↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/19

19 : 帰路と第一王子

魔物を倒しつつ、有用なアイテムを拾い、そして森でさらに一泊をして帰路へとつきました。


フローラのリュックはこまごまとしたアイテムでいっぱいになり、また聖女に関係のないアクセサリー類もいくつか整いました。


そのうちの一つが群青のヘアゴムです。


効果は水魔法に対する態勢アップのみですが、ゲームでは二十五パーセントも敵の攻撃を減らすことができます。


これは、この後に待っている学園行事で使いどころがあるものです。


また、フローラの髪も伸びてきたので丁度よかったというのもあります。


太陽はまだ高く昼を過ぎたころ、王都の門まで戻ってくることができました。


出たときと同じように素通りでしたが聖女が無事に帰ってきたことにホッとした顔をしたのがわかります。


『あとは真っすぐに寮へと戻って問題ありませんが、フローラは何かしたいことがありますか?』


小さく首を横に振ったフローラは軽く肩をすくめました。


疲れた、ということなのでしょう。


学園の中へと戻り、そのまま寮への道を歩いているとき金の髪を輝かせた第一王子のレクスハルトがフローラに気づきました。


明らかにこっちに向かってきています。


今までなら逃げろと言っていましたし、フローラも何も言わずに背を向けて逃げていたでしょう。


他の令嬢からやっかみを買う方が怖いので。


しかし、フローラはレクスハルトの方をジッと見つめて来るのを待っているように見えます。


『逃げないのですか?』


私が聞くとわずかに口を開いてフローラは答えました。


「ちゃんと向き合うことにする」


やはり、ラティヌから聞いた話には思うところがあったようです。


私が何かを指図しなくても自分の頭で動くようになったフローラは素直に嬉しいのですが、どこか寂しさも感じます。


『わかりました』


なら、今の私にできることはでしゃばらずに静かに控えていることでしょう。


そもそも、これはフローラの人生なのですから。


「やぁ、聖女フローラ。今日は逃げないでくれて助かったよ」


声を張らなくてもとどく距離までくると、レクスハルトが爽やかな笑みを浮かべました。


「フローラでいい」


フローラの変化を感じ取ったのか目をかすかに見開いたレクスハルトは、次いで私の方をしっかりと見ました。


「フローラの後ろの・・・名前を聞いても?」


レクスハルトの言葉にフローラが肩を跳ねさせました。


「見えてるの?」


「うん、前からね」


『レーコです』


「レーコか。知っているいるかもしれないが、一応。私の名前はレクスハルト・ロルホ。この国の第一王子だ。よろしく」


私がペコリと会釈をすると、手を上げて礼は不要だと伝えてきた。


「もしかして、レクスハルトはレーコのことが聞きたかったの?」


「ああ、そうだよ。市井から誕生した当代の聖女、その後ろに黒いモヤが引っ付いていたから、この国の王族としても知っておく必要があると考えていたんだ」


「ちょっと、待って。黒いモヤって何のこと?」


「レーコのことだよ。だから、今日フローラと会ってレーコの姿がハッキリと見えたとき、さしもの私でも少し驚いたんだ。しかも会話までできるなんてね」


『どうして、一か月待ったのでしょうか?』


今まで、レクスハルトが休日に学園内を散策しているという噂がたったことはありません。


また、平日も教室内で声をかければフローラが応じる可能性はあったわけでう。


それなのにも関わらず、今までアクションを取ってこなかったのは不自然です。


「緊急性がなかったからね。でも、今回は違う。フローラが王都を出てから、その日のうちに帰ってこなかった。もし、聖女に何かあったとしたら問題になる。だから、なんとか時間を作って一度学園の方に足を運んだわけだよ」


そう答えて、今度は私の返答を待ってきました。

その様子は、納得したかい、とでも聞いてるようです。


「ありがとうございます」


「ひとまず無事に戻ってこれたようで良かった。これなら、明日に予定されていた聖女捜索の必要はなさそうだね」


聖女、捜索?


