意外な理由で婚約破棄されましたが、それによって良き未来に出会うことができました!
それは突然のことだった。
「君は肌がくすんでいるな」
「そう、でしょうか……?」
「気づいていないのか」
「すみません、あまり考えてみたことがなく……」
婚約者ミンバーグからそんな風に若干不思議な話題をいきなり振られて。
「馬鹿が! 君はもっと自覚しろ! おかしいだろうが! 肌のくすみに気づいていないなど!」
戸惑っていると、激怒され。
「もういい! 君のような馬鹿の中の馬鹿、世話する気はない! 婚約は破棄だ!」
関係の終わりを鋭く宣言されてしまう。
こうしてミンバーグとの婚約は破棄となってしまったのだった。
◆
「……ということで、この成分を使いますと肌の深い部分にまで良い影響が及びます」
あの突然の婚約破棄から五年。
私は今、肌の研究者の一人として、講演会で国中を回っている。
忙しい毎日だけれど充実している。
だから、この仕事に就いたことを悔いてはいないし、むしろこの仕事を選んで良かったと心から思っているくらいだ。
「「「ありがとうございました!」」」
肌の研究の道へ進めたのはミンバーグが心ないことを言って婚約破棄してきたから。あれがきっかけとなって、肌というものに関心を持ち、この道へ足を踏み入れた。そう考えるとすれば、ミンバーグがかけてきた心ない言葉も無意味ではなかった。悪いこと、辛いこと、悲しいこと、そのすべてになんだかんだで価値があったのだと今は思える。
そして、今の私は、仕事とはまた異なる幸せも手に入れている。
「書類できました!」
「ありがとう」
講演会の手伝いをしてくれている助手の青年。
彼はいつも私の隣にいてくれて、協力し、寄り添ってくれている。
唯一無二のパートナーだ。
忙しい日々を乗り越えてゆけるのは彼がいるからというところも大きい。
いずれは結婚する予定でもある。
「この前のデータなんだけど……」
「言ってたやつですね?」
「ええ。あれどうなってる? もうまとめられたのかしら」
「できてますよ! 後は確認だけです」
「助かるわ。じゃあ次の講演までに確認するから。持ってきてもらってもいいかしら」
「あ、はい! もちろんです!」
彼とならきっと幸せになれる。
根拠はないがそんな気がする。
……なんて言ったら、笑われてしまうかもしれないけれど。
でも、今は彼との未来に希望を抱けているから、それだけでも悪いことではないと思う。
◆終わり◆




