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エメラルダの卵  作者: 佐藤 綾
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クリステル=アディール 66


あれから、目まぐるしく物事は動き出した。


パックは、妖精王となり国内にいる妖精を各国へ解き放った。対価をとられた人間に対しては、返してあげるようになり、妖精と契約した人間が列を連なった。ただし、対価を戻さない人間もいる。


ナターシャお姉さまは対価を戻さないことに決め、フィン=バレンタインとの婚約を発表した。私はお姉さまに申し訳ない気持ちでいたが、お姉さまの笑顔は偽りのないものであった。いつのまにか、フィンはお姉さまの心を掴んでいたようだ。

対価を捧げた後、新たに婚約者や好きな人ができた人は、対価を戻さない人が多かった。新たに関係を作ったものは、過去に振り返えらず、前に進みたいという意見が多かった。


聖女の血筋であるメレイカ様とダニエル先生の息子ダスト様は、周りの反対もあったが無事に結婚をした。どうやら、聖女は妖精と人間の混血によって産まれたということが研究により判明し、妖精の血筋のものとして希少価値が高まったらしい。おそらく、ダニエル先生がエリザベートから聞いた話しらしく、裏で手を回していたみたいだ。


ダニエル先生に、この国の秘密を暴くためになぜ誘導していたのかと伺うと、王家に一番近く、なにかやらかしそうだったからとのこと。昔から私は、この国にないものを開発したり、提案したりしていたらしい。小さい頃から朧気に前世の物を周囲に言っていたみたいだ。全然、覚えていないけど・・・


クレイブとアクアは、エメラルダと隣国をつなぐ手伝いをしてもらっている。隣国とは、将来国交を結ぶつもりでいるが、それはまだ先になるだろう。っと言っても前から王家はそのつもりで準備していたらしい。その辺りは、ウェル様にまかせてしまっている。


そして、2年後・・・私は学園を卒業した。

ウェル様の婚約者として、王家に入ることとなる。

15歳となった私は、社交界デビューと同時に婚約披露パーティーを行うことになった。


どこかでみたような夢のような話しだけれど、エリザベートが見せた夢通りになることはないだろう・・・

と思う。


★☆★


婚約披露パーティーが終わり、控室でうたた寝をしてしまった私は、ウェル様に押し倒されることになった。


「婚約したんだ、様はもういらない。ウェルでいい」


「ウェル?」


疑問系に呼んでみると、ウェルは嬉しそうにかわいい僕のクリス!と褒めると再び唇が重なる。

最初は、唇を啄みながらの甘いキス。やがて、深い大人のキスに変わっていく。


あれ、これどこかでみたような・・・


散々、ウェルのキスに翻弄された私は、やっと家に返してもらえることになった。何度も熱い口づけを交わした唇は、ぽってりと腫れ、顔の火照りも赤いままで収まってはくれなかった。


唇を押さえて、先ほどのウェルの愛に喜びを感じた。


「クリス、馬車が到着したよ」


ウェルに馬車の前までエスコートされると、見慣れた人の姿を見つけた。


「ライアー先輩?」


先輩は、ウェルと私にお辞儀をした。

先輩が学園にいたときと違うのは、身につけている服だ。騎士の礼服がとても似合っており、学園にいたことろよりもずっと大人びて見えた。


「夜遅いから、護衛として王国騎士所属の次期団長を呼んでおいた。クリス、気をつけて帰るんだよ」


ウェルは私の髪にキスをして、別れの挨拶をする。

私は先輩と一緒に馬車に乗り込み、自宅への道を馬車は走り出す。


「ライアー先輩、久しぶりですね」


王宮が見えなくなったところで、向かいに座っている先輩に話しかけると、困った顔をしている。私は何か失礼なことをしただろうか。


「ああ、クリス。殿下と仲が良くてよかったよ。仲が悪かったら、一緒に連れて行こうかと考えていたんだ」


「まぁ、そんなこと・・・ウェル様には大事にしていただいていますわ。」


私はにっこりと笑顔で答える。


「それよりも、王国騎士の次期団長とは出世いたしましたね」


「まぁな。クリスが契約してから、各国を旅をしながら報告していたからな。その功績だろう。また、明日にはこの国を出発する」


「そんな急いで・・・お忙しいのですね」


「クリスが大切なものを犠牲にして守った国を守りたいだけだ」


「そういっちゃって、先輩も旅先で婚約者をみつけたって聞きましたよ。その方に会いに行くんですよね?」


「う、うるさいっ!」


ふいっと横を向いて、顔を赤くしてぶっきらぼうにいう先輩にくすりと笑う。

そして、私は以前エリザベートが見せてくれた未来にならなくてよかったと心から思った。


馬車が揺れるたびに、耳に飾っている白い石が揺れる。

私は大切な物を失った代わりに、この世界の大切なものを守ることができた。


前世の私はいまの私であり、いまの私は前世の私だった。

つまり、前世関係なく私は私であるということ。

そんな私を愛してくれるウェル様を支えて、この国を守りたい。


皆様、読んでいただきありがとうございます。

最後まで書くことができました。

感想などいただけたら、嬉しいです。

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