フローラが私の方を見ました。


知っていたのか、と目で訴えています。


私は首を横に振りました。


知っているわけがありません。


ゲームでは主人公以外のキャラを動かすことはありませんでしたし、そんな話一度たりとも出てきてないはずです。


「おや、何を驚いているんだい? 聖女が死んだとなれば、ことはこの国の問題だけではなくなってくる。注意をするのは自然だと思うのだけれど」


「もしかして、私のあとをずっと付いてきたの?」


いえ、それはないはずです。


もしそうなら、捜索をする必要もありませんから。


「いや、それはしないようにと教会から言われているからね。ただ、街中で見かけたり、街の外に出た場合に報告が来るようにはなっている」


少しひいた顔をしたフローラに私はフォローの言葉を投げかけようとしてやめました。


さすがに、私がいつも後ろに居るのだから変わらないよね、はデリカシーに欠けます。


しかし、誰かに私の声が聞こえるようになったとすると面倒です。


ゲーム的な、ある意味では未来予知のような話も好き勝手にできたわけですが、今はそうはいきません。

レクスハルトルートにおける王族の秘密なども、下手に喋ればなぜ知っているのかという問題になってしまいます。


ただ門番の人は私は見えていなかったようですし、黒いモヤとしてでも私を感知できていたのがレクスハルトだけだとすると、何か見える人とそうでない人に違いがあるのでしょうか。


バーラにも見えるようになったら、と思うと悪寒がします。


とりあえず、固まっているフローラに何かを言いましょう。


『フローラ。そこまで悪いことばかりでもありませんよ。今回森で捕らわれた場合でも助けに来てくれたというのですから』


言外に、私は何もできない、と伝えます。

歯がゆい思いですが、背後霊なので仕方がありません。


レクスハルトは何を思ったのか、私の方を見てウインクをしました。


アラサーである私が十四歳に対してトキメクというと少し犯罪の匂いもします。

ただ、許してほしいです。

私はそもそも、この乙女ゲームのファンだったのです。


「レーコの言うことはもっともだね。次からは、せめて私にだけでもどこへ行くかを教えてほしい」


心配の要素はあるのでしょう。

ゲームにおけるレクスハルトは年相応の子供っぽさはありつつも、基本的にはオトナで冷静、まさに典型的な博愛主義の王子様キャラでしたから。


ただし王族という存在が現実になった今、その通りに受けとるのは危険です。


初代聖女に魔王など、人に関してはゲーム通りではないと学びました。


それにレクスハルトではなく、宰相の息子でありレクスハルトの右腕でもあるクサラ・ルーガンは聖女を王家か、少なくともロルホ王国に取り込もうとする勢力だったはずです。


クサラルートでは親からレクスハルトとフローラをくっつけるようにという、なんとも下衆な指示を受けたクサラがフローラとの接触により、だんだんとフローラに惹かれていくというのが大まかなストーリーです。


そして、聖女の血を王家に引き込みたい、少なくとも聖女を国内に引き留めたいというのは王族も持っている思想でしょう。


なにせ、聖女がいるだけで国民からの指示を取れますし、教会との折衝もこの上なく楽になります。


ただ、ここはフローラに任せています。


レクスハルトに報告するとなれば、それだけレクスハルトとの距離も近くなります。


言うか言わないかを迷って、それでも口にすることにしました。


『フローラ。別に第一王子に報告しなくとも、他の人でもいいのですよ』


いざってときの助けは確かにい身分が高い人の方がいいです。

しかし、教会には初代聖女の武功にあやかって、教会騎士団がいますし、例えばマクナード商会の御曹司であるデュランならお金をはたいて冒険者を雇うこともしてくれるでしょう。


「まぁ、その通りだね。私以外の人にでも報告してくれると助かるよ」


レクスハルトは気分を害した様子もなく肯定しました。


「それでは、フローラ。そしてレーコ。また明日学校で」


そして、来た時と同じように爽やかな笑みで去っていきました。


見えなくなったところで、フローラはポツリと呟きます。


「苦手、かも」

読んでいただきありがとうございます!

皆さまの応援が励みになりますので、

よろしければブクマや下の☆からの評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。