孤独ではない、そう思えるだけで人は前を向いて生きていけるものなのです。
「君とは共には生きていかない! よって、婚約は破棄とする!」
三つ年上の婚約者ディベールはある日突然そんな風に宣言してきた。
……とあるお茶会の最中の出来事だった。
「え」
「これは絶対的な決定だ」
「さすがに急過ぎませんか?」
「知るか! そんなことどうでもいい。俺が決めたことは決めたことだ、それ以上でもそれ以下でもない」
ディベールは鋭い物言いで圧をかけてきて。
「君にはあれこれ言う権利はない」
そのまま関係を終了させた。
「ではな、さらばだ」
ディベールは勝ち誇ったような顔をしていた。が、第三者、お茶会参加者の人たちは冷たい目でディベールを見ていた。呆れている、というか、軽蔑している、というか。そんな面持ちでディベールを見つめていた。少なくともその人たちはディベールの味方ではない様子で、それゆえ私の心は救われた。
孤独ではない、そう思えるだけで人は前を向いて生きていける。
◆
あれから数年、私は親の紹介で知り合った良家の子息と結ばれ、夫となってくれたその人と二人で穏やかに幸せに暮らしている。
毎朝のティータイムは特に楽しい。
彼と共に過ごす静かでも温かな時間はとても愛おしいものだ。
この道を選んで良かったな、と、今は迷いなくそう思えている。
一方ディベールはというと。
あの後、路上で偶然知り合い惚れた女性に上手く乗せられて詐欺に遭ってしまい、社会的に終わったようだ。
◆終わり◆




