表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/284

第82話 今後


 『月下美刃』の連中に絡まれて返り討ちにした後。最初はギルドに運ぶつもりだったがそんなことしたら目立つのは確実だし、事情説明が面倒だと考えなおした。

 

 ゆえにおっちゃんに断って店の中に寝かしておくことにした。仮にもDランク冒険者が俺みたいなEランクに()()()()なんていい恥だ。連中には面子もあるし、今日の事は黙っていてくれるだろう。幸い目撃者もいないしな!!


 憂いも無くなったし。冒険者ギルドに査定の金額を聞きに行ったらが、やたらと神妙な顔をするエイダ嬢に応接室に通された。


 ◆


 〇冒険者ギルド応接室


「以前に当ギルドの受付嬢がシレンさんに対して非礼を働き、ご不快な思いをさせてしまいましたことを副ギルド長として、また当ギルド運営に携わるモノとして謝罪させて頂きます。誠に申し訳ございませんでした」


「私の勝手な思い込みで非礼を働きご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」


 シレンは応接室に通されると直ぐにエイダ嬢とミレット嬢から謝罪を受けた。今更とは思ったが、エイダもミレットも本心から謝罪していたように見受けられたことから謝罪を受け入れようとしたが、エイダの言葉は謝罪だけでは無かった。


「私は失態の責任として半年間の減給。ミレットには一週間の謹慎を命じます。それで当ギルドの失態に対しての矛を収めて頂けませんか?」

 

 これにはさすがに驚いてしまう。レンジとしてはどうでもいいが、この処罰が実行されればレンジの評判が更に悪くなるのは確実だ。レンジとしては健全な関係が築ければいいのであって、不必要に敵を作りたいわけでも受付嬢を攻撃したいわけでもないのだ。故にすぐに撤回を申し出る。


「そこまでしていただく必要はありません。こうしてキチンと謝罪していただければペナルティなどは望みません。今後も健全な関係を築いていきましょう」


 エイダ嬢の提案を受け入れれば、その分の負担が他の受付嬢に回り、結果的にレンジが恨まれるのは勘弁してほしい。


 それにギルドがこの大陸最大の組織であるのは変わりはない。これ以上はやりすぎだと判断したレンジは直ぐに手打ち行うことにした。非公式と言えどギルドの重鎮がEランク冒険者に謝罪までしたのだ、流石にこれ以上求めるのはやりすぎだった。レンジ個人としてはミレットが謝罪さえすればあの件は水に流すつもりだったからだ。 


 謝罪を受け入れた際のエイダ嬢とミレット嬢の安堵した表情が嫌に気になったが、下手に追及する事はしなかった。


 その後、レンジの査定金額が提示と(ちょっとぶっ飛んだ金額!)Dランク昇格が告げられた。査定金額も文句が無かったので、換金をお願いして大量の白金貨をアイテムボックスに収めるとやけに丁寧なギルド職員に見守られ? レンジとクレアはファーチェスの拠点に帰還した。


 ◆

 

 〇ファーチェス拠点

 【殲滅者】シレン


「じゃあミイナとかいう連中からジョブやダンジョンについて色々教えて貰えたって事だな?」


「はいっ。この近辺のダンジョンの構造や出現するモンスターについて詳しく教えて貰えました。あとはジョブのシナジー?についても色々と教えて貰えましたよ!」


 教わった事を嬉しそうに報告してくれた。


 現在はクレアから今回の冒険についての話を詳しく聞いているところだ。それを聞いて思うのはやはり≪月下美刃≫はクレアを引き抜きたいのだろう。でなければダンジョンの情報やそこに生息するモンスターの情報などを部外者にタダでぺらぺらと話すはずが無いからだ。少しでも印象を良くしておきたい意図は明らかだ。


 それとは別に今回の冒険で『錬金術師』のレベルは12になり。新たな種族【ヴァナディース】とやらに進化したようだ。


 ◆◆

 〇【ヴァナディース】

 高潔な女性の騎士が死後、天に召され天使に転生したと伝えられているが、実際には天使ではなく、英霊や吸血鬼などの不死種に近い。生前の武勇は一切損なわれてはおらず、魔法に対しても高い適性を持つ。


 


(【錬金術師】の性能を発揮するにはどうもしっくりこないが、自分の考えた末なら俺から何か言う気は無い)


 その概要を解析で調べて出した結論はそれだ。だが系統外トップジョブの例もある。それが間違っているとは誰も言いきれない。ひょっとしたらとんでもない進化を遂げる可能性だってあるからだ。


(種族の進化には進化に至るまでの行動が関わっているのは間違いないだろう。敢えてわき道に逸れることがどの様な結果を生むのかは想像もつかないしな)


