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乙女7

こちらで最終話になります

「マエリア辛くないか?」


私の騎士様はそう何度も聞かれた…ああ、そんなこと無いわだってだって…


意識が浮上する……目の前に、ル…ル…ルベル様!?…あらやだ…まただわ。まだ慣れなくていつも驚いてしまう。


昨夜もご一緒したんだわ…色々思い出してひとり赤面してしまう。そう…ついいつもの癖で言葉遣いがおかしくなってしまうけれど、ルベルと呼び捨てで呼んで欲しいとか…もっと砕けた言葉で話して欲しい…とお願いされていたんだったわ。


窓の隙間から洩れる朝日を浴びて、美しく輝く私だけの漆黒の獣…きゃあああ!


私が妄想を滾らせてベッドの上で体をモゾモゾと動かしてる気配を感じたのか…長くきらめく睫毛が揺れて漆黒の獣が目を覚ました…きゃあああ!


「…ん…マエリア、おはよう」


「ぉ…はよぅございま…」


ルベル様がちょっと目を眇めると、私の方へ顔を近付けた。


「言葉遣い…ほら言って…」


「っひ…あ、おはよ…う、ル……ルベル」


ルベルは蕩けるような笑みを浮かべた。


「おはよう俺の乙女…あ、もう乙女じゃなくなったかなぁ」


「っ!もうもうっ…ルベル!」


先日の婚姻の後からのアレコレを思い出して、恥ずかしくなってルベルの肩を押した。


ルベルは爽やかに笑いながら、私の攻撃をさらりとかわしてベッドから起き上がった。彼の顔が段々柔らかなモノから厳しい表情になる。


近衛騎士の顔だわ…ルベルの朝の支度を整えながら今日の段取りを頭の中で確認する。


今日は私がお勤めする最終日だ。


あの後ステファン=シガリーがどうなったのか…私は知らない。ルベルに聞こうと思ったこともあるけれど、私に隠そうとしていると感じて…私も気にしていないように振る舞っている。


きっと私には知られたくないのだ。だから私は知らない風を装ってルベルに接している。ルベルは穏やかで優しいけれど心の内に獣を飼っている…とハラシュリア様が仰っておられた。


良き妻、良き伴侶とは…ルベルが知られたくないと思うことに敢えて目を瞑るのも必要なことよ。


僅か12才のハラシュリア様にそう言われた。妻とは奥が深い…


私はルベルとの婚姻を機にメイド職を辞して、王宮近くの一軒家に新居を構えた。最初は王宮内の空き部屋にルベルと住んだらいいのでは?とフリデミング殿下からご提案を受けたけれどハラシュリア様が、新婚なのにそんな無粋な生活があるものかぁ~とかなんとか言われて…ルベルと相談した結果、街に借家を借りることしたのだ。


実はビジュリア家の義家族からも、一緒に住もうと誘われてはいる。なんでもビジュリア家は子供は三兄弟しかおらず、女っ気が無く寂しいのでマエリアに是非っ家に来て欲しいのよ~と義母様から一番熱心に誘われている。


ビジュリアの義両親は娘が欲しかったのだと散々言われた(愚痴られた)…おまけにルベルのお義兄様は軍の少将で婚姻する暇も無いくらいお忙しく、義弟はまだ学生の16才。唯一婚姻したルベルの嫁…私を娘のように構い倒したい…らしい。


ルベルが休みの時以外は私も新居に1人暮らしになって不用心だし、その時は伯爵家に泊まることをルベルとご家族に約束させられて…一応2人での借家住まいが許可された感じだった。でもビジュリア家の生活もそれほど心配していない…ルベルのご両親もご兄弟もお優しい方々だものね。


おまけに義父とお義兄様…このお二人が、一番グーテレオンド様に似ているのよ!ルベルより近寄り難くて、こうなんて言うのかしら?鋭利な刃のようにシュッとしていらして…たまに優しくお声かけ下さる感じが『グーデレ』の実写版なのよねぇ~ああ、ハラシュリア様に今日の義父と義兄様の漆黒の獣っぷりをご報告するのが楽しみになってしまったわ。


「おはよう、マエリア~今日で最後ね…でも遊びに来てよね!」


ハラシュリア様の執務室に入ると、ハラシュリア様は笑顔でそう挨拶をして下さった。本当に可愛くてお強くて優しい少女だわ。私がメイドを辞した後はシュリツピーア王国の王宮務めのメイドの方が側付きをして頂けることになったし…仕事の引継ぎも終わったし、準備は抜かりないわよね?


「マエリアさんがいなくなるの寂しいです~」


「マエリアさんっ…是非是非ルベル様のお兄様と弟様のご紹介を…」


新しく側つきになった方々はハラシュリア様が厳選して面接した真正サラジェだものね。ウフフ…ハラシュリア様と趣味の面でも仲良くしてくれそうで頼もしいわ。


カシュルお義兄様とハシュベルさん(義弟)をさりげなく皆様の前にお連れする計画を立てておきますわ。それから後は皆様の努力次第ね。


ハラシュリア様と共に王宮の廊下を歩く。メイドとして歩くのはこれが最後ね…フリデミング殿下の執務室の前に立つ方を見る。


近衛騎士…ルベル=ビジュリア卿…私の夫。彼の近衛騎士の姿をこんな風に見るのもこれが最後ね…


私の夫は今日も色気の駄々洩れの笑顔で


「おはようございます」


と言って私達サラジェの心をときめかせる漆黒の獣だった。


素敵ね、漆黒の獣様♡



エロ可愛いメイドさんと漆黒の獣のお話はこれにて完了です。ご読了ありがとうございました。

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