クリステル=アディール 49
「先輩!」
大量の水と一緒に1人の男が、剣を構えて飛び込んできた。つかさず、先輩が男の剣を弾いた。先輩と男が対峙している最中、穴があいた天井は大量の水が広場に入ってきている。
水が、これ以上落ちてこないようにするにはどうすれば・・・
私の手持ちは結界箱だけだ。そうよ、箱でふさいじゃえばいいのよ。
セロテープをイメージをして、結界箱を作った。少しベトベトしている結界箱で、手を上にあげて1人分の大穴を急いで塞ぐ。
やっと塞がり、水が落ちてこないのを確認する。どのくらいの水が流れ込んできたのか確認しようと足元を見ると、大量の水と共におびただしい血の跡があった。
なにこれ・・・誰の血なの?
背筋に冷たい水が落ちる。先輩と男をみるが、どちらも出血はしていなかった。
パックは、鼻を膨らませて血の匂いを嗅いだ。
「ふ〜ん、この人はエメラルダ人の贄の血をもって、妖精の結界を壊したようだよ。妖精の結界は、血の穢れに弱いからね。特にこの国の血は特別だからね」
パックは、鼻をつまんで私の洋服に隠れた。
「この襲撃者もエメラルダ人だぞ!この森に入れるやつは限られているからな」
先輩が男と対峙しながら、忠告する。
「同じエメラルダ人なのに、なぜ攻撃するの!?」
男は、先輩と剣をよけながら、くすりと笑った。
「君はなにも知らないのかい?僕らは国から、世界から見捨てられた人間達だ。お前たちが豊かになるせいで、俺たちの家族が死んでしまう。」
「なに・・・どういうこと・・・」
男は、笑いながら剣を振り回す。先輩は、私を背後に守りながら剣で防いでいる。私が足手まといのようで、防戦しかできていない。
決定打を与えるには、私が戦うしかない!とにかく、この戦いをやめさせることが優先だ。
私は、結界箱を男の足元にバラまいた。
「主様、足元注意ですよ」
男の近くで、鈴のような女の子の声が聞こえた。私がやろうとしたことが筒抜けになってしまったため、急いで結界箱を爆発させるが、男が召喚した蝶に遮られた。爆発と共に先輩の剣が、男の喉元へ突きさすも、男自体が蝶に変化して行方をくらませた。
「この人、妖精持ちだ。魔力がさっきよりも多いよ。おーい、いるんだろう?」
パックが叫ぶと、鈴みたいな声がまた聞こえてくる。
「主様がだめだっていうから、教えてあげれないわよ。」
反応した!
パックが言う通り、男には妖精がついているんだ。先輩と目線を合わせて、声をした方角にむかって、魔法を発動させた。先輩の炎が妖精の周りを囲み、それに合わせて妖精を結界箱に閉じこめた。
「きゃっ」と声が聞こえたと同時に、妖精の姿が現れるが、男はみえない。その瞬間、私の頬に蝶が止まっていることに気がき、急いで振り払おうとしたが、蝶は男が持っていた剣に変化し、私の喉元を捕らえた。先輩も数秒遅れて、男に向かって剣を向けた。
「チェックメイトだな。その妖精を開放しろ」




