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Disturbance High School  作者: 林 奎
第壱章 金碧姫の決闘 
9/21

第7話  4月23日 15:50 美笠高等学校 格技場②

「え、えーと………。それでは始めます……か?」

「ちょっと待った!代理なんて滅茶苦茶よ!しかも女の子に!」


 さあ始めようという所で漣さんの友達から思いっきり待ったがかかった。

 彼女曰く、『自分が戦わないどころか女子に闘わせて高みの見物に走るような男なんか漣さんとは不釣り合いだ!』とのこと。

 まあそうなるよね……。僕も彼女の立場ならそう言うだろう。


 実際は目の前の人物は女の子ではなく男の娘(可愛らしいというよりも凛々しいという感じだが)なので一応は問題はないのだが、再三言うが、それを言うと本当に話が拗れるのでここは黙っておく。


 とは言え、彼らの恋路など知ったことではないが彼らに貸した1万円が返ってこない(返すとは言っているが鼎君が勝たないと返ってこない気がする)。

 なのでここは勇気を奮い立たせて彼女と対峙した。


「やっぱり無理……ですか?」

「あ゛?当り前でしょう。」

「……ですよね。」


 すんなりと引き下がる僕。

 あの瞬間僕を見る眼はまさに鬼のようだった……。逆らっちゃいけない人だと理解した。

 今の彼女に対峙するのは1万円なんか惜しくないくらいだ。 

 そんな僕の態度に文句を言うのが例によってこの2人。


『おいー。押しが足らないぞー!』

『シャキッとせえ!シャキッと!!』

「そ、そんなこと言われても……向こうが言っているのも正論だし……。」

『おいおい。何他人事みないなスタンスになっとるんや!おかしいやろ!』

「……え?他人事だよ?」


 最後の発言に『『え?』』なんて返した2人に物申したい。何しろ僕は決闘をするわけでも依頼をしたわけでも委託をしたわけでもない。ただ居合わせただけの部外者だ。それがなんで僕が当事者みたいになってるのだろうか?(出資者パトロンだけどそこは置いておこう)


 それに今更だがドイツでは有名な叙事詩である『ニーベルンゲンの歌』の中では結婚をかけた決闘に変に力を貸したせいで拗れに拗れた結果陰惨な殺し合いまで発展したと聞く。この話は決闘に汚すことに対する訓戒なのかもしれない。

 なので代理決闘なんて無理があった。それでいいじゃないか。

 ……そういうのは昨日の段階で言わなければならないのだけれど。


『頼むってー!闘ってくれー!』

「そんなの却下に決ま……。」


 という訳でこの決闘が無効試合になると決まりかけたその時。


「私は構いません。」

「「え?」」


 僕らは唖然とした。話の流れを無視して構わないと言ってきたからだ。


『ほら!レンレン様はそういっとるで』

『そうや!瀬谷からとっとと認めろ馬鹿女!!』


「………(怒)。」


 言い方はムカつくが彼らの言うとおり本人が良いと言ったのだがらそれでいいだろう。


「ちょ、ちょっと聯……。アンタ。」

「こういうのは今更。というか他よりマシ。」


 やっぱりあったんだ。似たようなことが他にも……。これでマシってもっとひどいのにどんなのがあるんだろうか?


「それに……。」

「それに?」

そっちの(・・・・)方が都合(・・・・)がいい(・・・)ですから(・・・・)。」

「………?」


 女性の方が男性よりも劣っているから勝ち易いという意味だろうか?