 そう自分で結論付けた。


「それと・・・・。ミイナさん達から『月下美刃』に加入しないか? とお誘いを受けました」


 思案していた俺にクレアが申し訳なさそうな声でそう告げてくる。俺としては「やはり」という気持ちが強いが気にしてはいない。引き抜きはどんな世界でも日常茶飯事だ。逆にそれだけクレアが優秀という事だ、だからクレアが申し訳なさそうな顔をする必要はないんだが。


(やはりか。まぁ予想通りだな! 実際のところレベルを考慮しても、クレアの戦闘技術はかなり高い。このまま成長していけば少なくともAランクには到達できる。少しでも見る目があればクレアの才能に気付く。将来有望なものを勧誘するのは当然だろうな)


 それにクランやパーティーを組んでるのに引き抜くならばともかく。クレアは実質的にフリーの立場だ。しがらみも無いなら誰かに手を出される前に、早いうちから唾を付けておく方が良いと考えるのは間違いではない。


「ふむ! で、クレアはどうしたいんだ? 俺との関係はあくまで成り行きだ。実力派のクランに所属したいのなら俺は構わんぞ?」


「いえ、確かにお誘いを受けた時にまったく迷わなかったと言えば嘘になります。でも既にシレン様と一緒に行動すると宣言して、そう決めていたのに良い話だからと前言を翻して飛びつくのは、私の信義に反します」


 即答だった。しかも断った理由も実に俺好みといえる。


(信義・・・ね。頑固と言えばそうかもしれんが・・・・。まぁ嫌いじゃない!!)


 少なくとも、おいしい話しにホイホイ飛びつくような輩よりもはるかに好ましい。そういった輩はもっとうまい話しがあればすぐに飛びつくので信用できないからな。


「クレアの考えは理解した。ではこれより正式にコンビを組もう」


「はい、わかりました。これからよろしくお願いします!!」


 クレアは花が咲いたような満面の笑みで俺の飾り気のない言葉に応えてくれた。

少なくとも、そこには悪意は感じ取れない。俺を信じてくれたように感じ取った、ならばその信には応えねばならんだろう。


(ここまで来るのにずいぶん遠回りをした気がするが。まぁ歩む速度は人それぞれだ)


 物語だと序盤にチートやハーレムといった展開に発展するが、現実はそこまで甘くないという事だろう。


「コンビを組むとなったらこれからは今迄みたいに甘くせず、ビシビシと厳しく行くからな!! 付いてこれないなら放り出すぞ?」


 冗談交じりに敢えて厳しく伝えておく。


 今更だが俺の望みはソロ、もしくは数人でAランクダンジョン深部の探索できる実力を持つことだ。甘い覚悟で心が折れて、途中で足を引っ張られるのは勘弁だ。無論、厳しくする分の見返りは用意するつもりではあるがね。


「望むところです。先の『月下美刃』と達成した依頼の際は正直、安全策をとりすぎて温く感じていました。リスクを小さくするために、またレベルを上げるために安全策を取ることは否定しませんが。あれでは強敵と戦う際に使い物になりません!! 弱い敵とばかり戦い強者と戦わない戦術は心を弱くし、いざ立ち向かう際の勇気を損ないます」


 クレアはそう憤っているが、安全策を取る『月下美刃』に考えは間違っていない。しかし、クレアのその考え方は俺の考えに近い。


 MMOでも強者に引っ付いてパワーレベリングをした者は。ステータスは兎も角、PSプレイヤースキルが伴わず足を引っ張ることがある。

 技量が無くてもステータスはあるので、弱い敵は簡単に倒せてしまう。それ故に自分の実力を勘違いして増長する場合も多い。

 そう言った手合いは得てしてレイド戦やボス戦でお荷物になるケースが多い。

強敵と戦ったことが無い故、苦戦を知らず。ボスとの立ち回りを知らないため無鉄砲に行動し。周囲に迷惑を掛けるのが大半だ。


 まぁ死んでもやり直せるゲームと違って、これは現実だ。慎重に慎重を期して安全重視なのは正しい行動だろう。 無謀な行動で自分が死ぬなら自業自得、だが周囲まで巻き込むのは論外だ。

 おそらくは俺やクレアの考え方が少数派なのは間違いないだろう。否定されてもこのやり方を改める気は無いがね。


 クレアが今後どうしたいのかまではわからんが。俺は少なくとも冒険者として大成したいわけでも、世界最強になりたいわけでもない。

 俺が強さを求めるのは、現時点では母を治療するため。正確には治療できるアイテムを手に入れるためAランク以上の迷宮を探索するための手段であって。強くなるのが目的ではない。


 まぁ変貌した地球で生き抜くためのアドバンテージを得る為、といった理由も無いわけではないし否定もしない。今の地球は安全圏さえ不確かな魔境になっている。ダンジョンによる異界化も進んでいるはずなので、都市部でも危険といえるだろう。


