第9話.一番良いキャラバン?
「あら?あらあら?さっきの初心者ちゃんじゃな〜い、どうしたの?」
キャラバンへ向かうと先ほどの女性が立っていた。
「仕方ないから、あんたらのキャラバンに入ることにした、入るからには絶対優勝だ!」
それなりに啖呵を切ったつもりだったが軽く受け流される。
「大丈夫よ?今回の御前試合は乱戦形式で、一番目立ったり武功を挙げた人に貴族たちが報酬を与えるの、私たちが一番得意な部分なのよ」
「まさかあんたらの団長が引っかき回すだけとかじゃないよね?」
「それはないわ?私とリヒトは闘技場が近くなったら荷馬車から出れなくなっちゃうから、一緒に出場するのはペレシアちゃん達よ」
ペレシア?どうやら四人目の仲間らしい。
「まだ顔も何もわからないんだけど…」
そう言うと「あら、たしかに?」と言って荷馬車の中へ招かれると一人の冒険者が拘束されていた。
「てめぇっ!離せっ俺はそんな話なら入らん!!」
「頼む…!!冒険者不在なんだぁ!」
ルイスが荷馬車へ入って来たのに気付くと
「おぉ!さっきの少年!入る気になったか!?」
「まぁ一応…」
ルイスがそう言うと拘束されていた冒険者は即座に逃げ出した。
「ああやって捕まえるから話聞いてくれないんだよ」
そう言われるが団長は悪びれることも無く堂々としている。
「協会で絶対に勝てるから話聞いてくれって言ったら付いてきたんだぞ?それが話聞いたらアレだぜ」
「なぁにを話したのよ?」
「飛んで空中から降りてからジェシーの挑発魔法で一騎当千作戦」
「それは無理よ…あたしは場外だし…」
「いけると思ったんだがなぁ?それより少年!入ってくれるのかっ!」
「……俺はその作戦無理だからね?」
ルイスは胃がキリキリする感覚を覚えながら冒険証を渡す。
「冒険者ルイスか、登録は去年…いや一昨年か…銅二級?結構実績あるなっ!」
「私にも見せて?……16歳じゃないの!見えな〜い!可愛い~!」
「ぐっ…」
「確かに、12歳くらいって言われても疑わんなっ!」
ルイスの多感な情緒がかき乱されるのを感じたので強めに切り出す。
「それで!?もう2人はどこいってるの!早くバハラ祭行きたいんだけど!?」
そう言われた二人は、なるほど?と言った顔をすると「ペレシア?この子なら先に挨拶くらい良いんじゃない?」と言って荷馬車の中にある防具立てに話しかける。
「ソうダな」
「!?!?」
奇妙なマスクを付けた皮装備が動き出しルイスの腰が抜ける。
「はジめまシてペレしアだ…マすク取りたい」
「いいぞ~?」
なんだ!なにが起きてる!
「マスク取るって!?そもそもなんかおかしいぞ?!」
ペレシアと名乗る物がマスクを取る。
「どうカ?少々驚かせたか」
「ほ…ね…」と言ってルイスは卒倒した。
「あ~あ?気絶しちまったわ」
「やはり驚かせたか…この少年の様になるから最初から姿を見せておかないか?」
ペレシアはカタカタと音を鳴らしながら伸びているルイスへ布に乗せる。
「スケルトンが仲間です職のがまずいだろぉ、積み荷確認の時どうすれば良いんだっ!」
「そうだろうか?私は悪いスケルトンじゃないんだが…」
「そうよねぇ?」
次にルイスが目覚めるのは街道へ入った頃だった。
「ンはっ!」
「おっ?起きたな」
「なんだあのスケルトン!喋ってるし!」
気が付くとすぐに団長を問い詰める。
後方を見ると、ジェシーとペレシアがなにやら裁縫している。
「そこもってね〜」
「こうか?もう少し上では?」
白く細く傷一つ無い指で手伝っている。
「なんでスケルトン!」
「落ち着けって、肉が付いてるか付いてないかの差だろぉ?」
「ペレシアちゃんはねぇ、なにか呪い的なもので〜お肉がなくなっちゃったのよねぇ?」
布を縫いながらペレシアへ「ね?」と確認する。
「ワタシ自身あまり覚えていないのだが、村が燃えて死んだはずだが、次の記憶ではこの姿だ」
