてきたわ。
婚約破棄されて、切り捨てる言葉を投げられて、傷つくのはその瞬間だけ。
今は辛くともいずれその傷は癒える。
時という名の薬が存在するから。
こうして、今この瞬間痛む胸の傷だって、いずれはそれが癒やしてくれることでしょう。
私は知っている。
貴方がどういう人であるか。
だから驚きはしないわ。
婚約破棄、なんていう、重大なことをある日突然告げられたことも……それすらも糧として、明日へと歩み出す。
◆終わり◆