「ならば明日は朝から探索。明後日はいよいよ大規模なクエストだ。だがこのクエストは期限が三日ある。コチラの時間で約10日は準備に当てられるわけだ。しかし、初めのうちは手出しをする気は無いが、余裕をもって現地入りする必要がある。どのような不測の事態が起こるかわからないからな実質的にはコチラでの準備期間は正味4日がいいところだ」


 クレアの目は少し躊躇いを宿していたが、俺の言葉に頷いてくれた。おそらく本音は都民を少しでも助ける為、犠牲を少なくするために最初から介入したいのだろう。


 しかし、俺は最初から介入するリスクとデメリットを説明し。クレアに納得してもらった。

正確に言うと俺たちの今後と、地球の今後、正確には日本の今後を俺なりの予想を踏まえた上で丁寧に話し、自分で選択してもらった。


 『無辜の民衆を守りたい』クレアのこの思いを否定する気も、甘い考えだと貶す気も一切ない。人として当然だ。むしろこの場合、助けられるかもしれない力を持っていながら平然と見殺しにする俺が狂っているんだろう。第三者から見てもそう評するはずだ。


 だが俺としてはそんなこと知ったこっちゃない。確かに俺は助けられる力を持っているかもしれない。しかし、今回の一件は俺の責任の範疇を遥かに超えている。

 政治家や国防軍のトップクラスが負うべき責任であり。何の責任も権限も無い、ただの民間人である俺にその重責を負わせること自体がおかしい。


 もし俺が国防軍に任官していたと仮定し。それから進化やジョブで強くなり、上官から『国家を守るために力を尽くせ、命を賭けろ!』と命令されれば納得は出来ないが、理解はできる。

 だが現実として俺は一般人に過ぎない。他人から「あ~だ、こ~だ」と言われたところで『あ、そう! だからなに?』が偽らざる本音だ。むしろ、被害を少なくするべく動いている分、まだマシな類だろう。・・・・・自分で言ってはいけないだろうがな!!


「では目標として、クレアは【錬金術師】のカンストと上級職の獲得、それと出来れば次の進化に漕ぎつけたい。俺は【殲滅者】のカンストと【殲滅王】の条件達成に向けて、討伐や採取による素材収集ってところだな。ああ、それと【錬金術師】と【司祭】、【魔女】の上級職の条件は知ってるよな?」


 このクエストでクレアの【錬金術師】は間違いなくカンストする。だとしたらジョブに就いておかないと得られるリソースを無駄にすることになる。


「はい。アイリスから聞いてあります」


「ならばいい。クエストに挑む前に全てのジョブに就けるだけついておいてくれ。おそらく今回のクエストで一つか二つはカンストするはずだ。ジョブを効率よく切り替えないと、経験値がもったいないからな。ジョブの切り替えは使い捨てのジョブクリスタルが手持ちにある。前もって渡しておくから問題ない」


 そう言いながらクリスタルをクレアに渡す。


 このシステムでジョブを切り替えるには街の冒険者ギルドや教会にあるクリスタルに触れるか。ジョブクリスタルを使うしかない。

 手のひらサイズのジョブクリスタルの方が一見、便利に思うかもしれないが。こちらは前以って就いたジョブしか切り替えが出来ないという難点がある。結構、値も張るしな。なので上級職に就けるなら経験値の無駄を省くためにも前もって就いておいた方が効率がイイ。


 それを言うならトップジョブに至れず、経験値を無駄にするであろう俺が言っても説得力が無いが・・・・いや、逆にあるかもしれんな。


(まだクレアには伝えていないが。これならば事前に伝えておいた方が良いかもしれんな)


 ずっと言うべきかどうか迷っていたが、やはり伝えておこうと決心した。


 民衆を見殺し(見殺しでは無いが)にする策をクレアは完全に納得してないのは明らかだ。クレアとの関係を良好にするためにも悪くない提案のはずだ。


「あの、・・・な。クレア、ちょっと聞いて欲しい提案があるんだが?」


 珍しく言い淀む俺を、クレアは子首を傾げながらも「どうしたんですか?」とばかりに俺を見つめてくる。


「俺の予定としては東京クエストのあと、USNAで発生するクエストを受けるつもりだった」


「はい、それは前に聞きました。何か変更があるのですか?」


 俺は軽く頷くと、予定の変更にする旨とその理由を伝えた。


「東京クエストの後、大亜連で発生するクエストを攻略。そのまま新ソビエト連邦。東西EUへと渡り、転移門でUSNAへ転移。この大規模クエスト全てを俺たちの手で攻略したいっ」


 この大幅な予定変更と。俺のBAKAGETA提案に目を大きく見開きながらも嬉しそうな顔で、満面の笑みでクレアは頷いてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