 でも女性の言う台詞とは思えないんだけど……。


「……成程ね。確かに……。」


 それを聞いて納得したらしい。どうやら何か思うところがあるようです。


「いいわ。そこの女の子が代わりに戦うのは認めてあげる。」

『『よっしゃー!!』』


 それを聞いて大喜びする2人。電話の向こうに先生がいないことを祈るばかりだ。


「で?そっちの女の人は誰?」

「ん?ああ。私か。」


 ああ、そうか。決闘する以上相手の名前を知ることは大事かもしれない。

 でも本名なんかいったりしたら……。


「ああ。……鼎清『『うわああ之だ。」あああっ!!!!!』』

「……!」


 男の名前を言いそうになった鼎君に対し男だと困る2人は大声を上げて鼎君の声を遮る。

 さすがに本名を言ってはいけないだろう。男だとばれてしまう……かどうかは分からないが(何しろあの見た目なので)怪しまれないに越したことはない。


「あ、そうか……言ってはまずいんだったな。」

「……」


 鼎君ってしっかりしていそうで変な所でうっかりな部分がある。


「何よ……かなえって可愛い名前じゃない。」

「そうですね。いい名前だと思いますよ?」


 どうやら鼎君がうっかり名乗った苗字の『鼎』を下の名前『かなえちゃん』だと思ってくれたようだ。 確かに『鼎』という名前は女子っぽい名前だと言われればそう感じないこともない。


『『「ホッ……。」』』


 その事実を受け、心の中で盛大にホッとする僕達。

 後の付き合い(予定)に困る彼らはもちろんのことだが、僕だってホッとする。

 なぜかは分からない方は想像してもらいたい。もし彼の女装がバレた場合、僕らは男に金を払って女装させた集団の一味として周囲から変態のレッテルが貼られてしまうかもしれない。若干強引な展開かもしれないが、そうなるのはは嫌だ。


「ところであなたの名前はなんていうのでしょうか?」


今度は漣さんがこちらに聞いてきた。よく見ると顔色が青みがかっている。何かあったのだろうか?


『播磨屋ですー!』

『直原や!』

「アンタらには聞いてないから。興味ないし。」


 案の定、2人が即答し漣さんの友達が本人の代わりにバッサリ。


『『ひどいっ!!』』


 当然のことだが漣さんの友達はそんな2人の泣き言を完全無視。


「で?聞き直すけどそこの男子。名前は?」

「え?あ、逢河ですけど……。」

「そう。私は寳野。ちょっとだけの付き合いだけどよろしく。」

「あ、ああ……よろしく。」


「よろしい。それなら今から勝負を始めます。逢河君……合図!」

「え?あ、はい。何で僕?」

「私がやりたくないから。」

「はあ?」


 それは僕もやりたくないのだけれど……。


「……文句あるの?」

「いえ。まったく。」


 結局射殺す視線に曝されあえなく降参。

 彼らにヘタレと言われても仕方がないのかもしれない。


「それにしても合図か……。」


 僕が決闘するわけじゃないのに緊張してしまう。情けない。

 目の前の彼女達(片方は男)は泰然としている。この状況に慣れているのだろう。そう考えた時、自分とあの2人は住む世界が違うことをを知った気がした。


「ほら、早く合図。」

「あ、うん。」


 正直決闘なんて関わりたくないのだが、こうなってしまった以上せめて決闘にケチをつけないようにビシッっと決めていきたいところだ。

 


「それでは試合……ひゃ……。」

『『「「「……………。」」」』』


 噛んだ。大事なところで噛んでしまった。もういろいろと台無しです。


「痛っ!!!」


 そして寳野さんに思いっきり殴られました。




登場人物紹介 6


播磨屋拾時 Hariyama Juji

 誕生日:3/3 血液型:AB クラス:1-1

 身長:149cm 体重59kg

 得意科目:英語 苦手科目:歴史

 好きな食べ物:トマト鍋 嫌いな食べ物:煮豆


 鼎と同じく耀家の親友。皆からハリヤマと呼ばれる(本人はそれがスゴク嫌い。)

語尾を伸ばす口癖がある。(ただしハリヤマと言われると語尾が取れなくなる。)

ぽっちゃりした見た目とは裏腹に運動性のは高く尾行などによる情報収集を得意とする。

ただし、追跡・遁走・隠蔽に特化しているため戦闘などの荒事は不向き。

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