優しい風が吹いている。~命を奪われかけましたが何とか生き延び幸せになれました~
優しい風が吹いている。
家の近くの崖の傍で。
婚約している相手である彼ラマンドと向かい合う。
「悪いがお前との婚約は破棄とさせてもらう」
ラマンドは冷淡な面持ちで宣言してきた。
「本気で……仰っているのですか?」
「分かっているさ。理解してもらえないであろうことくらい。だから今日はここを舞台としたんだ」
「舞台……?」
「ああ、そのままの意味だよ。ここは、最高の舞台だ」
そこまで言った、次の瞬間、ラマンドは急に突進してくる。
「っ……!?」
「あの世で元気でな!!」
ラマンドは突き飛ばそうとしてきた。
私は咄嗟に身体を右へずらす。
するとラマンドは勢いのままに前方へ突っ込んでいってしまい、動きを止めきれず、そのまま崖から落ちていった。
「う、わあああああ!!」
彼は思わぬ形でこの世を去った。
優しい風が吹いている。
もう私しかいないけれど。
自然の姿は変わらずそこに在る。
◆
あれから数年。
私は穏やかな幸せの中で生きている。
平凡な暮らしの中で知り合った木こりの息子である青年と結婚し、日々、楽しさを満喫しながら過ごせている。
なんてのことない普通の毎日。
けれどもとても楽しい。
ふとした瞬間に小さな喜びに出会えることにも強く愛しさを感じる。
優しい風が吹いている。
大切な人と歩みながら。
幸せに満ちた明日を信じ続ける。
◆終わり◆




