第5話:a clue
彼が取り出したのは
短剣だった。
心臓が暴れだし、呼吸がうまくできなくなった。
「う・・・ぁ」
あいつに刺されたあの傷がズキンと痛む。
「う・・」
俺たちにまた向けるのか。
またあれに大事なものを奪われるのか。
いやだ、嫌だ!!
そんなことになるのだったら、
俺が
俺が
・・・殺してやる!!!
「うわぁぁぁぁあ!!」
「モート!?」
ナイフが短剣を出したときに、彼の表情は一変した。普段は優しい彼じゃないみたいだ。
迫ってくるモートに、ナイフはそれを突き出した。
モートはそれを簡単そうに躱し、ガードがなくなったナイフに、拳をねじりこんだ。
「ぐ・・・」
床に転がるナイフに、再び殴りかかった。
「モート!?」
あたしは二人に駆け寄って、モートの振り上げた腕を捕まえた。
「な、何やってるの!もういいでしょ!!」
藍色の髪を揺らして振り向かせる。
そこまでして、初めて気付く。
彼が震えていることに。
「ご・・めん・・コ・ル・・・ダ」
そうして、彼もバタンと倒れた。
「モートっ!!!」
――――――
――――
――
―
右手の温もりに目が覚める。
そこにいるのはいわずと知れた―――
「・・・なんだか俺、最近こういうの多いよな」
「・・・バカ。心配させないで」
コルダは俺の額をペシッと叩いた。
「で、俺は何してたんだっけ」
「ほんっっとにごめん!!」
「もう、いいって!」
俺たちはもう一人の入院患者、ナイフの病室に来ていた。
「コルダからあの時のことを聞いたんだ。俺、なんてことしてしまったんだろう・・・」
「いや!いいって!」
さっきからこの調子だが、俺の気が済まなかった。
「・・・そんなに言うのだったら、一つだけお願い、聞いてくれる?」
「なんだ?変な頼みじゃないだろうなぁ?」
ナイフは細い黒目を更に細くして口を開けた。
「僕を君たちの旅の同行者にしてくれないか?」
「「はい?」」
俺たちの間抜け顔を見て、クスリと笑った。
「仲間にしてほしい、と言っているんだよ。ダメかい?」
二回目にはなんとか反応が出来て、
「な、何言ってんだよ」
「えー邪魔かな?知ってる限りの情報も教えてあげるよ」
「・・・情報屋のあなたがどういうつもり?何を企んでいるの?」奴はカーテンを開けた。
思ったより外は明るかった。
「君たちに、興味が湧いちゃった」
「興味・・・?」
訳が分からないと首を振った。
「何故君たちが旅をしているのか、まだ若い君らがそこまで執着するものは何なのか・・・それに僕が短剣を取り出したときの君の反応もね」
「むぐ・」
横のコルダも少し考えていたようだったが
「・・・うん。話して、モート」
「俺かよ」
ナイフの条件をのむことにした。
―――――
―――
――
―
「なるほどねぇ。それで魔族を」
コルダは少し涙目になっていたが、それでも話すことは止めなかった。
「――さぁ。今度は僕の番だね。何が聞きたい?」
聞きたいことは山ほどあったが、まず一つだけ・・・
「なぁ。それってダジャレのつもりなのか?」
俺は机に置いてある、布に包まれた物体を指差した。
ナイフもそれを突っ込まれるとは思ってはいなかったらしく、顔を真っ赤にした。
「ちっ・・違う!ナイフというのは、僕の“情報屋”としての名だ!この仕事は本名だと危ないからな」
「じゃあ、本当は?」
取り乱したのが面白くて、笑みがこぼれた。
「・・・シフト・・・」
「うん。よろしくな、シフト。喋り方も普通で構わないぜ。最初に話しかけて来たとき(コルダにだけど)あれが普段なんだろう?」
それを聞くと、大きくため息をついて頭をガシガシと掻いた。
「あー!!さよなら、情報屋スタイルのナイフ。こんにちは、イケイケスタイルのシフト!」
「・・・やっぱり、いたいキャラだったな」
