09
顔は、確かにさっきまでの老人の顔。
しかし、体つきがまったく違う。
筋肉という筋肉が膨れ上がり、腕なんて丸太のようだ。
「ワシはもう何年齢を重ねたかわからぬほど長生きをしての。いつしかゴブリンキングと呼ばれるようになったのじゃ」
爪の一本一本が刃のように光る。
口から、牙が覗いている。
「さぁ、始めようかの」
キングはゆっくりと動き始める。
「ぬんっ!」
ササグアは両手を突き出して呪文を唱えた。
キングに炎の束が直撃する。
表面を多少焦がした程度。
効いてはいないようだ。
続けざまに印を切り、両手を突き出す。
今度は氷の矢がキングに突き刺さった。
「この程度か…」
キングが腕を振る。
ガードしたが、すごい力で壁に叩きつけられた。
身体全体に痛みが走る。
「ぐあ!」
「サグアさん!」
イパスルは聖法をかけようとするが、あっさり引き離された。
「サービスは一度きりじゃ。お嬢ちゃんは順番までおとなしくしておれ」
イパスルは恐怖で抵抗すらできなかった。
「さて魔法士、もう終わりかの?」
キングがサグアの頭をつかみ、力を徐々に入れていく。
「ナメるな!」
サグアはその二の腕あたりを掴むと、呪文を唱えた。
キングの腕が破裂する。
さっき、グールの頭を飛ばしたり腹に穴を開けた技術だ。
「ほう、お前さんは近接戦闘の方が得意なのか?」
「次は頭を飛ばしてやるよ」
「そうとわかってみすみすやられるバカもいまい」
キングはサグアを蹴り飛ばして、己との距離をあけた。
片腕を失っているのに、痛みを感じている素振りがない。
「さぁ、楽にしてやろうかの」
キングがサグアに近づく。
サグアは痛みをこらえるふりをしながら、右手人差し指に魔力を集中させる。
射程距離に入ってきた!
今だ!!!!
人差し指を、先程吹き飛ばした腕の傷口に向けて魔力を放出させる。
一点集中。
イメージは、鈍器のようなダメージじゃなく、槍の様に貫く力だ。
キングの傷口から肩を抜け、天井で破裂音がする。
「グァッ!」
キングが傷口を抑えなが少し後ずさる。
どうやら効いた様だ。
「ま、魔法士…、なかなか器用な事をするの」
キングがサグアを見据える。
傷口からは後から後から血が溢れ出している。
「ここは一旦引くか。これはお前さんに油断したワシの戒めじゃ」
キングは傷口を抑えながら通路の先に消えていく。
一瞬、追う様な仕草をしたが、その場にへたり込んだサグア。
正直、引いてくれて助かった。
あのまま続いたらタダでは済まなかっただろう。
イパスルの聖法を受けながら、そっとため息をついた。
「ジェネラルホーク様、奴らは油断なりませんぞ。まさかこの様な怪我を負わされるとは思ってもみませんでした」
「ははは、楽しくなって来たではないか。貴様にもう一度チャンスをくれてやろう」
ジェネラルホークはゴブリンキングの首筋に一本の羽根を刺した。
キングは、上から糸でつられた様にビクッと背筋をのばす。
「グゥゥゥゥ…アァァァァガァァァァ!!!!」
無くしたはずの腕が、体液を撒き散らしながら再生する。
「ゴブリンキングよ、行け」
命令を受けたキングは、また暗闇に消えて行く。
後には、ジェネラルホークの愉快そうな笑い声だけが残った。




