表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫は愚者だが、領主は平和を望む  作者: LAST STAR
リテーレ領とゲレーダ領
16/44

第16話 発案


その日の夕刻――。

俺がそろそろ夕食の用意をしようとしていると執務室の脇の扉が不意に開いた。

その開いた扉の先に居たのはルカだった。


「おはようございます、という時間でもないですね……」

「もう起きて大丈夫なのか?」

「ええ、なんとか大丈夫です……」

「なら良かった。今から軽くおかゆでも作るから寝室で寝て待ってて」

「あ、私が……」

「ルカが作るのは無しだ」

「は、はい……」


俺は手を前に出してルカの言葉をさえぎった。ルカは少し先読みされたことが面白くなかったのか下を少し向いて寝室へトボトボと戻っていった。


俺はその様子を見届けてから厨房へ行き、一時間程度で卵とネギを使ったおかゆを作り、ティーポットには水に塩と砂糖を溶かした経口補水液を入れてルカの寝室へと運んだ。


「入るぞ?」

「はい、どうぞ」


ルカの寝室の扉をノックして中に入った。当のルカはベットの上で体を起こして少し下を向いている。


「はい、お待ちどうさん。口に合うかわからないけど……」


俺はルカの膝元におかゆと経口補水液を入れたコップをおぼんに載せておいた。


「少し熱いかもしれないから気をつけて」

「はい……では、その……頂きます……」


ルカは手を合わせて食べ始めた。やはり、実質的に一日ぶりの食事だった事もあってお腹が空いていたようで……。


「あの……おかわりいただいてもいいですか……?」

「ああ」


二杯目のおかゆを皿によそってルカに渡した。


「ありがとうございます……」

「(これだけ食べれればもう問題はないだろう)」


ルカはこうして俺の作ったおかゆを淡々と食べつつ、経口補水液を飲んでいく。

そして、ルカは二杯目を食べ終わったところでスプーンをおぼんの上に置き、手を合わせた。


「ごちそうさまでした……」

「はい、お粗末さまでした」

「っ……」


すかさず、俺がそう反応するとルカの顔は真っ赤になっていた。

多分、看病されてる感じが恥ずかしいんだろう。俺が逆の立場でも同じことになりそうだから何となく分かる。


「じゃあ、俺は片付けてくるな?」

「達也さん……!」


気を使って出て行こうとしたが、ルカに呼び止められた。


「ん?」

「その……色々とありがとうございます……」

「あ、いや……その……どういたしまして」


何気ない感謝の言葉だったけれど俺にはそれが天に昇るほど嬉しかったのだった。


俺はルカの食器を片付けてから自分の夕食を食べ、執務室に戻った。

いよいよ俺の大嫌いな財務整理のお時間だ。


「あ~えっと……こっちが支出で、こっちが収入という名の遅れていた納税者からの税で……こっちが?」


俺の頭の中が数字で凄まじいことになっていた時、いきなり執務室の扉がドーンと開かれた。一瞬、身構えたのだが、そこに居たのはミレットだった。


「もう、ダメだぁ~……」


ミレットは執務室に入るなり、すぐにルカの椅子に座って机に突っ伏した。


「おいおい……何がダメだったんだ?」

「そんなのあの襲撃者どもの尋問に決まってんだろう~何を聴いても知りません、わかりませんだし、痛めつけても吐くことすらしねぇーんだ。もう達也、変わってくれ……」

「随分、苦戦してるんだな……」

「ああ、正直なところ身内だからな……。アタシでもそう容易く心を鬼にできねぇよ……」

「そりゃ……そうだわな……」


そんな事を話していると執務室、脇の扉が開き、ルカが出てきた。


「愚痴を零す余裕があるなら早急に何とか口を割らせなさい」

「ルカ姉! 目、覚ましたのか! 良かった! 本当に良かったぁ!」

「心配掛けてごめん……」


ルカは抱きついてきたミレットの頭を撫でている。俺はその様子を横目に口を割らせるための作戦を考えていた。


「(口を割らないなら、どうにかしてその口を開かせる必要があるな……。本当はやりたくはないが……)」


実は、襲撃犯の一人に俺は目をつけていた。


「こいつなら……」


俺が一枚の経歴書を片手に語るとルカとミレットは首を傾げていた。


「何かをする気ですか……?」

「アタシもすげぇ、気になる……」

「何、ちょっと汚いやり方で黒幕を吐かせるのさ……」

「えっ…………!」


二人は何か悪い想像でもしているのだろうか、固まってしまっている。


「ま、まさか、誰かを見せしめに殺すとかじゃありませんよね……?」

「さすがに……そこまではするつもりはないけど……」

「殺すつもりじゃねぇなら、どうするつもりなんだよ?」

「それはだな……」


それから俺は計画を二人に話したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