ナイフ改めシフトは人差し指を立てた。
モデルのポーズ。
「あんないい子ちゃんいるかって!・・・でも、ナイフも俺も約束は破らないぜ。他に何が聞きたい?」
今度はコルダが口を開いた。
「あたしたちの話はあなたの情報に比べたら、ずいぶん劣るわ。それなのに何故?」
「お前はすごく疑り深いのなぁ」
再び大きくため息をついた。
「ま・・しょうがないわなぁ。・・・僕はおまえらに魔族を倒してもらいたいんだよ」
「・・・どういうことなの?」
「定かではないんだが、奴らは戦争を起こそうとしているらしい」
「戦争だって!!」
あまりにびっくりしてしまったので、いすを倒してしまった。
廊下から看護婦の厳しい声が飛んできた。
「すいませ〜ん・・・それは本当なのか?」
「噂程度にな・・・で、おまえらの両親を殺したのは、どんな奴だったんだ?」
「顔はわからなかったが・・・声からすると、まだ若かった。後は刀を持っていたことくらいしか・・・」
あの時を思い出し、身体が震えた。
恐怖と怒りが蘇る。
「・・もしかしたら、そいつはトロアかもなぁ」
「トロア?」
「あぁ。トリステ国、国王・つまり魔族のボス・・・そいつの側近にトロアという剣士がいるんだ」
コルダがはなるほどと頷いた。
「もし、そうであればあいつの最後の言葉にも説明がつくわね」
「あぁ、魔王の前で会おうってやつ?」
「となると、魔王もこの国に来ている可能性は高いな。やはり、戦争の宣戦布告とか?」
薬臭い部屋に沈黙が流れた。
耐えきれなくなった俺は
「あ〜!!頭痛くなってきた!手がかりを捜しに他の街へいかないか?」
「・・・そんなカッコでかぁ?」
まさかそこを指摘されるとは思わなかったので、驚いた。
「わ、悪いのかよ!」
「だって髪はのびきったままだし、服はボロボロだし」
「いいじゃんか!んなこと」
シフトが側まで寄ってくる。
「コルダちゃんに嫌わ
「さ、さあ!行こうか!」
俺はあわただしく席を立って、またいすを倒してしまった。
俺は白衣の天使から、悪魔のような説教をくらって病院をあとにした。
「てか、俺もお前も昨日運び込まれたってのに、よくすぐ退院できたな」
「何にでも弱みはあるんだよ」
・・・
はい?
「あ、あそこなんかいいよ」
シフトが指を差したのは、キラキラオーラを振りまいてる、お店。
「お、おい。あれは高いだろ!」
「いいんだよ。どうせ払わないしぃ」
・・・
んん?
「さぁ!少年たちよ、旅立ってきなさい!」
「カットはどうしますか」
「「適当で」」
「お洋服はどのように」
「「動きやすいので」」
普段、おしゃれとは無縁な俺たちはなさられるがままだった。
「お、先に出てきたのはコルダちゃんかぁ。うんうん、かわいい」
髪は少しそろえられていた。
フリルが特徴の白のワンピースに紺のデニムは、彼女の足を更に細く見せていた。
「解説ありがとう。・・ところでモートは?」
「いやだぁぁぁ!!!」
ニコニコしながら従業員が運びだしてきた、それだった。
「わ、笑うなよ!!」
長く、うざかった髪は短く切られていた。
服は下は黒ジーンズ、上はボーダーに黒いコートを羽織っている。
お店の人すごい・・・
「か、解説ありがとう」
「そうしていると、女みたいだな」
「子供ってことか!?」
顔面にパンチをくらった。
「・・・で、どこにいくんだ?」
「あい。前に言った目撃情報はこの国の最果て、リベルテ村です」
「よっしゃ!行こうか」
一応、(バカだけど)信用できる仲間がまた一人――
新しい手がかりも出来た。
少しだが確実に進めていると実感した。
あぁ
今度こそ
絶対に
絶対に!
今回は遅れ気味となってしまいました。すいません・・・・あまりはやくはできないと思いますが、よろしくお願いします。