あまりにも普通に会話する様子にルイスが困惑する。
(こ…このキャラバンはこれが普通なのか………まぁアイツも似たようなもんか…)と思って上を見ると浮かびながら一連の流れを至極楽しそーーに見ている見知った幽霊が居る。
「どうすっか…副団長に聞いてみようか?キール?」
そう言うと荷馬車を引きながら中を覗いてくる。
「どうするも…結局目立たないといけないなら荷台の虫は使うとしてルイス君には少なくとも何人か参加者を倒してもらわないと貴族たちは喜ばないだろう」
「虫」と聞いたルイスは露骨に嫌な顔をした。
「え、虫?荷台の中身が虫?…嫌だけど?虫触るとか投げつけるとか」
「女々しい奴め…しかーし!十分に期待しておけ?あれを見たらそんなこと言ってられないぞ?」
「あぁそうなんだぁ……冒険者とか俺に倒せるのかな?」
そう言うと上から傭兵が降りてきてルイスへ(喋るな)のポーズをする。
「……思ったんだが別にお前が反応しなければコイツらに聞こえないんだから、俺は喋って良くないか?」
「確かに」
一同は「?」とルイスを見た。
「なんだどうかしたか?良い作戦でも思い付いたかっ!」
「んんぅと?」
傭兵は(コイツ…)と言いたげな顔の後「ひらめいたわ」と言ってルイスに近寄る。
「全部復唱しろ」
「「魔法で…水を…出して…虹を作る?」」
ギクシャク怪しげな声色でルイスは言葉を紡ぐ。
「あらー!良いわねぇ?サハラ出身の貴族が多いでしょうし、喜ぶかも!」
「しかし、虹を作り出す程の水の触媒と魔力はどうするんだ?」
「出来ると言ってるんだ、冒険者には冒険者なりの策があるのだろう」
キャラバンの中で会話を交わしていると日が暮れはじめ野営をする為に馬車を固定する。
それぞれ準備を行う事になったのでルイスは少し離れた場所へ移動した。
「なーーにが「確かに」だよお前、喋るなっつの、虹作るって話した手前だリングの使い方教えるぞ袖まくれ」
「誠にすいません…、ん?リング?これで虹作れるの?」
袖をまくり二つのリングが露出する。
「実際には隠した状態で良い、上の模様の入ったリングを使う、魔力を込めるのは俺がやるからお前は構えとけ」
「すげぇ!俺魔法使えるのか!?」
「手際良くいくぞ」
そう言ってルイスを人形の様に操る。
「いて!いてて!痛いって!」「若いくせに身体固いのが悪いんだ!」「肩の防具が食い込んでるんだよ!!」「片手はこう!コーヒー牛乳飲むポーズ!」「わからねー!」
「ぐっ…なんでこうなるんだよ」
「反動で吹き飛ぶと、もっと痛いぞ」
仁王立ちに右手を真上に挙げた姿になったルイスへ傭兵が近寄る。
「試しだ、軽めにいくぞ?」
緊張して喉が渇く。
魔法を使える冒険者は少ない、魔法が使える、それは理術師の才があるという事、「理術とは自分の肉体から離れた場所で物を掴む事を可能とすることです」なんてよく言われる。
物理的な接触を行わずに現象を起こせるということは、執刀せずに体内の異物を取り除いたり診断する事が可能になる。
そんな才能を持つ者を危険に曝すことは周囲が認めない。
「いつでも!」
暖かい…?なんだか元気がみなぎる感じだ。
体に元気が満ちて右手に集まってくると次第に熱のようなエネルギーに変わってくる。
やがてすっと熱が引くのを感じるとリングが少し光り水が溢れてくる。
右手に集まったエネルギーと混ざるように纏わりつく、十分な量になると手の平へ集まり
一つの水球となる。
「さん、にぃ、いち!」
ボンッッッと音を立て水球が飛び立ち空中で弾けた水滴が月光を反射し、暗闇の中に一瞬だけ美しい虹の残像を描き出す。
「まぁこんな感じだ、数秒かかるから時間を考え…」
「すっげぇぇ!これが魔法!ま!ほ!う!」
興奮冷めやらぬルイスは少々遅れてキャラバンへ戻る事になった。




