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F!くえすとっ!  作者: あひる亭桃羽
ニシノ村の秘宝
9/55

09

顔は、確かにさっきまでの老人の顔。

しかし、体つきがまったく違う。

筋肉という筋肉が膨れ上がり、腕なんて丸太のようだ。

「ワシはもう何年齢を重ねたかわからぬほど長生きをしての。いつしかゴブリンキングと呼ばれるようになったのじゃ」

爪の一本一本が刃のように光る。

口から、牙が覗いている。

「さぁ、始めようかの」

キングはゆっくりと動き始める。

「ぬんっ!」

ササグアは両手を突き出して呪文を唱えた。

キングに炎の束が直撃する。

表面を多少焦がした程度。

効いてはいないようだ。

続けざまに印を切り、両手を突き出す。

今度は氷の矢がキングに突き刺さった。

「この程度か…」

キングが腕を振る。

ガードしたが、すごい力で壁に叩きつけられた。

身体全体に痛みが走る。

「ぐあ!」

「サグアさん!」

イパスルは聖法をかけようとするが、あっさり引き離された。

「サービスは一度きりじゃ。お嬢ちゃんは順番までおとなしくしておれ」

イパスルは恐怖で抵抗すらできなかった。

「さて魔法士、もう終わりかの?」

キングがサグアの頭をつかみ、力を徐々に入れていく。

「ナメるな!」

サグアはその二の腕あたりを掴むと、呪文を唱えた。


キングの腕が破裂する。


さっき、グールの頭を飛ばしたり腹に穴を開けた技術だ。

「ほう、お前さんは近接戦闘の方が得意なのか?」

「次は頭を飛ばしてやるよ」

「そうとわかってみすみすやられるバカもいまい」

キングはサグアを蹴り飛ばして、己との距離をあけた。

片腕を失っているのに、痛みを感じている素振りがない。

「さぁ、楽にしてやろうかの」

キングがサグアに近づく。

サグアは痛みをこらえるふりをしながら、右手人差し指に魔力を集中させる。

射程距離に入ってきた!

今だ!!!!

人差し指を、先程吹き飛ばした腕の傷口に向けて魔力を放出させる。

一点集中。

イメージは、鈍器のようなダメージじゃなく、槍の様に貫く力だ。

キングの傷口から肩を抜け、天井で破裂音がする。

「グァッ!」

キングが傷口を抑えなが少し後ずさる。

どうやら効いた様だ。

「ま、魔法士…、なかなか器用な事をするの」

キングがサグアを見据える。

傷口からは後から後から血が溢れ出している。

「ここは一旦引くか。これはお前さんに油断したワシの戒めじゃ」

キングは傷口を抑えながら通路の先に消えていく。

一瞬、追う様な仕草をしたが、その場にへたり込んだサグア。

正直、引いてくれて助かった。

あのまま続いたらタダでは済まなかっただろう。

イパスルの聖法を受けながら、そっとため息をついた。



「ジェネラルホーク様、奴らは油断なりませんぞ。まさかこの様な怪我を負わされるとは思ってもみませんでした」

「ははは、楽しくなって来たではないか。貴様にもう一度チャンスをくれてやろう」

ジェネラルホークはゴブリンキングの首筋に一本の羽根を刺した。

キングは、上から糸でつられた様にビクッと背筋をのばす。

「グゥゥゥゥ…アァァァァガァァァァ!!!!」

無くしたはずの腕が、体液を撒き散らしながら再生する。

「ゴブリンキングよ、行け」

命令を受けたキングは、また暗闇に消えて行く。

後には、ジェネラルホークの愉快そうな笑い声だけが残った。

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