クリステル=アディール 47
どぼんっと思い切り、湖へと飛び込んだ。
水の重さで、服が重くなったり体が沈むことはなかった。むしろ、息もすることができるし、体も軽く、ぐんぐん湖の中で歩くことができた。
地上を歩くよりも楽みたい。
それに水の中なのに、温かいわ。これも妖精の粉の力なのかしら・・・
隣の先輩をみると、やはりびっくりしていたが、次第に慣れて辺りを見渡せるようになっていた。湖の中には、間欠泉がいくつもあり、そこから水が吹き出しているようだった。
パックが言っていた妖精の通り道とは、この湖のどこを指すのかが気になった。
まさか、この間欠泉の中とかじゃないわよね・・・
穴が小さすぎて、私達は入らないわ。
「お姉さんが思っている通りです!さあ、お兄さん、この穴をどーんと炎で穴をあけてくれないかい?そうしないと人間は通れないからさ」
「おいおい、水の中で使えるわけないだろう。俺の系統魔法は、炎だぞ。」
といって、先輩は呪文を唱えると指先に炎を出すことができた。
どうやら、妖精の粉のおかげらしい。
先輩は、いきようようと間欠泉に向かって炎の塊をぶつけた。少し大きくなった穴は、人間が通れるくらいの大きさになった。この間欠泉の先に、妖精の道はあるらしい。私達は、水が吹き出すのを収まるのを待って穴へと飛び込んだ。
道を進むごとに妖精の声が聞こえた。最初は、ささやきだったのが次第に大きくなっていく。ここにいる妖精たちは、人間をあまり歓迎していないようだ。
(人間カエレ・・・)
(人間デテイケ・・・)
「森にいる妖精とは、種類が違うのかな?ここに来てほしくない感じがする・・・」
「ああ、雰囲気がまるで違うな。森の奴らは、契約させたがってうっとおしかったが、ここのは俺達を恐れているのか?」
パックは手を頭の上で丸にしてみせた。
「ここの妖精は、森の妖精よりも古い妖精なんだよ。古い妖精は、自分達のテリトリーに人間を入らせたくないんだよ」
だから、案内する人数を減らして私と先輩だけにしぼったのかと納得した。
古い妖精は人間が嫌いなのかしら・・・
「妖精は対価を共有できるけど、過去に起きたものに対しては共有ができないさ!過去にひどい対価でも見せられたんじゃないかなぁ~?」
森の妖精は、まだ若いから積極的に人間と契約しようとしているみたい。なんで、そんなに契約したいのかしら・・・
古い妖精を無視して少し先に進むと、広場にでた。地面は小さい石で埋め尽くされており、壁は緑色の蔦に覆われていた。蔦の隙間から明るい陽の光が見えた。外のように見えるが、上を見ると水の水面が波打っているのがみえた。
ここは、まだ湖の中なのかしら・・・
「ほらここが、石碑がある場所だよ。ここの広場に落ちている石達には、1つずつに名前がかいてあるでしょ?これが契約の証だよ」
ここが石碑なの?石碑といえるのか、分からない小さい石を手にとり、表面を見ると確かに人の名前が書いてあった。でもこんなにたくさんある石の中から探したい石を見つけるのはとても困難な作業だ。
「探したい石を見つけるいい方法はないかしら?」
「それなら簡単だよ!頭の中で探したいものを念じながら目を閉じて石をとればいいんだよ」
パックの言葉に頷き、私は目を閉じて頭の中でイメージをしながら石を手にとる。妖精と契約したのではないかと疑っていたアリス様やスミス様の石をみつけることができた。
やはり、2人とも妖精と契約したんだ。
もしかして・・・
私は、手をぎゅっと握りしめて頭の中でイメージをする。小さい時から一緒にいる家族のことを・・・
石を手にとって確認すると、ため息をついた。
「なかったら、よかったんだけどね」
ため息をついた私が気になったようで、先輩は私の手に取った石を見つめた。
「”ナターシャ=アディール”って。これ、クリスの姉さんか?」
私は先輩の言葉に頷いた。
「ある時から、お姉さまが殿下を見つめる目が変わった。最初は何故だかわからなかったけど、学園の話や先輩の話を聞くたびに、もしかしてお姉さまも妖精となにか契約したのではないかと思ったの。私が確認したかった1つ目のこと」
お姉さまは、何を願ったんだろう。
魔力の拡張かしら・・・
「その石の契約内容を見るには、石に魔力を込めれば閲覧できるよ」
私は、その言葉に頷いて少しだけ石に魔力を注ぎ込んだ。




